田中宇さんからいただいた、すてきなメッセージのおすそわけです。 

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日本の対米従属維持のプロパガンダの嵐を乗り越えて、米国の崩壊と世界の多極化に対する準備が始まった。 
日本が米国と無理心中することを止めようとする民主党政権は、評価されるべきである。 



オバマは国連総会を機に鳩山のほか、中国、ロシアの首脳とも2者会談を行った。オバマが親米のはずの英国との会談を断る一方、反米的な中露とは会談したのは、いかにも「隠れ多極主義」的だが、会談相手の中に反米的な日本の鳩山が入っているのは、新政権になった日本がようやく世界の多極化に対応して「非米同盟」の方向に傾いたことを象徴している。 

鳩山政権では、岡田外相が就任時に、米国に「核の先制攻撃をやめる」と言わせることを試みる件で質問され「私の持論は、先制使用すると明言する国に核軍縮や核の不拡散を言う資格があるのかということだ」と答えている。 
また岡田は、FT紙の取材に対して「自民党政権の外交政策は、過度に対米従属だった、私は、日本独自の考え方に基づいた外交をやりたい」と述べている。 

オバマ政権が鳩山政権に対して意外な親密さや理解を示しているのは、今の米中枢が隠れ多極主義の戦略を採っているからだ。 

米国は一貫して、表向きだけ日本重視といいつつ、実態は日本無視だった。それは、米国中枢で米英中心主義より多極主義が強くなっていったのに、日本は対米従属の姿勢を変えたがらなかったためだ。 

戦後の日本は、多極主義と英米中心主義が暗闘する米国中枢の、英米中心主義(冷戦派)の方から強い影響を受けている。官僚機構は対米従属や冷戦体制の永続化を望む傾向が強くなり、米国は日本に対米従属を求めているというプロパガンダを深く国民に植え付けた。 
民主党が、官僚制度の解体再編を方針として掲げているのは、日本を冷戦型思考や対米従属への中毒状態から引き離そうとしているからともいえる。 

鳩山政権は、インド洋での自衛隊の給油活動を止める代わりに、アフガニスタンの復興支援を活発化するなど「国際貢献」を積極展開することを打ち出している。 
従来の日本の国際貢献の「国際」とは、米国もしくはG7など英米中心体制のことだった。 
これに対し、民主党政権の国際貢献の「国際」は、国連であり、反米諸国やBRICを含めた、非米化しつつある国際社会である。 

小沢一郎は以前から、日本は米国による世界への軍事進出につき合うべきではなく、国連主導の軍事行動(平和維持活動)にのみ参加すべきで、しかも活動範囲の主力をアジアに限定すべきだと主張してきた。 
この考え方はまさに、世界の各地域の諸大国が自分の地域の安定を維持するために努力するという、多極型の世界体制の思考であり、米国一極による世界体制への追随とは対照的な戦略である。 

経済面では、民主党政権は円高ドル安を容認し、従来の日本の「円安ドル高が日本には良いんだ」という善悪観から脱却していきそうだ。 

そもそも、日本の輸出産業の利益のみに焦点を当てて「日本には円安ドル高が望ましい」と考える従来の考え方は、政治的に見ると、日独がドルを買い支えるという、1972年のニクソンショックから90年代の金融グローバリゼーションによる米英復活までの英米中心主義の戦略に沿ったものであり、日本の対米従属戦略の一環である。 

米英が金融財政面で崩壊感を強める今の局面で、日本が米英と共倒れになるのは馬鹿げており、円高ドル安を是認する民主党の考え方はまっとうだ。民主党政権は、アジア開発銀行やASEAN+3が推進してきた「アジア共通通貨」(アジア通貨統合)の構想を支持しているが、これもドル崩壊への備えと考えれば当然の方針転換である。 

今のタイミングでの円高容認への日本の方針転換は、米国にとって非常に危険である。円安ドル高を信奉していた従来の日本は、円高ドル安傾向になると、当局が公然とあるいは秘密裏に円売りドル買い方向の介入や仕掛け作りをしていたが、今後の日本はドル買いをしなくなり、米国債の買い増しもしなくなっていく可能性がある。 

これは、ドルと米国債が急落する可能性を強める。日本と中国が協調してドルと米国債を見放したら、米国は破綻してしまう(日中は巨額のドルや米国債を持っているので、簡単には動けないが)。 


日本人の多くは従来、「米国に嫌われたら日本はひとたまりもない」と恐れてきた。 
しかし、日本人が「日米関係を変える」とは自覚せずに漠然とした危機意識からの投票行動によって民主党政権に転換した結果、日本は対米従属一本槍の国是を静かに離れることによって、意外にも米国に対して強い立場を持てる事態となってきている。 

今後、日本人は世界において自分たちが置かれている新たな立場の意味に気づき、自信を持つようになり、官僚機構の内部にいる人々も、米国と無理心中せずにすむかもしれないということで、今回の日本の転換に安堵しているのではないか。 

今後、どんでん返しがあるかもしれないが、少なくとも日本が国際社会のプレイヤーとして復活したことは、ほぼ間違いない。日本人として生きるのが嬉しい時代が戻ってきた観がある。 

(一部抜粋、編集してお届けしました。)