★島田伸介の司会で、市立柏高校 吹奏楽部が紹介された『世界1のショータイム』より、ポイントを抽出 

黒い縦襟のマオ・カラー服を着た顧問教師は、 
希望を失った人に感動を与え、再び、生きようと思わせるような演奏をやろうと部員に呼びかける。 
聴衆に希望を与えることが、吹奏楽部の実現すべきビジョンだと示した。 

リーダーが部員に到達不能に思えるビジョンを示す。ごく普通の高校生たちは、ビジョンに共感した。 

あとは、猛練習。部員が達成できると信じられる到達目標を示し、達成に向けて指導することが重要。 

これを、顧問教師が示す。 こうやって、この方法で、この域まで、行こう。 

これがリーダーの機能。 教育の本義は、 
(1)到達目標を示し、 
(2)目標に接近する、成功のための方法を指導し、 
(3)目標に達する個々人の努力を、喚起すること。 

モティベーションは、目標から得られる。そのため、ドラッカーは、チームの目標設定をマネジャーの 
義務とした。 

企業で、マネジャーが行うべき人材育成もこれ。 
知識作業では、人が人財になる。知識と技能は、組織ではなく個人がもつ。 

目標を決め、目標を達成する方法を教育・訓練し、個々人が努力することから人財が生まれる。 


柏高校では、優れたリーダーを得て、示された到達目標に応えるべく、自分たちの工夫で、思い思いの 
振る舞い(動作)を、演奏に加える。座って演奏をするのではない。リズムとメロディに調和させて踊る。 

リズム、メロディ、所作の調和とは、個々の価値を際立たせる総合にある。 

普通のブラスバンド演奏では不可能に思える高いビジョンに向かい、放課後に猛練習をし、部員同士で 
厳しく相互チェックをする。 
こうやったほうがもっといいという工夫を、細部まで凝らす。これが自己管理。 

聴衆に希望を与えるという組織目標を分有し、そこから自己目標を導いて、その個人目標によって自己 
管理をする。 

自己管理は、動機付けを強くする。 
統制的な上からの管理は、誰でもやる気が減じる。上司に、じゃ自分でやってみろと言いたくなる。 


【個人の資質や能力ではない】 
柏高校の吹奏楽部の高校生が、企業に就職したとき、こうした力を発揮するかどうか、これは疑問。 

入社した組織が、吹奏楽部のような形態をとっているかどうか、ここに問題がある。 
組織の形態で、同じ個人が活きるかどうか、高いやる気をもって仕事をするかどうか決まる。 

経営学は、やる気の研究でもある。 


【責任から】 
目標の分有意識は、自分の役割が果たすべきことに責任をもつことから生まれる。そのため、役割と 
役割を果たす責任を与える。 

ゴルフは普通、個人戦。しかし、国別対抗のチーム戦のほうが、アマはもちろん、プロ選手でも 
役割を果たす責任から、はるかに盛り上がる。 

人間は、自分のアイデンティティを共有する集団への帰属の意識が強い。 


権限ではなく、チームへの責任。成果責任を問わない権限は、長を堕落させる。 
官僚的な組織が、堕落に向かう本性をもつのは、成果責任をあいまいにし、階級に権限を与えるから、 
権限は下の統制に向かう。 

成功する組織では、マネジャーがチームの成果責任を負い、チーム成果を達成する目的で部下の仕事を 
評価するという権限を使わなければならない。 
コミットした成果目標の達成意識が強いマネジャーに、人はついて行く。 

組織は、達成責任の体系としてつくるべきであり、職務分掌と階級に基づく権限の体系ではない。 
多くの組織が、間違えている。 
社員のやる気をうんぬんする前に、組織が成果の達成責任の体系になっているかどうかを、点検する 
必要がある。 

決して、優秀な人を集めれば、優秀な組織ができるのではない。人を活かし、成長させる体制が 
なければならない。 
優秀な人を採用すれば、企業の業績が上がるのなら、こんなに簡単なことはない。 

成長しなくなった企業は、上からの縦の権限でしか動かない組織にいつの間にかなっている。 
そのほうが、マネジャーも部下も楽だから。 

多くの人が若い世代は指示待ち世代というが、本当は組織の責任体制が部下を指示待ちにしている。 
企業の売上が20年も低成長だと、社員の年齢は1年ごとに増えるから自然にヘッドヘビーになる。 
そのため、内部向けの調整会議が増える。 


市立柏高校吹奏楽部が上からの権限で命令する組織だったら、あの演奏の域には達しなかった。 
どんなに優れた人を集めても、あの域には達しない。 

逆に、ビジョンと役割責任で引っ張れば、普通の人が集まる組織がとんでもないところまで行く。 
どの組織も、普通の人。5%が優秀、15%が良、60%が普通、20%が不可にしかならない。 

多くの会社は責任の体系ではなく、本部長以下、マネジャーに成果責任を問わない権限の体系に 
なっている。  「**と指示しました。厳しく言いましたが・・・」と答える組織。 


社員と顧客に、共感を与える事業の定義を、リーダーは行った。 
吹奏楽部のビジョン: 
 顧客に、吹奏楽への期待を超える感動と、生きる希望を与える商品(演奏)を届ける 
顧問教師が決めたこのビジョン(到達目標)で、高校生の蒼い活動のエネルギーが、熱く集結された。 

組織マネジメントは、共感されるビジョンが活動の方向になる。 
活動の方向が、磁石で砂鉄が並ぶように、同じ向きに揃ったとき、仕事で必要な集中が生まれる。 
それを与えるのが事業目的であり、事業目標である。 

他方、カオス(混沌)の組織では、空気のように個々のエネルギーはあるが、方向が揃わず散乱し、 
+と-の方向の違うエネルギーが打消しあってしまう。 


顧問教師は、吹奏楽部員に対し厳しかった。しかしこの厳しさは個々人の成長のためであって、教師の 
手柄のために権限を振り回したのではないことを、高校生は心の底から知っていた。 

これが、ドラッカーが言った、マネジャーの目標達成への厳格と真摯である。 


【価値】 
自分達にできる最良のものを提供しようとする意志である演奏、所作、表情に、それを感じる。 
感じれば、心が動く。