TPPが始動した事で、次の世界の枠組みが少し見えて来ました。 

現在のアメリカの覇権を支えるのは、ドル機軸体制です。 
アメリカは、貿易収支も財政収支も赤字ですが、基軸通貨ドル世界が必要とする限り、FRBはドルを刷り続ける事が出来ます。 

ドルは国債決済通貨なので、貿易や金融の決済が円滑に行われる為には、金融機関がドルを手元に持っている必要があります。 
根幹のユーロ危機の様に、大きな危機が発生するたびに危機の渦中にある銀行は、ドルを求めて右往左往する事になります。 
リスクの高い金融機関への融資が手控えられるので、低金利でドルを調達する事が難しくなるのです。 

FRBは一見、大量の債権(ドル)を発行して債務超過に見えますが、裏を返せば、それはアメリカが世界に供給したドルの量が増えたという事で、世界経済の成長がFRBの債務を膨らませているとも言えます。 
云わば、アメリアの最大の輸出品目はドルだという事です。 

世界がドルに魅力を感じなくなる時がドルの終焉です。 
ユーロ危機等で、世界はドルを欲していますから、ドルの魅力が急激に薄らぐ事は無いというのが、金融機関に身を置く人々の見解でしょう。 

ドルの終焉が訪れるとすれば、それはドル需要が落ち込む時、世界経済が縮小する時となります。 

金融資本主義は、実態経済から乖離した「偽りのドル需要」を造りだしてきました。 

本来、借金は返済されなければ、次の資金需要を生まないはずです。 
ところが、借金を証券として売り飛ばす事で、資金需要を連鎖的に生み出していったのが、シャドー・バンキングシステムです。 
金利による利益に目がくらんで、銀行も企業も個人も、借金によって他人の借金の証書を買っていたのです。 

過剰流動性と呼ばれるダブツキは、世界を徘徊し、株式市場から、債権市場、現物市場と渡り歩く事で、新たな資金需要を生み出していました。 

まさに「過剰流動性」は死神の集団です。彼らが過ぎ去った後には、草木も残りませんが、また暫くすると、懲りずに儲けの芽が生えてきます。 
一時は野を埋め尽くすかに思われた死神の群れも、気が付けば随分と減ってきました。 


ヘッジファンド勢が抜け、今、ヨーロッパの金融機関が隊列を離れようとしています。 


ドルの終焉の時期を正確に言い当てるのは、難しい事です。 
金融関係者は、市場のイベントによってそれが訪れると思っているでしょう。 
しかし、都合良く変更されるルールの上で、バーチャルな取引が繰り返される金融市場は、ゲームの終焉を先延ばしし続けています。 

ドルの終焉は意外と現実的な所から始まると予測します。 

アメリカの最大の危機は、雇用の崩壊と、地方財政の崩壊です。 
教師が減らされたりり、消防士や警官が居なくなったり、ゴミの収集が滞るという現実的な形で、アメリカの衰退は地方から顕在化し、人々の不満は高まります。 
知識層が主体のウォールストリートデモが、貧困層主体の暴動に変わる時、アメリカは内部から崩壊します。 

現在、連邦政府の助成金で成り立っている地方の財政は、連邦の債務削減の為い助成金の減額で、急速に悪化します。 
既にに多くの地方自治体で発生しているデフォルトが、全国規模で拡大します。 
職を失って久しい人達に、新たな苦難が突きつけられた時、アメリカ国民の怒りに火が付くかもしれません。 

米国債の暴落は、ドルの暴落を誘発します。 
ユーロの危機が収拾しようが、しまいが、世界経済は混乱の渦に巻き込まれ、その混沌の中で、集団で危機を乗り切る為に地域ブロックが始動する。 

環太平洋の多くの国が参加して中国を排除した経済ブロックの枠組みを形だけでも作る事こそが、今、アメリカにとって最も重要な事なのです。 

(人力さんのブログからメッセージを抽出)