田坂広志さんから、すてきなメッセージをいただきました。 


 英国のサッカー界で初めてナイトの爵位を与えられ、 
 初代の欧州最優秀選手として知られる 
 スタンリー・マシューズに 
 「鉛の靴」のエピソードがあります。 

 彼は、サッカー選手として足腰を鍛えるため、 
 日頃から重い鉛の板の入った靴を履いて 
 生活をしていた。 

 そのエピソードです。 

 そのため、彼は、いざ本番の試合になって、 
 その靴を脱ぎ、サッカーシューズに履き替えると、 
 まるで足に羽が生えたようにフットワークが軽くなり、 
 あの魔術のようなドリブルができたそうです。 


 このマシューズのエピソードは、 
 我々、ビジネスパーソンにとって、 
 深い励ましのメッセージに聴こえます。 

 なぜなら、いま、多くのビジネスパーソンが、 
 日々の仕事において、 
 「鉛の靴」を履いているからです。 

 複雑で重い組織、革新性を失った文化、 
 決断の遅い上司、責任ある多くの部下、 

 そうしたものを背負いながら、日々、悪戦苦闘する。 

 ときに、逃げたくなる思いで天を仰ぎ、 
 ときに、自らを励ます思いで天に祈り、 
 それでも、泥沼の中を歩み続けていく。 


 しかし、いつか、本番の試合がやってくる。 


 そのとき、我々は、気がつくのかもしれません。 

 これまでの日々の悪戦苦闘が、 
 自らの足腰を鍛えてくれていたことを。 

 そして、ライフワークを賭けた本番の試合において、 
 足に羽が生えたように走れるようになっていることを。
 


 田坂広志