フェイスブックは、ホームでAndroidの基本画面を「さまざまなアプリを起動するためのもの」から、「友達・知り合いとコミュニケーションするためのもの」に全面的に変更した。 


                フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO) 



◇スマホめぐる賢い戦い ─ FB、アンドロイド搭載端末向けアプリ 

フェイスブックはグーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」携帯版を搭載したスマートフォン向けの新アプリを発表した。 
「ランチャー」として知られるこのアプリはいったんダウンロードされると、例えば、台湾の宏達国際電子(HTC)や韓国のサムスン電子のアンドロイド搭載スマートフォンのホーム画面にフェイスブックに投稿されたメッセージやニュースが優先的に表示される。 

 これでフェイスブックがスマートフォン上で(のちにはアンドロイド搭載のタブレット端末でも)最優先されることになり、ユーチューブやグーグルマップといったアプリは二次的な画面に追いやられる。 

 フェイスブックもグーグルもともに広告を販売している。したがって、「エンゲージメント」(顧客関与)を互いに競い、ユーザーのインターネット使用にとっての主ウィンドウとなることを狙っている。スマートフォンの販売がパソコンの売り上げを大幅に上回るなかで、スマートフォンをめぐって、ますますこうした状況が起きている。 

 グーグルは、おなじみの検索エンジンと人気のブラウザーにウェブユーザーの注意をとどめておくことを狙っている。ウェブをサーフする人々を自分たちのコンテンツに誘導することで広告業者からクリック回数分の支払いを受けるという形で料金を徴収する。 

 フェイスブックのやり方はコインの裏面だ。フェイスブックはウェブユーザーに、壁に囲まれた庭の内部で、(写真やステータス更新、リンク、「いいね!」を通して)独自のコンテンツを生み出し共有してほしいと思っている。そして、フェイスブックは、十億を超える世界のユーザーが集うこの庭の中に広告業者が広告を掲載することに対して料金を課す。 

 そして、確かに、人々は特に携帯端末で、フェイスブックに非常に多くの時間を費やしている。調査会社コムスコアによると、米国では2月に、携帯端末のユーザーがメディアに費やした時間の5分の1はフェイスブックの使用だった。一部の新興市場のユーザーはもっと多くの時間をフェイスブックに費やしていた可能性がある。 

 グーグルがユーザーが遊ぶ独自の砂場「Google+」を生み出した理由もまさに同じだ。ただ、グーグルには気の毒なことに、Google+でそれほど多くの時間を費やすユーザーはほとんどいない。 

 要するに、それぞれの企業が、広告業者らかの料金支払いを狙って、ウェブをサーフする人々の注意を引こうと競争している。だから、対立している。 

 競われているのは現在のインターネットユーザーがどのくらいの時間、注意を払うかだ。人類の約3分の2はまだインターネットを使っていない。初めてイン ターネットに出会う時には、アンドロイド搭載でありながらコアコンテンツとしてフェイスブックが使用できる安価なスマートフォン上で、という可能性が非常に高いだろう。 

 また、もう1つの意外な点は、フェイスブックがグーグルの戦略をいかに利用しているかだ。グーグルは携帯向けOSで驚くほどのけん引力を集めている。ストラテジー・アナリティックスの見積もりによると、アンドロイドは2012年に出荷されたスマートフォンの市場シェアの68%を占めた。2位のOSであるアップルの「iOS」のシェアは20%にすぎなかった。アンドロイドの人気の理由はオープンプラットホームで、これはスマートフォンメーカーが無料で使用できる。このために採用が促進されている。 

 フェイスブックは、アンドロイドがメーカーの周りをうまく回避するためのオープンシステムであるという事実をうまく利用している。 

 フェイスブックがグーグルの直接的なライバルになろうとしていることは、フェイスブックにとってリスクだ。しかし、グーグルは広告収入が豊富にある一方、フェイスブックは広告収入の獲得余地がまだまだあることを考慮すると、これは利口な動きだと思える。 


*By ROLFE WINKLER /WSJ 



◇Facebook HomeのChat Headがもたらす真のマルチタスキング。 
 今後の「標準」はここにあり!
 


◇「待ち受け画面が世界を制す」 スマホの競争、新時代へ 

ホームの延長線上にあるのは、スマホのOSをフルにカスタマイズしてしてしまう世界である。LINE(ライン)やSkype(スカイプ)のように、これまで通信事業者がサービスとして提供してきた音声通話やテキストメッセージなどのすべてのサービスを、フェイスブックが提供してしまう可能性がある。 

そんな時代になれば、通信事業者はデータ通信ネットワークだけを提供する文字通りの「土管」となる。 
収益はユーザーにとっての付加価値を提供するフェイスブックへと移ってしまい、通信事業そのものが違いを出しづらいコモディティー商品となってしまう。 

iPhoneの日本上陸を「黒船」と呼んだ人がいるが、ホームは通信事業者の収益構造を大きく変えてしまうポテンシャルを持った「第二の黒船」かもしれない。
 



◇成長第一、広告は二の次  Facebook戦略はInstagramにも 


☆FacebookのiPhoneカルチャーが、HomeのAndroidへの過激な侵入を生んだ