130618


ある会社のお話しです。 

その会社の社長は、次のようなことに気づかれたそうです。 

ノウハウや制度ばかりを追求しても、社員の心が豊かにならないと、組織は活性化しない。 

「本当の感謝とは何か?」を社員に実体験させてこそ、お客様に心から感謝できる社員が育つ。 

このことに気づいた社長は、毎年の入社試験の最後に、学生に次の二つの質問をするようになったそうです。 

まず、「あなたはお母さんの肩たたきをしたことがありますか?」 

ほとんどの学生は、「はい」と答えるそうです。 

次に「あなたは、お母さんの足を洗ってあげたことはありますか?」 

これには、ほとんどの学生が「いいえ」と答えるそうです。 

「では、三日間差し上げますので、その間に、お母さんの足を洗って報告に来てください。 

それで入社試験は終わりです」 


学生達は、そんなことで入社できるのなら、とほくそ笑みながら会社を後にするそうです。 

ところが、母親に言い出すことが、なかなかできないのです。 

ある学生は、二日間、母親の後をついてまわり、母親から「おまえ、気が狂ったのか?」と聞かれました。 

息子「いや、あのー、お母さんの足を洗いたいんだけど。」 

母親「なんだい?気持ち悪いねー」 

こうしてその学生は、ようやく母親を縁側に連れて行き、たらいに水を汲み入れました。 

そして、お母さんの足を洗おうとして、お母さんの足を持ち上げた瞬間・・・・ 

母親の足の裏が、あまりにも荒れ放題に荒れて、ひび割れているのを掌で感じて、絶句してしまいました。 

その学生は心の中で、「うちはお父さんが早いうちに死んでしまって、お母さんが死に物ぐるいで働いて、自分と兄貴を養ってくれた。 

この荒れた足は、自分達のために働き続けてくれた足だ」と悟り、胸が一杯になりました。 

そして、「お母さん、長生きしてくれよな」と、ひとこと言うのが精一杯でした。 

それまで、息子の「柄にもない親孝行」をひやかしていた母親は、「ありがとう」と言ったまま黙り込んでしまいました。 

そして、息子の手に落ちてくるものがありました。 

母親の涙でした。 

学生は、母親の顔を見上げることができなくなって、「お母さん、ありがとう」と言って、自分の部屋に引きこもったそうです。 


そして翌日、会社に報告に行きました。 

学生「社長、私はこんなに素晴らしい教育を受けたのは初めてです。 

ありがとうございました」 


社長「君は一人で大人になったんじゃない。 

お父さんやお母さんや、いろいろな人に支えられて大人になったんだ。 

そして、これからはな、自分一人の力で一人前になるのではないんだ。 

私も、お客様や従業員や、いろいろな人達との出会いの中で、一人前の社会人にならせていただいたんだよ」 


*「涙が止まらない」 から転載