◇米グーグルが描く「近未来ネット」、実現へ布石着々 

太陽光で稼働する気球を成層圏に送り込むプロジェクトや、公園での無料Wi─Fi接続サービスまで、米グーグル(GOOG.O: 株価, 企業情報, レポート)は新たなネットサービスに静かに数億ドルを費やしている。そうしたサービスはいつか、電話会社やケーブル会社の脅威になる可能性がある。 

グーグルは先に、コーヒーチェーン大手スターバックス(SBUX.O: 株価, 企業情報, レポート)の全米7000店舗で無料Wi─Fiサービスを提供する計画を発表。これはいずれ、現在AT&T(T.N: 株価, 企業情報, レポート)が提供するサービスに取って代わることになる。また、ネット接続が困難な遠隔地向けのインターネットサービスを想定し、太陽光を利用した気球30個を南太平洋上の成層圏に飛ばした。 

昨年には、ミズーリ州カンザスシティーで秒速1ギガビットの高速インターネットサービス「グーグル・ファイバー」を実験的に開始。同サービスは間もなく、テキサス州オースティンやユタ州プロボでも展開される。複数の関係筋によると、同社はカンザスシティーでの利用者の反応に満足しており、グーグル・ファイバーをさらに複数の都市に広げる可能性もあるという。 

グーグルはモバイル端末に流す音楽や動画などのコンテンツを増やすに従い、それに必要な帯域の確保にも投資を増やしている。ファイバーのようなネット接続プロジェクトは、成熟段階にある検索ビジネス以上に売上高成長に寄与するかもしれず、効果的な広告には不可欠であるネット利用者の動向把握にも役立つかもしれない。 

一方でアナリストらは、グーグルは従来の得意分野から大きく外れた領域に足を踏み込もうとしており、結果として利益率が犠牲になる恐れがあると指摘する。AT&Tやタイム・ワーナー・ケーブル(TWC.N: 株価, 企業情報, レポート)など、既存の大手インターネットサービスプロバイダーを真正面から敵に回すことにもなりかねない。 

コンテンツプロバイダーは過去、インターネットサービスプロバイダーと衝突を繰り返してきた。動画ストリーミングサービスのネットフリックス(NFLX.O: 株価, 企業情報, レポート)は、ケーブル会社コムキャスト(CMCSA.O: 株価, 企業情報, レポート)が自社のコンテンツだけを優遇していると非難した。 

インターネットサービスプロバイダーが他社のオンラインサービスをブロックしたり遅くしたりすることを禁じた連邦規制は現在、ベライゾン・コミュニケーションズ(VZ.N: 株価, 企業情報, レポート)が裁判所に異議を唱えており、今後どうなるかは分からない。 

グーグルでアクセスサービス部門のジェネラルマネジャーを務めるケビン・ロー氏は「ユーザーはもっとスピードを欲しがっている。ウェブ上で可能なことに対する人為的な上限は求めていない」と指摘。同氏は、カンザスシティーでのグーグル・ファイバーに手ごたえを感じているとしたが、同プロジェクトの加入者数や財務的な目標、拡張計画などの詳細については明らかにしなかった。 

<ファイバー> 

高速ネットワークの構築は、電柱の利用許可の取得で地方当局の協力が必要になるなど、面倒な手続きを伴う。 

また複数の業界関係者の話をまとめると、グーグル・ファイバーはまだ規模が小さく、提供されるオンラインサービスも数が限られていることで、電話会社やケーブル会社にとって差し迫った脅威ではなさそうだ。 

タイム・ワーナー・ケーブルのロブ・マーカス社長は今年4月、カンザスシティーでのグーグル・ファイバーの加入者数は4000世帯を超えたにすぎないとし、「(自社から)乗り換えた人の数は現時点では取るに足りない」と語っていた。 

一方でAT&Tは同じ4月、グーグルと同様の認可が得られれば、テキサス州オースティンで同社も毎秒1ギガビットのネットワークを構築する準備ができていると発表していた。 

投資会社セコイア・キャピタルのパートナー、ビル・コグラン氏は「既存プレーヤーたちは(グーグル・ファイバーに)どう応じるべきか答えを見つ出そうとしているのだろう。もし規模が大きくなれば、間違いなく新種の競争相手になるからだ」と語る。同氏はグーグルでエンジニアリング担当の上級副社長を務めていたこともあり、グーグル・ファイバーのプロジェクトにも関わっていた。 

今年の売上高が約600億ドルに達するとみられるグーグルの中でファイバーサービスが存在感を高めるには、大規模な展開が必要となる。100万世帯の都市を想定した場合、全体の20%が月額120ドルのグーグル・ファイバーに加入したとしても、売上高は2億8800万ドルにしかならない。全世帯の半数から契約を獲得できても年間売上高は7億2000万ドルだ。 

バーンスタインのアナリストCarlos Kirjner氏は、カンザスシティーで30万世帯にファイバーを届くようにするコストは1億7000万ドルと推計。仮に全米2000万世帯に拡大するとすれば、その費用は100億─150億ドルに膨らむとみている。 

インターネット接続事業に本格参入すれば、中核のネット事業では40%台半ばを誇るグーグルの営業利益率は、短期的には圧迫されることになる。ケーブル業界の標準的な利益率は30%台半ばだ。 

グーグル株を保有するグレーディアント・インベストメンツのポートフォリオマネジャー、マイケル・ビンガー氏は、ファイバーへの現在の投資水準に不満はないとした上で、もし費用のかさむ全米高速ネットワークへの投資などに急速にかじを切るなら、「彼らがどんなビジョンを持ち、どう利益を出そうとしているか詳細を聞かなくてはならないだろう」と語った。

<気球> 

540億ドルに上る現金資産を保有するグーグルには、ファイバーや気球などの実験プロジェクトに投資する余力は十分にある。 

気球プロジェクトに取り組むのは、眼鏡型端末「グーグル・グラス」や自動運転システムなどの実験的プロジェクトに取り組む「グーグルX(エックス)」と呼ばれる部門。 

6月に開始した気球プロジェクトでは、特殊なアンテナを搭載した大きさ12メートルの気球を成層圏に浮かべ、気球同士と地上に設置した機器を接続してワイヤレスネットワークを構築する。最終的な目標は大規模な気球ネットワークを構築することだとしているが、アナリストらはこうしたネットワークの運用には、技術的にも規制面でも課題は多いと指摘する。 

また一部の投資家は、こうした実験的プロジェクトはリソースの無駄遣いだと厳しい。ニーダム・アンド・カンパニーのアナリスト、ケリー・ライス氏は「ウォール街には、大きな収益創出が実現しないであろうプロジェクトに投資するのはやめてほしいと考える人たちがいる」と指摘する。 

ただ一方で、グーグル独自の高速ネットサービスは、動画共有サイト「ユーチューブ」など同社傘下の他のオンラインサービスには有益だとし、「インフラの環境が整えば出来ることは多い」とも同氏は語る。 

ユーチューブは5月、月間視聴時間が60億時間に達したと発表。事情に詳しい関係筋によれば、数年以内に1日10億時間突破を目指しているが、そこに到達するにはネットのスピードが生命線になる。グーグルは、この件に関するコメントを差し控えた。 

グーグルの実験的プロジェクトに対し、これまで投資家はおおむね寛容だったが、その背景には、世界のスマートフォンの5分の4に搭載されるまでに成長したモバイル端末向け基本ソフト(OS)「アンドロイド」など、過去に成功したケースがあるからだ。一方で、「グーグルTV」など鳴かず飛ばずの製品もある。 

アナリストらは、グーグルはネット接続サービスに乗り出すことで、オンライン上の消費者動向をより正確に把握できるようになり、それが効果的な広告や製品作りに生かされると指摘。調査会社ガートナーのアナリスト、イアン・キーン氏は「ネットワークプロバイダーになってトラフィックをモニターし、人々が何をしているのかを見れば、いち早く情報をキャッチできる」と述べた。 

グーグルは、ニューヨークやサンフランシスコなどの都市で、市が管理するWi─Fiネットワークに資金を提供している。スターバックスに提供する無料Wi─Fiサービスでは、現在店舗で使えるWi─Fiの10倍のスピードを実現するとしている。 

グーグルがスターバックスとの契約を発表した時、現在のWi─Fi提供者であるAT&Tは、同社もサービスのアップグレードを申し出たとし、今後もスターバックスには各種サービスを提供していくと説明していた。14日時点で、AT&Tからはそれ以上のコメントは得られていない。 

グーグルは今後、スターバックスの独自オンラインコンテンツサービス「スターバックス・デジタル・ネットワーク」の新バージョン開発でも協力する。それによってグーグルは、音楽など自社が配信するコンテンツのプロモーションや、ターゲティング広告で有利な立場を得ることになるだろう。 

フォレスター・リサーチのアナリスト、チャールズ・ゴルビン氏は「彼らはこうした取り組みをインターネットコミュニティーのためにしているのではない。彼らの目線の先にあるのは、これらの取り組みが作り出す全体像だ」と語っている。 

(Alexei Oreskovic記者 翻訳;宮井伸明 編集;伊藤典子) 



◇フェイスブックがつかんだ「モバイル広告の公式」 

米フェイスブック(FB.O: 株価, 企業情報, レポート)が24日発表した第2・四半期決算は、モバイル広告事業が好調だったことなどから売上高が予想以上に増加した。このことは、スマートフォンの小さなスクリーンの中で収益を上げようとするネット企業にとって希望の光をもたらしたと言えるだろう。 

フェイスブックのモバイル広告は前期比で75%の急伸。ウォール街の金融業界とマディソン街の広告業界が同社の事業見通しに抱く疑念を打ち消しただけでなく、スマホやタブレット型端末の利用が急速に伸びる業界において、他のネット企業にとっての道しるべになり得るとの声も聞かれる。 

好調な決算の原動力となったのはユーザー投稿の間に表示されるニュースフィード広告だが、マッコーリー・リサーチのアナリスト、ベン・シャクター氏は「非常に効果的であるため、多くの会社がこのモデルに移行したり、模倣したりするだろう。昨夜(24日夜)が重大な分岐点となった理由はそこにある」と語る。 

ネット企業幹部らはこれまで、モバイル広告が従来のデスクトップPC向け広告より利益が上がらないと懸念してきた。スマホの画面サイズやユーザーが大量の広告を嫌う傾向にあるためだ。 

グーグル(GOOG.O: 株価, 企業情報, レポート)やヤフー(YHOO.O: 株価, 企業情報, レポート)といった大手からスナップチャットなどの新興勢まで、ネット企業はどこもモバイル事業を収益化する方法を模索している。グーグルはモバイル広告事業を年間売上で推定約100億ドルに拡大させたが、デスクトップ向けの検索連動型広告と比べると、その規模ははるかに小さい。アナリスト予想によると、同社の今年の総売上高は600億ドルに上るとみられる。 

収益化を模索する1つの方法として、広告と明示せずコンテンツと融合させた形で配信する「ネイティブ広告」が業界では拡大しており、これまでのところ、さまざまな成功例が出ている。 

フェイスブックに先んじて投稿の間に表示される「インストリーム広告」のアイデアを編み出したツイッターも、モバイル広告から利益を上げる好位置にいるようだ。調査会社eマーケッターのクラーク・フレドリクセン氏による推計では、ツイッターの今年度売上高の半分以上は、モバイル広告からの収入になるという。 

ビジネス向け交流サイトのリンクトイン(LNKD.N: 株価, 企業情報, レポート)は今週、モバイルとデスクトップ向けサービスの両方でインストリーム広告を開始。ヤフーは既に同様の広告を始めており、5月には新たなサービスの開発に向けた強化策の一環として、ブログなどを手掛ける「Tumblr(タンブラー)」を11億ドルで買収した。 

しかし、広告業界に対してモバイル広告事業を最も積極的にPRし、それが実を結んでいるように見えるのは、1年前はモバイルからの収入がゼロだったフェイスブックだ。 

米広告大手インターパブリック・グループ傘下であるAnsibleのアンジェラ・スティール最高経営責任者(CEO)は、「今はモバイルが唯一の注力ポイントだと断言する企業はほかにはない。フェイスブックはその1つにすべての希望を託している」と語る。 

<追随> 

長年にわたる問題の1つは、コンテンツの邪魔になる広告をユーザーがどこまで許容できるかという点だ。フェイスブックは、ユーザー満足度を低下させずにインストリーム広告の数を着実に増やしていると説明する。 

同社のマーク・ザッカーバーグCEOは24日、ニュースフィード内の広告の割合は現在、平均で5%だと明らかにした。この比率は成功のベースラインとなる可能性があり、他のネット企業もこれに倣い、コンテンツ内の広告表示頻度を増やすことになるだろう。前出Ansibleのスティール氏は「他の企業がそれを見て、追随したとしても驚きではない」と語る。 

また、フェイスブック上の広告キャンペーンを専門にするAdParlorのフセイン・ファザルCEOは、フェイスブックがユーザーの反応を見ながら常に調整を図り、徐々に蛇口を開いているに違いないと推測。フェイスブックは広告配信における「公式」を見い出したようだが、その公式はサービスごとに異なるものだという。 

ファザル氏はまた、 「フェイスブックにそれができたのは、広告以外のコンテンツが非常に関心を引くため、20本の投稿のうち広告1つぐらいでは気にならないからだ」とし、「もしニュースフィードが関心を引かなかった場合、広告を見せ続けても機能しないだろう」と分析。さらに、表示の中に広告が増えるほどクリック率は下がり、広告価格も下がる恐れがあると指摘した。 

モバイル端末におけるフェイスブックの成功現象は、この分野で緩やかに成長するグーグルとは対照的だ。同社はモバイル効果によって、広告レートの下落幅を次第に縮小させているが、前四半期はその動きが後退し、レートは再び下落。投資家の失望を誘った。 

グーグルはこれまで交流サイト「グーグルプラス(Google+)」内でのインストリーム広告を避けている。その代わりに、モバイル検索やビデオ広告のほか、「クリック・トゥ・コール」といった革新的なサービスを融合させることで、モバイル事業で年間100億ドルを売り上げていると、RBCキャピタル・マーケッツのアナリスト、マーク・マハニー氏は推測する。これはフェイスブックの約4倍にあたる。 

しかし、モバイル事業はグーグル広告の平均コストを引き下げており、こうした状況の変化が同社にとって長期的な脅威になると考える業界専門家もいる。ただ、広告の売り方が変わり、モバイルとPCの違いがあいまいになってきたことが、広告レートを支えるかもしれないとの声も聞かれる。 

マハニー氏は「そもそもフェイスブックの強みは、デスクトップ(向け広告)の収益化がかなり未完成だったという点にある」と指摘。逆にグーグルは、まずはデスクトップ広告ありきで「完成度の高い、洗練された収益システムがあった」と話した。 

(原文:Alexei Oreskovic記者、Jennifer Saba記者、翻訳:橋本俊樹、編集:伊藤典子) 



◇Facebookの傘の下に入ったParseが初のデベロッパカンファレンスを開催 

モバイルアプリやWebアプリケーションのバックエンドをいっさい面倒見るというParseが今日(米国時間9/5)、同社初のデベロッパカンファレンスDeveloper Dayを開催して、新しい機能をいくつか発表した。 

それらは、JavaScriptのタスクをバックグラウンドで動かす、ゲームエンジンUnityとの本格的な提携、画像やユーザセッションの管理方法の改良、Webアプリケーションのサポートをモバイル並に向上、などなどだ。 

オーナーとして登場したFacebook CEO Mark Zuckerbergは、“いやぁ、あのころParseがあると良かったんだけどねぇ”、と2004年の創業時の苦労を回顧した。 

Parseは、モバイルとWeb向けのBaaS(backend-as-a-service)で、4月にFacebookが、同社のプラットホームサービスを強化するために買収した。 
Parseのサービスは、ユーザ(==デベロッパ)のアプリケーションのデータをクラウドに保存する、認証とログインを扱う、プッシュ通知をアプリに届ける、ユーザのコードをクラウドから展開する、といった基本的なバックエンドジョブだ。ParseはFacebook初の有料B2Bサービスになった。 

Facebookが買収した時点では、Parseは6万本のユーザアプリを動かしていた。 
Facebookが換骨奪胎してしまうのではないか、という 懸念も一部にはあったが、しかし買収後のParseは急成長し、ユーザ数は買収直後の9.4倍になった。 
アプリの本数は5月に8万、6月に10万となった。 

モバイル専業でスタートしたParseはその間にWebアプリケーションのホスティングもローンチし、Webアプリケーション単独は言うまでもなく、Webとモバイルアプリの両面展開をしているデベロッパは、データの共有などが非常にやりやすくなった。 

Zuckerbergがカンファレンスのキックオフを務め、Facebookの創業時のお話をした。 

“親が学費のためにたくわえていた8000ドルが、資金のすべてだった。 
サーバとルータを酷使するようなものを、作りたかった。誰かが、ルータは中古を買えば安い、と言った。eBayで買ったそいつは、運良く動いた。 
なんとか、サーバを全部自分で管理できるところまではこぎつけたが、でもバックエンドの面倒な雑務が多すぎて、ソーシャルネットワーキングのイノベーションの足を引っ張った。” 

アプリのメインのロジックをやりながら、同時にバックエンドもいじる、という軋轢ないし‘引き裂かれ状態’はParseによってなくなる、と彼は期待を述べた。 
そして誰もが、“優れたユーザ体験の構築だけに集中できるのだ”。 
彼によれば、ParseとFacebookの協働により、ユーザのアプリケーション/アプリの構築と成長を助けるツールを作っていきたい、と。 

そのあとステージに立ったParseのCEO Ilya Sukharは、今やParseは“数十億のAPI呼び出しと数十億のプッシュ通知を処理し、Parseに接続するデバイスは数億台を数える”、と現況を述べた。 

それから彼は、Parseの新機能を紹介した。 

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◆アクセス分析 – デベロッパは自分のアプリの成長ぶりや、プッシュ通知の有効性、アプリの安定性などの計測値をParseからもらえる。 
自分でユーザのログインデータなどを分析したり、別途分析サービス(Google Analyticsなど)を利用しなくてもよい。 

◆バックグラウンドジョブ – デベロッパはJavaScriptで小さなコードを書き、瀕用するタスク(メールの送付など)をスケジューリングし、Parseにやらせられる。そのために自分のサーバは必要ないし、Parseの巨大サーバを使った方が速い。 

◆Unityとの提携 – Unityゲームエンジンは、iOSとAndroidとWindowsのゲームのグラフィクスの実現のために200万あまりのデベロッパが利用している。 
提携によって作られたParse Unity SDKにより、デベロッパはUnityによるゲーム構築がより容易になる。 

◆ユーザセッションモジュール – 改良されたユーザセッションモジュールにより、ユーザのログイン/ログアウト管理がモバイルアプリとWebアプリケーションで同等となり、とくにWebアプリケーション側での格差が解消した。 

◆画像モジュール – アプリ内の画像処理をParseのクラウド上の最小限のコードで行える。画像をユーザのカメラロールから単に取り出すだけでなく、Parseにトリミングや色調整などをやってもらえる。 


なぜPARSEはFACEBOOKにとって重要か 
Parseがデベロッパに代わってバックエンドの面倒を引き受けるだけでなく、これからはFacebookにあるソーシャル機能を自分のアプリに組み入れてユーザを増やすことができる(すでにParseはソーシャルログインや共有機能などを統合)。 
そういう、ParseのFacebook的利用は、Facebookにとってもメリットだ。FacebookにとってParseが世話をしているウン十万というアプリ/アプリケーションは、重要な広告収入源でもある。 

Parseのメインはモバイルアプリのバックエンド提供なので、Facebookにとってはアプリ内購入も(その鞘取りが)収入源になる。 
一方Parse側は、バックエンドのホスティングに加えて、(Facebook自身の)アクセス分析やソーシャルの統合、広告などが、これまでの‘各オペレーティングシステムの低レベル機能だけ’に加えて、新たなサービス資源となる。 



◇ザッカーバーグ、新たな使命を語る 
    次のターゲットはインターネットにアクセスできない50億人
 

ユーザーが10億人に達した後もFacebookは前進を続けている。それどこころかインターネット・ユーザーの全員がFacebookに加入しても終わりではない。「世界をよりオープンでより結び付けられた場所にする」というFacebookの使命は地域や収入を問わず文字通り「世界中の人々」を対象としている。ファウンダー、CEOのマーク・ザッカーバーグが「われわれはインターネットを拡大するというより困難な課題に取り組むためにFacebookを再編成中だ」と語った理由はその点にある。 

先月、ザッカーバーグはInternet.orgを立ち上げ、自ら執筆した10ページのホワイトペーパーを掲載した。これはテレコミュニケーションとモバイルのハード、ソフトの6社(Samsung、Ericsson、MediaTek、Nokia、Opera、Qualcomm)をパートナーとするインターネット・アクセス拡大のためのイニシアチブだ。 

Internet.orgの目的は、新たなデータ圧縮技術、ネットワーク・インフラ、ビジネスモデルを創出することによってデータ・アクセスのコストを劇的に下げ、誰もがスマートフォン経由でインターネットにアクセスできるようにすることだ。これは非常に重要な点だ。というのもスマートフォンを利用するコストの大部分はデータ通信料金にあり、本体の価格はほんの一部に過ぎないからだ。 

Interet.orgはFacebookがもっとユーザーをかき集めるための仕掛けにすぎないという批判も出そうだ。しかし、これは本質的には利他的な事業である。インターネット・アクセスは教育を普及させ、ひいては人々の自己実現、貧困の追放を助ける。インターネットの普及は常にGDPの増大をもたらしてきたし、親しい人々が常にコミュニケーションを取り合うことを可能にする。たしかにインターネットのさらなる普及はFacebookの売上を伸ばすだろう。しかしザッカーバーグがこの事業を始めた動機は単にそれだけではない。一言でいえば「世界中の人々を結びつける」というのはFacebookの新たな使命だ。 

TechCrunch Disruptカンファレンスのステージで「手法は変わってきたが使命そのものは変わらない」とザッカーバーグは語った。 

ザッカーバーグはこのインタビューで「会社には2種類ある。何をするかが本質の会社と具体的に世界を変えることを使命とする会社だ。Facebookは後者でありたい」と語った。ザッカーバーグはビル・ゲイツをもっとも尊敬する人間の一人として挙げたが、その理由はMicrosoftが「世界のあらゆる家庭とオフィスにコンピュータを」という使命を持ち、かつそれを実現させたからだ。 

ただし、ザッカーバーグによれば「本当に意味のある価値というのは賛否の議論を巻き起こすような主張からしか生まれないというのが私の信念だ。正直であれ、などという誰も反対しようのないお題目は意味のある価値を生むことはない」という。 

Facebookの「賛否の議論のある主張」の一つが素早い行動は完璧にまさるというものだ。Facebookの社員はプロダクトを作り、作ったら即座に試し、それを繰り返すことを求められる。プロダクトが完全なものになるまでじっと座っていることは許されない。「このモットーのおかげでこれまでとんでもないトラブルを背負い込んできた」とザッカーバーグは笑う。ときには「ブレーキをかけて不具合を直せ」という主張が正しい場合があることも認めた。しかし本質的にみれば「速く動け」の哲学がFacebookに停滞を許さず驚異的な速さで進歩させた原動力なのだという。 

この哲学がFacebookに10億人のユーザーをもたらした。しかしザッカーバーグは「もちろん始めからそんな目標を持っていたわけではない。誰も朝起きて、『そうだ、人類の7人に1人をユーザーにする事業を始めてやろう』などと思うわけはない」と謙遜した。しかしマイク・アリントンが「本当に世界中の人間をユーザーにするつもりか?」と尋ねると持ち前の強気で「もちろんそうだ」と答えた。しかし現実には無理だろう。というのも特定の仕組みを嫌う人間が必ず存在するからだ。インターネットには「Facebook嫌い」はいくらでも存在する。しかしそういう人々もSMSやメールやTwitterは使っているかもしれない。Internet.orgとFacebookの使命は人々にインターネットへのアクセスとコミュニケーション手段の選択の自由を与えることだ。 

「人間はお互いに密接に結びつくことを欲する存在だ」というのがザッカーバーグの信念だ。ザッカーバーグは目を輝かせて「それがわれわれがこうしてFacebookを運営する理由だ」と断言した。 



◇「Facebook Homeを改良中。Instagramその他ソーシャル・コンテンツをロックスクリーンに追加する」 

サンフランシスコで開催中のTC DisruptカンファレンスでFacebookのCEO、マーク・ザッカーバーグはFacebookはFacebook HomeのロックスクリーンにInstagramやサードパーティーのソーシャル・コンテンツを追加するように改良中だと述べた。 

同時にザッカーバーグはさきごろ公開されたAndroid向けFacebook Homeランチャーが「期待したほど急速には普及していない」ことを認めた。ザッカーバーグはまた「現在Facebook HomeはGoogle Playストアを通じて配布されているが、将来はFacebookから直接ダウンロードできるようになる」と述べた。 

現在Google PlayストアではFacebook Homeアプリはダウンロード数が100万から500万にランクされている。最初の1ヶ月ではわずか100万ダウンロード程度だったし、 アプリをプレインストールしたHTCの専用スマートフォンを販売するなど当初は熱心だったAT&Tのようなキャリヤのパートナーもすぐに興味を失った。ヨーロッパではフランスのキャリヤ、Orangeが予定されていた専用スマートフォンを発売前に中止してしまった。 

今日のインタビューでマイク・アリントンが「Homeは失敗だったと思うか?」と尋ねたのに対してザッカーバーグは「チャットヘッドのように人気が出た機能もある」と答えた。 

Facebook Homeは同社が当初期待したほどの成功は収めていないが、すぐに引っ込めるつもりもなさそうだ。「私はやがてユーザがFacebook Homeを好きになると思っている」とザッカーバーグはいう。 

これはFacebookがいかにモバイル体験の向上と拡張に野心的であるかを示すものだ。モバイル・トラフィックの拡大はFacebookの売上に直結するのだからそれも当然だろう。「今年の第2四半期には月間アクティブ・ユーザー総数 11億人に対して6億9900万人モバイル・ユーザーがあった」と今日のインタビューでザッカーバーグは明らかにした。このモバイル・ユーザーこそFacebookの売上の急増を支えている。8月にeMarketerが発表したレポートによれば、今年Facebookは世界のモバイル広告売上の16%を占めるだろうという。昨年に比べると10%ポイントの急増だ。 

InstagramをFacebook Homeのロックスクリーンに加えるというモバイル重視の姿勢をみると、買収した他のモバイル系サービスのコンテンツもやがてHomeに連携、表示されることになりそうだ。またサードパーティーのコンテンツと連携させていけば、Homeがインターネット・コミュニケーションの新たなプラットフォームとなることを助けるだろう。 



◇俺はザッカーバーグ。「クール」なんてものを求めているわけがない 

誰が言ったか「Facebookはクールじゃない」という言葉がある。その言葉を引用して、Facebookは勢いを失いつつあると言い募る人もいる。 
しかし実のところ、Facebookが目指すのは「クールさ」ではないのだ。 
では、Facebookは何を求めているのだろうか。 

「電気というのも、登場当時は“クール”なものと扱われていたんでしょうね。 
しかし普及すると、誰も“うちには電気がきているんだ”などという話はしなくなりました。 
誰もが不必要に電気のスイッチをぱちぱちしなくなったからと言って、電気の大事さが失われたということにはならないはずです」。 

ワシントンD.C.にてAtlanticの編集長であるJaves Bennettと対談を行い、ザッカーバーグはこのように述べている。 

このところ、一部のティーンエイジャーの言葉を引いて、Facebookが魅力を失っていると言う人がおおぜいいる。 
また関連する各種調査では、ティーンエイジャーたちは「Facebookなんて好きじゃない」とか、「Facebookは使わない」と応えるのがクールであるというバイアスをかけられてしまっていることが多いようだ。 
ところが、Facebookのエンゲージメント率は下がっておらず、上のような言説や調査は、何も証明してはいないというのが実際なのだそうだ。 

Facebookも収支報告などの現場で、「若者のFacebook離れ」などという事象は確認できないと繰り返し主張してきていた。 
ザッカーバーグもいかなるデータもそのような兆候を示してはいないと述べている。今年になっても、Facebookを利用するティーンエイジャーの数は順調に増えているのだそうだ。 

ザッカーバーグの考えでは、Facebookは既に「クール」であるとかないとかのレベルを超えているのだ。ある意味では、他サービスと比べてどういう機能があるとかないとか、そういう段階も超えてしまっていると言えるのかもしれない。ザッカーバーグは冗談めかして次のようにも言っている。 

「私たちが“クールさ”を目指しているのだと考えている人が大勢います。そんなことは考えたこともありません。 
私が“クール”を目指しているかどうか、見ればわかりそうなものです。Facebookがサービスの提供を開始してから10年になります。 
ニッチを云々するサービスではなくなっています。 
“尖った”サービスで魅力をアピールするというようなサービスではないのです」。 


ではFacebookは何を目指しているのだろうか。 
ザッカーバーグは「必需品」としての地位を獲得したいのだと述べる。 
それぞれの時代に、産業にとってなくてはならないものが生まれてきた。 
そのひとつはもちろん電気だ。 
「社会には、より多くのソーシャルサービスが生まれてくるでしょう。Facebookはそれらを支える立場になりたいと考えています」とのこと。 

Facebook等、ソーシャルサービスの拡大には、プライバシーとのトレードオフもあるのではないかという疑問もある。 
それに対しては、利用者が「ソーシャル」の方向を向いているようだと応える。 
すなわち「情報をできる限り隠すことと、親しい人と繋がっていることを比較して、多くの人が繋がる方が大切であると考えているようです」と述べている。 
「ソーシャル化」の傾向は拡大していくと、Facebookは考えているようだ。 

いずれにせよ、さまざまな評価基準で見て、Facebookが大いなる成功を収めていることは間違いない。 
利用者数は膨大で、共有される情報も増え続けている。 
現在の利用者数は11億5000万人で、6億9900万人が日々利用している。 
またザッカーバーグによれば、ソーシャルアプリケーションの50%で、ログインにFacebookアカウントが利用されているのだそうだ。 

少なくとも現在のところ、Facebookが心配しているのは、ヒップなソーシャルネットワークが新たに爆発劇な拡大を見せることではないようだ。 
自らの進化を止めてしまうことの危険性を、より重要視している様子。 
洞察力のあるプロダクトビルダー、デザイナー、エンジニア、そしてビジネスパーソンの採用を拡大していかなければならない。 
また、場合によっては、才能豊かな人材が集まる企業の買収も必要であると考え、そして(少なくともこれまでのところは)実行してきている。 

さらに、現状に馴染み過ぎないことにも注意を払っているようだ。 
いずれ、今日のウェブ技術を陳腐化させる変革の波がいずれ押し寄せてくる。 
その波をしっかりと見極め、そしてその波に乗って行く方法を構築する準備を続けなければならない。 
時代の波に乗り、そして時代が「必要」とするサービスを展開していくのだ。 
足を止めてしまえば、時代においていかれる。たとえばMyspaceのような運命を辿ることになるかもしれないということを、危機意識として保持しているのだろう。