◇軍産複合体の正体

最近やたらに汚染水の濃度急増のニュースが出てくるのも気になります。
オリンピック誘致も決まったので「東京電力では埒が明かないので外資の専門会社に任そう」との世論を盛り上げるためのような気がします。

汚染水は震災時から出ているのです。
いうまでもないのですが、米国政府に強い影響力を持つベクテル社(など)の前には、日本政府はいいなりになるしかないのです。

同時多発テロに続くイラク戦争にも、古くはケネディ暗殺にも、現在ではシリアへの軍事介入にも、米国の「軍産複合体」が関わっていると囁かれます。
しかしその実態はほとんどわかりません。

そこで本日は、世界最大の軍産複合体「ベクテル社」の活動の「ほんの一端」をご紹介します。
「ベクテル社」といっても、ほとんどご存知ないと思いますが、サンフランシスコに本社を置く世界最大級の総合建設会社です。

特にインフラ関連施設(石油コンビナート、原子力を含む発電所、ダム、空港、港湾)の建設を世界規模で受注している多国籍企業です。
今もベクテル一族が大半の株式を保有する非公開会社で、その実態は全くわかりません。

ベクテル社の創業は1898年と比較的新しく、1920年代にロックフェラー家のスタンダード・オイルのパイプライン建設を受注し、1930年代にはルーズベルト政権が主導したフーバーダム建設を取りまとめ、米国政府とユダヤ資本との結びつきを強めます。

ただベクテル家はユダヤ人ではなく、むしろユダヤ嫌いともいわれているのですが、「重要な顧客ならユダヤ人でも構わない」との考えのようです。
1940年代にスタンダード・オイルからサウジアラビアでの石油精製プラント建設を受注し、その結果ファイサル国王の信頼を得て、中東におけるエネルギー事業に確固たる地位を築きます。

またアイゼンハワー政権時の1958年に、米国原子力委員会(AEC)長官に幹部社員だったジョン・マコーンを送り込み、原子力事業に本格的に進出します。
その後AECの機能は分割され、原子力規制は米国原子力規制委員会(NRC)に、原子力推進はエネルギー省に引き継がれるのですが、当然のように規制・推進双方に強固な影響力を保持することになります(究極のマッチポンプです)。

そして1981年に発足したレーガン政権では、当時社長のジョージ・シュルツを国務長官に、副社長のキャスパー・ワインバーガーを国防長官に送り込みます。
いよいよ政権の中枢を占めるようになったのです。 そしてジョージ・ブッシュ大統領(父)時代の湾岸戦争、ジョージ・ブッシュ大統領(息子)時代のイラク戦争では、イラクの復興事業として電気・ガス・水道などの整備事業を独占的に受注し、巨額の利益を上げます。

こうしてベクテル社は、米国政府とユダヤ資本との結びつきを最大限に利用し、米国だけではなく世界的に大規模なインフラ整備を独占的に受注します。
ベクテル社は軍需産業ではありませんが、戦争によって荒廃した地域のインフラ整備を独占的に受注するビジネスモデルであるため、典型的な「戦争を利用する軍産複合体」といえます。
常に戦争を引き起こす「動機」があるのです。

ところがベクテル社のビジネスチャンスは戦争だけではありません。
何でしょう? そう「災害」です。 阪神・淡路大震災の復興プロジェクトにベクテル社が深くかかわっていました。
もともと明石海峡大橋のボーリング工事を行ったのはベクテル社だったのですが、なぜ「全く地理的に不必要な」神戸空港が建設されたのかが、わかるような気がします。
空港建設はベクテル社の主要ビジネスなのです。

そして、東日本大震災の復興事業にも間違いなく水面下でかかわっています。
もともと六ヶ所村の再処理施設はベクテル社が建設指導していますが、なぜ「あんな金ばかりかかる意味のない」再処理施設を作ったのかも、わかるような気がします。

さすがに震災までがベクテル社の仕業ではないのですが(そういう陰謀論者もいますが)、現時点でのベクテル社の最大の獲物は、東京電力の原子力発電事業だと思います。
東京電力が解体されて(賠償責任はすべて国に押し付けられて)、儲かる電力事業だけが外資に「タダ同然」で引き渡されるのではないかという懸念は、決して根拠なしに書いたわけではありません。


◇2020年夏季オリンピック開催決定で思うこと


東京電力は賠償問題をすべて国が引き受け、銀行借入を大幅にカットし、発行されている普通株を無償償却してしまえば、「完全地域独占」の非常に魅力ある企業となります。
つまり「いつまでたっても埒の明かない東京電力など外資系ファンドに売り渡し、大胆に放射能問題を解決してもらおう」などの暴論がでてくることを懸念していたのです。

オリンピック開催は無事に決定されたのですが、今度は首相が対外的に「問題ない」と保証してしまったので、依然として東京電力が何も解決できないのであれば(間違いなく解決できません)、やはり同様の暴論となる恐れがあります。
もちろん賠償費用や仮に廃炉にする時はその費用も全て日本政府に(つまり国民に)ツケ回され、潤沢な現金収入のある電力事業と設備だけを「格安」で売り渡し、あとは好きなだけ値上げされるようになることを心配しているのです。

昨年7月に原子力損害賠償支援機構が優先株で1兆円の出資をしているのですが、これも大半を償却することになります。
オリンピックのために東京電力の経営体質を早急に改善しなければならないので、やむを得ないとの暴論にもなります。

「いくらなんでも考え過ぎだ」と考えられると思いますが、2000年3月に8兆円近い公的資金(国民の税金です)が投入された日本長期信用銀行を、僅か10億円でリップルウッドなる何の実績もない無名ファンドに売り渡してしまい、猛烈な貸しはがしで「そごう」などを潰され、新たに発生した1兆2000億円もの不良債権を買い取らされ、挙句の果てに再上場益から1円の税金も取れなかった「悪夢」があるのです。

最近のTPP交渉や、日本郵政のアフラックとの提携(別に米国でがん保険の専門会社でも何でもないアフラックに、一方的に便宜を提供するだけです)をみていると、またしても「悪夢」が再来しそうな気がしているのです。

それがオリンピック招致の熱狂のなかで「知らないうちに真面目な議論になっている」ことを心配しているのです。
本誌の「取り越し苦労」で終わればよいのですが、不思議にこのような悪い予想は当たるものです。

直接には関係のない話ですが、過去最高額のLBOは2007年にKKRが主導したTXU(テキサスの電力会社)の480億ドル(5兆円)です。
ところがこのTXUが破綻する可能性があり、合計で83億ドルのエクイティを出資したKKR、TPG、ゴールドマンサックスが巨額の損失を被る恐れがでてきています。
2007年とは、リーマンショック前年の投資バブルの時期だったからですが、東京電力は「その損失」を十分にカバーできる優良案件となります。
政府やマスコミがしっかりしていないと、心配の種が尽きないのです。


◇汚染水を血税で尻拭い 死に体 東電株価続伸の怪


証券界で長らく“疫病神”と囁かれてきた東京電力の株価が、このところ50円前後の小幅ながら続伸している。

政府が福島第一原発の汚染水問題で国費470億円の投入を決定し、安部普三首相が「汚染水問題は東電任せではなく、政府が前面に立って解決に当たる」と力説したのを受けてのことだ。

高濃度汚染水が海に流出していることが明らかになったのは7月初めである。
ところが関係者の対応は遅く、政府試算で1日あたり約300トンもの汚染水が流出していることが明らかになったのは、判明から実に1カ月遅れの8月7日のことだった。

福島県漁業協同組合連合会は「東電は信用できない。
これではいつまでたっても消費者の理解が得られない」と述べ、9月以降の試験操業中断という苦渋の決断を下した。

そんな矢先、政府がやっと重い腰を上げたことを好感した投資家が東電株に群がった図式だが、証券アナリストは辛らつだ。

「政府が前面に出たのは東京五輪招致を目前に控えた安倍政権のスタンドプレー。
一方、地域独占企業の座にアグラをかいてきた東電には『どんなことがあっても政府はつぶさないし、つぶせない』の甘えがある。

住民=ユーザーを人質に取っている以上、この開き直ったスタンスは電力各社に共通します」 果たせるかな北海道、東北、四国の3電力会社は、火力発電用燃料の高騰と円安を理由に9月1日から電気料金を値上げした。
今年5月には同じ理由で関西電力、九州電力が値上げしている。

昨年9月に先陣を切って値上げした東電は「今年4月から柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼動」を前提に事業計画を立てており、もしこれらに道筋がつかなければ「来年早々にも再値上げを申請するのではないか」との観測さえ飛び交っている。

平たく言えば東電はユーザーの喉元に匕首を突きつけ、原発再稼動か料金値上げかの選択を政府に迫っているのだ。
東電がそこまでシャカリキになる理由は明白である。

東電は国と銀行から支援を受けるに当たって「2014年3月期の黒字化」を“公約”に掲げていた。
しかし、巨額の赤字を垂れ流している上、柏崎刈羽原発の再稼動は全く見通しが立たない。

だからこそ今年の4月1日、事業運営方針発表の席で廣瀬直己社長は「今年度に黒字化できなかったら当社は投資適格でなくなり、会社のテイを成さなくなる。
私の責任ウンヌン以前の問題で、修繕費の繰り延べも含め、ありとあらゆる手段を尽くす」と危機感をあらわにしたのだ。

その脈絡で捉えると、東電が前述した汚染水問題で漁業関係者から轟々たる非難を浴びた裏事情が透けてくる。
原発事故で被曝した福島県民で構成する『福島原発告訴団』は9月3日、東電の廣瀬社長など現・旧幹部約30人を、管理のずさんさが汚染水漏れにつながったとして、公害犯罪処罰法違反で福島県警に告訴した。

原発地下に四方を囲む遮水壁を造るのが最善の方法と知りながら、1000億円規模の工事費が掛かることから海側にだけ遮水壁を造り、政府に理解を求めた、というのだ。

東電は今年の2月、国会の事故調査委員会に対し「中は真っ暗」とウソをつき、福島第一原発4号機の現地調査を妨害した“前科”がある。
それだけに遮水壁のケチケチ作戦が招いた汚染水問題は、今後“人災”論議に発展し、世間の東電バッシングに拍車がかかるのは間違いない。

しかし、いくら妙手を尽くしたところで、来年3月期の黒字化はもはや絶望的。政府の後ろ盾があるとはいえ、銀行団に東電と“抱き合い心中”する勇気があるかとなると甚だ怪しくなってくる。

ところが東電は10月に8000億円の融資借り換えを控え、年末には3000億円を調達する必要に迫られている。
締めて1兆1000億円。

自らのコスト削減努力にも限度があるだけに、深まる秋とともに東電は修羅場を迎えることになる。
それどころか、原発事故の賠償費用や除染、廃炉費用などをトータルすると20兆円規模に膨らむとの試算さえある。

これを東電単独で賄うのは不可能だ。
「知恵者揃いの東電は『いざとなったら政府に働きかけて原発を再稼動させる』という奥の手を考えている。
それが嫌なら電気料金をバンバン引き上げる。二つの切り札を握っている以上、彼らはこれらを有効に活用すべく、悪知恵の限りを尽くすに決まっています」(東電ウオッチャー) 折しも中部電力は、社員の給与カットを組合に打診した。

社員が血を流すことで、電気料金の値上げを申請する前工作との見方がもっぱらだ。
中電に輪をかけて崖っぷちの東電のこと、どんな“秘密兵器”を繰り出すことやら…。


◇何が起こった? 東京電力


株価にしても為替にしても「常に相場は正しい」との考えなので、「買われすぎている」とか「過熱している」とか「バブルだ」などと決して言わないようにしています。
ただ時々「どういうメカニズムで上がっているのか?」と考えて込んでしまう銘柄があります。
考え込んでも何の利益にもならないので、そのメカニズムを理解して今後に役立てようと思うのです。

2000年頃のソフトバンクや光通信がそうだったのですが、最近久々にガンホーが「その域」に達していました。
ここ数日は東京電力です。
別にガンホーのように1年で100倍になったわけではないのですが、東京電力の「株価上昇メカニズム」も考え込んでしまいました。

「原発再稼働」とか「個人資金の目先の値鞘稼ぎ」などは、単純すぎます。
東京電力の株価は、2012年7月に最安値の120円を付け、本年の安値は2月13日の182円で、年度末の3月29日でも255円でした。

それが5月14日~5月21日の6営業日で446円から841円まで上昇し、21日の終値も815円となりました。
その間の出来高合計は31.6億株で、普通株の発行総数16.07億株の約2倍にもなっています。

このような時に決算内容を見ても意味は無いのですが、4月30日に発表された平成25年3月期の連結決算は、営業利益が2219億円の赤字、経常利益が3269億円の赤字、最終利益が6852億円の赤字となっています。
電気料金は「しっかり」値上げしているので電気料金収入は13.1%増の5兆3754億円と「好調」で、それ以外に原子力賠償損害支援機構から6968億円の「支援」を受けています(支払った賠償金は1兆1619億円)。

確かに完全なる地域独占企業なので「電気料金はいくらでも値上げ出来る」「賠償損害支援金はいくらでももらえる」ことになり、緊張感を持った経営など望むべくもない企業の代表です。
だから安心感から個人投資家の買いが集中しているともいえるのですが、1つだけ重要なことが忘れられています。

東京電力は昨年7月に、その原子力賠償損害支援機構から1兆円の資本注入を受けました。
具体的には16億株のA種優先株式(議決権有り・払い込み200円)と3.4億株のB種優先株式(議決権無し・払い込み2000円)を発行しています。
普通株の発行総数は16.07億株なので、原子力賠償損害支援機構は既に49.8%の議決権を有しているのですが、B種優先株式もA種優先株式・10株に転換できるため、これを転換すると74.5%の議決権を有することになります。

さてここからが重要です。
A種優先株は時価の90%で普通株に転換できるのですが、その転換価格の上限は300円です(下限価格は30円)。
転換のためにはいくつかの条件が付いているのですが、仮に本日B種優先株式をA種優先株式に転換して、全株を普通株式に転換すれば33.33億株の普通株式が300円で発行されます。
そうなると普通株の発行増数が49.4億株と3.25倍になります。

まあ原子力損害支援機構が仮に巨額の売却益を得たとしても、それが福島の被害者の方々をはじめとする国民に還元されることはないと思うので、せめて高値を掴まないように自衛しなければなりません。

冒頭の東京電力の「株価が急上昇するメカニズム」は、このような重要事実を株式市場が忘れていることを「官僚が笑いをかみ殺して見ている」だけだからかもしれません。



 ◇安倍晋三とヘンリー・クラビス   
訪米中の安倍首相のスケジュールで、最も気になったのがハドソン研究所に招かれた昼食会でした。ハドソン研究所は大変に米国政府に近い(というよりもそのものの)シンクタンクだからです。

そこで話し込んだのがKKRの共同創業者で最高経営責任者のヘンリー・クラビス氏だったようです。KKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)とは、カーライル、ブラックストーンと並ぶ世界最大のプライベート・エクイティ・ファンドです。

KKRといえば、1989年に世界の金融市場を巻き込んで争奪戦となったRJRナビスコを252億ドルで競り落として一躍有名となり、ヘンリー・クラビス氏は当時から指揮を執り続けている米国金融界の「超大物」です。

9月24日付け「軍産複合体の正体 その2」で取り上げたカーライルや、創業者が元商務長官だったピーターソン氏のブラックストーンに比べると、KKRは比較的「民間色」の強いファンドといえます。

またKKRは昨年8月に経営危機に陥っていたルネサスエレクトロニクスへの出資に前向きだったのですが、結局は官民ファンドの産業革新機構が出資してしまいました。クラビス氏は安倍首相に「もっと(我々)ファンドの資金を活用するよう」求めたようです。

安倍首相がどのように感じたのかは不明ですが、これは「大いに利用すべき話」です。

その前に「本誌は外資が嫌いなのではなかったか?」ですが、正確にいうと「日本経済に何の付加価値もない外資が日本市場を食いものにすること」さらに「日本の当局の恐るべき無知と意味不明な遠慮で、呆れるような暴挙を認めてしまっていること」に強い怒りを覚えているだけです。

古くは8兆円も公的資金を投入した日本長期信用銀行を僅か10億円で無名のリップルウッドに売却してしまったことや、中国のインチキ企業をいくつも東証などが上場させて巨額の資金調達のあと文字通り「消えてしまった」ことや、最近では日本郵政の巨額資金と店舗網を「がん保険の専門企業でも何でもないアフラック」に提供してしまったことなど、いくらでも出てきます。

 つまりリップルウッドは何の経営能力もないので買収した新生銀行(旧・日本長期信用銀行)は今も迷走を続け、文字通り消えてしまったインチキ中国企業は問題外であり、がん保険はアフラックでなければ提供できないものではなく日本の保険会社の収益機会を奪っているだけなのです。

しかしKKRは間違いなく世界で超一流のファンドなので、その事業再生ノウハウは大いに日本経済再生の参考となり、その他の「超一流」ファンドや日本企業や日本の再生ファンドなどを巻き込んで公平な競争となれば、日本経済のエネルギーとなるはずです。

そもそも日本の金融市場に「超一流」ファンドや「超大物」が積極的に接近してくることは非常に珍しいのです。もちろんその背景には、リーマンショック以降続く世界の金融緩和による投資資金の余剰と運用競争の激化と、行き過ぎた新興国市場への投資の見直しなどがあるはずですが、日本経済にとって間違いなく「大いに利用すべき話」なのです。

安倍首相の唱える「第3の矢」には、各方面の思惑ばかりが先行している官民ファンドが「山ほど」出てくるのですが、これでは本当の企業価値の向上や日本経済の活性化に結びつきません。

KKRはインテリジェンスを325億円で買収したのが日本における唯一の投資実績で(テンプホールディングスに510億円で売却済み)、今回パナソニックからヘルスケア事業を1650億円で買収する予定です。つまり今まで日本市場ではほとんど活動しておらず、まさにこれから積極的に投資しようとしているのです。

それでは日本で事業再生や企業価値の向上に成功しても、KKRが儲かるだけではないのか?ですが、パナソニックが売却するヘルスケア事業には、パナソニックが2割出資します。つまりパナソニックは今後も投資収益の2割を「黙って見ているだけ」で受け取れるのです。

つまり日本の売り手や官民ファンドが、2~3割の株式を保有することを条件にすればよいのです。状況から考えると「多少の条件」なら呑むはずで、他の「超一流」ファンドも出てきて「もっとよい条件」になるかもしれません。

高度の駆け引きが必要ですが、KKRが参入するだけで「投資対象としての日本市場」への世界的な関心を一段と高めるはずです。それだけでも「超大物」ヘンリー・クラビスの申し入れを「大いに利用すべき」価値があるのです。

やや誉めすぎたのですが、KKRにとって本命は「東京電力」のような気がします。KKRが2007年に480億ドルと史上最高額で買収(LBO)したTXU(テキサスの電力会社)が破綻しそうになっており、このままだと巨額損失が出てしまうためクラビスはウルトラCを考え出す必要もあるからです。



◇「組織風土」改革こそが東電には必要なことであり、もはや「破綻処理」以外にあり得ない

◆JR北海道、カネボウ、東電…腐敗した組織風土はいかにして正すべきか 9月27日 大関暁夫

カネボウの白斑問題、JR北海道の路線異常放置問題のあおりで、「組織風土」腐敗の問題が俄かにクローズアップされています。All Aboutさんではその辺の理論的な考察は書いたのですが、カネボウやJR北海道が第三者機関やメディアから「組織風土を根本的に叩き直すべき」と言われたところで果たしてできるのか、今の両社の対応を見る限りにおいては、難しいと言わざるを得ないと思っています。

◆「カネボウ、JR北海道に見る「組織風土」腐敗の7S解析」
http://allabout.co.jp/gm/gc/429654/

上記出典にも書いたように、マッキンゼーが提唱したフレームワーク「組織の7S」を使って解析すると、「組織風土」の正常化に向けては、まず組織の核となる「価値観」が明確に確立され、さらにその「価値観」を組織の構成員が共有し、同時に「価値観」に裏打ちされた「制度」がしっかりと構築されることが必要十分条件になると考えられます。

しかしながら、過去の「組織風土」腐敗によって不祥事を引き起こしたりあるいは業績不振で絶望的な状況に追い込まれた企業は、一部の例外を除いてほとんどがこの必要十分条件を満たすことなく、反省の終息を迎えているように思われます。すなわち、彼らは「再発防止」というお題目の下、「制度」の再構築に終始しその形式整備完了とともに、外野の批判的目もやわらぐことで、「組織風土」改革にまで至らずに終わってしまうのです。

「組織風土」腐敗による不祥事企業にまず必要なことは、その「組織風土」を根底から正すための軸となる「価値観」の再構築でこそあり、この「価値観」は組織のトップが導きだすべきものであればこそ、トップの交代は不可欠なものと思うのです。トップの引責辞任については「辞めればそれで済むのか」という批判がつきまとうのも現実ですが、私はこうした組織の新たな軸となるべき「価値観」再構築の観点からは絶対に必要なことであると考えます。

「価値観」の再構築作業は既存の組織内における常識にとらわれては全く意味をなしませんから、基本は核となる人物の外部登用や幹部構成員の刷新などが大前提となるでしょう。多くの不祥事発生企業で「組織風土」改革が進まない原因は、トップが引責辞任しても心太式に次席が持ち上がり運営大勢にほとんど変化なしというケースが大半だからなのだと思っています。

日航の再建がなぜ短期間にあれだけうまく行ったのか、それは破綻処理による経営陣の刷新と稲盛和夫氏と言うカリスマの外部からの登用により、新たな「価値観」を生みだすことができたからに他なりません。日航の再建を「銀行の債権放棄があったから」とする向きもあり、たしかに財務という物理面では否定しませんが、生き物である組織の風土が腐ったままであったなら決して今のような再生には至らなかったであろうと思うのです。

稲盛氏は、新たな「価値観」お題目に終わらせないために、その浸透を根気強く管理者に対して直接説き続けることで実現したのでした。「価値観」が生きた社員精神に反映され、新たな制度にも活かされたがために、日航は以前とは全く別の「組織風土」をもった組織として蘇ったのです。

東京電力を見てください。福島第一の事故以前と事故以降で、何が変わりましたか。私は利用者に迷惑をかけ続け、隠ぺい体質の下自己の論理でしかものを考えられない「組織風土」は何ひとつ改まっていないと思っています。原因は、トップは交代したもののその「価値観」には何の変化も見て取ることが出来ない、いや広瀬社長は個人的には新たな「価値観」を提示しているのかもしれませんが、社員の間には恐らく何も浸透していないし浸透努力もなされていないと思えます。

やっていることは、経費削減等をお題目に掲げ魂の抜けた「制度」の改革のみ。そこに「価値観」の底支えは微塵も感じられず、「人材」への影響も皆無。結局、東電の問題がこのような状況下の国有化東電として進められても、根本的な問題の解決にはならないでしょう。私がしつこく「東電は破綻処理すべき」との主張を続けているのも、「組織風土」改革こそが東電には必要なことであり、それを実現させ本当の再生をするにはもはや破綻処理以外にあり得ないと思うからなのです。

カネボウもJR北海道も、現時点ではトップは辞任せず、聞こえてくるのは再発防止に向けた「制度」の再構築のみ。このままでは、組織何には恐らく何の変革も起きず腐敗した「組織風土」のまま再スタートを切って、いつかまた同じような問題を引き起こし東電のように今度こそ立ち直り不能な状況に陥るように思えてなりません。

「組織風土」腐敗を指摘されている企業は、「制度」の再建だけでは根本的な解決には全く至らない。「価値観」の再構築と「人材」への浸透があり、その下での「制度」の再建がなされてはじめて、「組織風土」の腐敗を止め改めることができるのです。落ち着いて考えてみると、この問題はカネボウ、JR北海道、東電だけの課題ではなく、前後日本の発展と共に成長を続けてきた高齢日本企業共通の“老害症状”であり、多くの大手企業が自分の問題として向き合う必要があるのかもしれませんが…。 


(私のコメント)

いったん腐敗した組織は頭だけ変えても組織腐敗は治らない。戦線の陸軍海軍も515事件や226事件で腐敗した組織を露呈しましたが、政権は何ら抜本的な軍改革をせずに逆に統帥権を盾に政権に対して干渉を行うようになってしまった。大本営の言う事を関東軍などの前線部隊は言う事を聞かずに戦線を拡大してしまった。

東京電力もカネボウもJR北海道も組織の腐敗が進んでおり、社長や会長だけを変えても同じ事故を繰り返す事でしょう。これはこれらの会社ばかりでなくあらゆる日本の組織の腐敗に共通する事であり、民間会社なら倒産して淘汰されていくことでしょうが、電力会社や鉄道会社は公共事業だから倒産させて廃止するわけにはいかない。

JR北海道も独立採算では無理なことは最初から分かっていたことであり、国の補助などもありましたが、安全対策を後回しにして経営の合理化だけを推し進めてきた。東京電力も同じであり、採算性を最優先して安全対策を後回しにしたから福島原発の災害が起きてしまった。民間会社である以上はそうなってしまうのだ。

東京電力にしても原発関連の不祥事が起きて、担当役員の更迭などありましたが、その為にかえって原子力に詳しい役員がいなくなってしまった。経済産業省の原子力安全保安院も原書力安全委員会も機能せず、東電は監督官庁からの改善命令を無視した。勝俣会長は聞いていないと恍けているが、だれも責任を取らないで逃げてしまった。

JR北海道にしても事故が頻発しても、社長が自殺しても何ら組織は変わることがなく、レールの保線作業の手抜きが組織的に行われてきた。採算性を重視すれば保線作業などのコストのかかる仕事は手抜きされる。高速道路でコンクリートの天井が落ちる事故も結局は安全点検が手抜きされてボルトの破断が分からなかった。死亡事故が起きて初めて総点検が行われて数百か所の異常が認められた。

民間でやれば重大事故が起きなければ安全対策は後回しにされるのはわかりきった事であり、監督官庁があっても形式的な査察が入るだけだ。安全対策に力を入れれば利益が減って赤字が増えて社長は株主などからは経営責任が追及される。戦前の軍隊でも大戦の大敗北でようやく軍は解体されましたが、このような壊滅的事態にならなければ組織の改革は無理なのだろうか。

日本のあらゆる組織が制度疲労を引き起こしており、公務員は財政赤字にもかかわらず民間の賃金の倍近くを年収で得ている。それに対して政治家は公務員の給与引き下げには手が付けられない。つまり財政が破たんして国家財政がストップするような事態にならなければ改善はできないのだろう。財務省は増税によって財政再建だと言っていますが、昔軍隊今官僚で誰も公務員の横暴を止められない。

もちろんこのような組織の腐敗などに警鐘を鳴らす人はいますが、東電の勝俣会長のように平時は聞く耳を待たない。むしろ金をばら撒くことや天下りを引き受けることで絶大な権限を持っているが、いざ大災害が起きれば知らなかったで済んでしまう。たとえ一生懸命改革に手を付けようとする社長もいるのでしょうが、人気さえ全う出来ればいいといった社長がほとんどだ。

JR北海道にしろ東電にしろ構造的問題なのですが、破綻処理を主張していますが株や社債が紙切れになることだから既得権者の反対でできない。これだけ多くの災害を起こしても会社を潰せないのだから腐敗した組織を立て直すことは無理なのだろうか? 原発災害は原爆が落ちたのに等しい災害であり、民間会社では利益優先で任せられない事は明らかだ。