日本に今、シンプル族という名の新しい消費者が増加している。 
    (三浦展著 『シンプル族の反乱』 ) 

シンプルな暮らしの魅力に気づいたシンプル族は、景気が回復しても浪費的な生活には戻らない。 

だから、シンプル族を理解できない企業は生き残れない。 


お客さまにインタビューすると、 
余計なデザインをするな、余計な色を付けるな、余計な機能を付けるな、ゴテゴテさせるな、何もしなくてもいい、普通がいいという声ばかり聞こえてくる。 

しかし、企業はシンプルな飽きのこないデザインだと買い換えてもらえない、価格を高く設定しずらいなどの理由で、シンプルなものを作らない。 

そして、シンプルで飽きのこないデザインは、デザイナーのセンスの良し悪しが問われる難しいデザインだから。 


もう時間の猶予はない、シンプル族の時代がやってきた、シンプル族の価値軸が顕在化しつつある。 

シンプル族は、流動的で不安定な進歩ではなく、永続的で安定的、不変的なものを求めている。 


<シンプル族の特徴> 

・物の所有にこだわらず、借り物でも共有でもいいと考えている。 

・他者とのつながり、共同(協働)、共感を大切にしている。 

・資源、環境を人間だけのものと考えず、地球上の他の生物との共有物であると考えている。 

・様々な国や地域の文化を認め、積極的に取り入れようとしている。 

・新しい物をいたずらに追い求めるのではなく、古い物の価値を認め、味わおうとしている。 

・機械文明に過度に依存せず、生活の基本を大事にし、手仕事を重視している。 

・自分なりの価値感を確立しており、それに合致するものに独自の価値を見出している。 


 ⇒ 基本的価値を満たし、プラスαの価値はお客さまにゆだねる 
   シンプルな商品・サービスを求めている。 

 ⇒ 物理的ではなく、精神的に生活の質を高める商品・サービスを求めている。 
   ・無駄な買い換えの促進は逆効果。 

 ⇒ 環境負荷、社会コストの低減につながる商品・サービスを求めている。 
   ・企業個別のネットワークインフラから業界プラットフォームとしての 
    ネットワークをデザインし、社会的価値を組み込む(ATM、スマートグリッド) 
   ・提供価値としての競争要因と非競争要因の峻別による社会コスト低減 


企業はシンプル族に対応するという発想ではなく、お客様へ提供する価値の本質の進化、シンプル化へと大きく舵をきらなければならない。 

企業は売上を伸ばすため、利益を増やすために存在しているわけではない。 
売上、利益は活動を継続するための手段であり、企業が存在する目的は人がひととして活き活きと生活できる環境を、シンプルな価値として提供し、整備することにある。