世界保健機関(WHO)のデータによると、自殺率がいちばん高いのはリトアニアで人口10万人に対し38.6人、2位ベラルーシ、3位ロシアと続き、日本は8位(同23.7人)、韓国11位(同21.9人)で、米国42位(同11人)だった。 


自殺者の多くは、リストラや配置転換がきっかけとなり、過労、人間関係の悪化、うつ病、生活苦など、いくつかの要因が重なり自殺に至る。 

職場に残った人たちの多くは、ギリギリの人員で仕事が増え過労になり、いつか自分も…と不安を感じ、職場の人間関係が悪化し、うつ病になり、そして自殺、という“悪のスパイラル”に入り込む。 


そして、その対策として企業が力を入れているのが、3次予防(健康問題が発生した場合に行われる専門的治療、再発防止策の対処)とも、4次予防とも言われるもの。つまり、自殺者が出た“後”の会社側の対応だ。 

訴訟を起こされて補償金を支払うリスク、会社の評判を落とすリスク、そうしたリスクを無くすことのほうが、労働状況を改善するよりも優先して行われているのが現状なのだ。 

トップにとって、大切なのは会社。会社はそこで働く“人”で成り立っているが、トップの意識には“人”がいなかった。 


私たちが働くのは、自分の能力を発揮したり、たくさんの報酬を得るためだけではない。自分の成長もさることながら、他者とのつながりも求めている。 

私たちは他者に認められて初めて、自分の価値を認めることができる。他者とつながっていることで、私たちは自分の存在意義を見出しているのだ。 

自分と心の距離感の近い人の存在は、ストレスに対する大きな“傘”となる。そのつながりは個人だけでなく、組織にも存在する。社員同士、社員とリーダー、社員とトップ、それぞれがつながっている組織は、企業に降り注ぐストレスの雨に対峙する傘になる。 

大切なものは、意外と目に見えないものかもしれない。空気、希望、愛・ ・ ・。目で確かめることができないものばかり。 


あるトップは毎朝社内を1時間かけて歩きまわり、あるトップは社食で従業員たちと食事をし、あるトップは社長室にバーを作り、社員と夜通し飲んでいた。 

それぞれのやり方で、それぞれの考えで、方法は異なるけれど、いずれも社員と人と人としてつながる場を、意識的につくっていた。つながりを肌で感じられる場を作っていた。 


同じ空間で、同じ時間に、同じ空気を吸いながら過ごすことは、伝えたいメッセージが重要であればあるほど必要だ。 
受け手は話し手の表情や声のトーン、仕草などを感じながら、メッセージの内容を理解する。話し手も、自分の話を聞く相手の表情、仕草を感じることで、自分の伝えたいことが伝わったか、それを相手がどう受け止めているか、知ることができる。 

その繰り返しが、つながるということであり、そこに熱が生まれ、大きな“傘”となっていく。