民間給与所得者の平均給与は、平成9年の467万円をピークに下がり続け、平成20年には429万円と、11年間でマイナス8.1%、総額14兆円減少している。 
この賃金水準の低下は、低所得階層の増加と中間所得階層の減少および若年層及び高齢者層の低所得化によってもたらされている。 

ストックとして1400兆円の金融資産があるといわれても、所得の縮減など将来不安があると消費が日本経済を牽引するはずもなく、萎縮する消費がさらに国民の所得を落とす悪循環の状況にあると言える。 
この様な事態を放置すれば所得再分配だけが政治的テーマとなり、貧困層も富裕層もともに不満を増大させる不安定な社会になってしまう。 

いまこそ、経済成長ステージから精神文化充足のステージに向けて政経一体となった課題認識を形成していくために、一人ひとりが活き活きと生活するための社会の在り方を幅広く議論し、国民の思考・価値観の進化をしかけることが求められている。 

特に、お金とは何か、コミュニティの在り方、活きること・死生観にまで踏み込んだ国民的議論を喚起し、一人ひとりの生活満足を志向した新たな概念、スキームを模索するとともに、 
政治的側面からは、セーフティネットの充実による生活不安の解消に取り組み、 
経済的側面からは、一次産業および社会システムである生活インフラの生産性および付加価値の向上に取り組むことが重要ではないかと考える。 

一人ひとりの生活満足を高める取り組みに正解はない、精神的充足を求めてひとりでも多くの人と課題認識を共有し、一緒に考え、ともに行動を起こすプロセスの中から適解を積み重ねていく必要がある。 

まさに、”いま、ここ”をしっかりと受けとめ、”これから”に向けて、社会の命題をビジネスに変換する社会企業家が求められている所以ではないだろうか。