いま、超長期の卸売物価指数サイクルはボトムに近く、今後は約四半世紀かけてインフレの上昇サイクルが到来する。 

金融政策というのは積み重ねであり、ボディブローのように累積的にだんだん効いてくる。 


リーマン・ショックの時、アメリカはすぐに金融を緩和した。 

その結果、アメリカ経済は決して良いとは言えないけれど、1930年代の大恐慌に比べればずっと軽微なダメージで済んでいる。 

既にアメリカの政策金利は過去半世紀で最も安い水準にあり、ゼロにへばりついている。 


この累積的(cumulative)な影響により、これからはデフレからインフレへの転換、加速が懸念される。 


アメリカ、日本、欧州などの先進国がデフレの脅威と背中合わせで暮らしている一方で、世界の人口の半分はインフレの脅威と戦っている。 

BRICsなどの新興国が好調な経済を背景にインフレリスクを抱えているときに、アメリカや欧州の景気がピックアップしたら、あっという間に素材や穀物の価格が急騰する局面も無いとは言えない。 

つまるところインフレというのは、ものの値段が騰がるのではなく、貨幣の価値の毀損に他ならないのだから。 


日本は素材や穀物の少なからぬ量を輸入に頼っているので、世界がインフレになると、国内が不景気であってもインフレ圧力は輸入品を通じて伝染する。 

その時、最初にソブリンデフォルトに遭遇するのは、資源の開発努力をしていない日本である可能性が高い。