金融政策依存という罠、格差拡大に対処できない国を待ち受けるもの

 経済成長も確かに大事だが、現在の主要先進国にとって成長自体の鈍化よりも頭が痛いのは、貧富の差の拡大の問題ではないだろうか。
ユーロ圏をデフレから守ろうと闘う欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は、政策金利がほぼゼロの今、資産購入によってインフレ率を押し上げようとしている。
しかしECBの講じる方法が米国や英国、日本型の量的緩和(QE)に近づけば近づくほどエコノミストの間で悩みが深まっている。

中央銀行の資産購入の目的はあくまで経済の安定と実体経済の回復だが、貧富の差の拡大という副作用が避けられない。
「金持ちをさらに金持ちにしかねない」との批判が高まることが必至だからだ。

FRBのイエレン議長も、高等教育の費用増加など機会均等の欠如を招く原因について複数言及し、その上で「所得と富の格差は過去100年で最大の水準に近い。

こうした傾向が我が国の歴史に根ざした価値観(機会の平等)に照らしてどうなのかを問うことが適切だ」と現状を憂慮する異例のコメントを述べている。


経済協力開発機構(OECD)は、「世界の富裕層と貧困層の格差の拡大は1820年代と同じ水準にまで悪化している」との報告書を公表し、こうした変化は過去200年で「最も憂慮すべき」事柄の1つだと警告した。


金融緩和は次の「危機の火種」も育てつつある。

主要国・地域の中央銀行や監督当局で構成する金融安定理事会(FSB)は、、「シャドーバンキング(影の銀行)の規模が世界全体で昨年5兆ドル拡大して約75兆ドルになった」とする報告書を発表した。

これは過去最低水準の金利を背景に、投資家が利回りを追求しているためである。
ヘッジファンドや不動産、不動産投資信託(REIT)などを含む影の銀行業界の規模は、世界のGDP比120%前後、金融資産全体の4分の1に相当する規模にまで達したという。