唾液が歳とともに出なくなるのをご存じですか。
・働き者の唾液
・むし歯、歯周病の原因に
・唾液が増えるとむし歯にならない
・口ストレッチでドライマウスを治す
・食べ物で歯が隠れて見えない患者さん
・麻痺は手足だけに起こるものではない
・口が麻痺したら歯があっても物を噛めない
・「8020」だけじゃ足りない
・唾液の自浄作用が働かない患者さんたち
・たった一口のゼリーがもたらした希望
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・標準血圧のガイドラインは目に余る
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・日本酒だけで生きる90歳
”よく活き、よく老い、よく死ぬ” ための生活知共有サロン ☆★
歯科と言っても、矯正歯科や歯周病科、口腔外科など20近くの専門診療科があります。その中の一つに私の専門の摂食機能療法科があります。
全国の歯科大病院で摂食機能療法科があるのは日大だけで、歴史も浅く、なじみの少ない診療科です。
この道に入るきっかけは、30歳になったばかりの頃、リハビリテーション専門の病院に勤務することになったからです。当時、リハビリというとスポーツ選手のことを思い浮かべましたが、入院患者の7割は脳卒中患者でした。
病院で初めて患者の口の中を診て驚きました。虫歯、歯槽のう漏はもちろんでしたが、食べ物が残ったままだったのです。その日の昼ご飯が何だったかがわかるような状況でした。
口にまひがあると、患者は、自分でのみ込んだり吐き出したりすることができず、その状態が続くと虫歯が何本も一度にできてしまいます。
歯磨きできないから虫歯が増えたと思われるかもしれませんが、(健康な人だと)3か月間、歯を磨かなくても、私の診た患者のように虫歯はできません。通常は、食べたり、話したりすることで虫歯を防ぐ作用が働くからです。
それまで私は、口の中をきれいにし、歯を治せば何でも食べられるようになると思っていました。しかし、リハビリ病院での経験から、喉や口にまひがある場合、摂食・
介護が必要なお年寄りの死因のトップは肺炎です。これは、口から食事をとらず、会話の機会も少ないため、口は雑菌の巣になり、これを吸い込むと、
しかし、食べ物を口にするだけで雑菌を洗い流せます。これを「命のワンスプーン」と呼んでいます。歯磨きも大切ですが、口は「食べる」「話す」「表情を作る」「呼吸する」のすべてが備わって初めて機能します。
こうした機能の強化には「口ストレッチ」が有効です。例えば、喉の上下動を担う筋肉は、あおむけになって、頭を上げて、爪先を10秒間見ることで鍛えることができます。
唾液は健康の目安になります。口の中が唾液で潤っていれば、健康といってもよいぐらいです。口を潤すには、口ストレッチのほかに、心身がリラックス状態にあることと、口への心地よい刺激も大切です。
私は、「健康とは何か」と聞かれると、「感じること」と答えます。食べておいしいと思える瞬間があることが、「健康で幸せ」ということだと思います。
車椅子生活でも寝たきり生活になっても、人は幸せにも健康にもなれると思います。健康は数値で表せるものではありません。それぞれの主観次第で、健康に暮らすことができると信じています。
(2014年12月27日 読売新聞)
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