◇子ども時代の笑顔で未来がわかる
米国の学校には子ども一人ひとりの写真を撮る「ピクチャー・デイ」という恒例行事がある。「笑って!」の言葉を合図に、フラッシュがたかれ、何百万人という子どもたちの表情が後世に残される。私がピクチャー・デイのことを思い出したのは、7歳の息子が写真撮影のために襟付きのカラフルなシャツを着て、鏡の前で髪をとかしているのを見たからだ。「にっこりするんだぞ」と言わずにはいられなかった。笑いなさいよ、と励まされたり、懇願されたり、叱られたりした記憶は誰にもあるだろう。
米国の学校には子ども一人ひとりの写真を撮る「ピクチャー・デイ」という恒例行事がある。「笑って!」の言葉を合図に、フラッシュがたかれ、何百万人という子どもたちの表情が後世に残される。私がピクチャー・デイのことを思い出したのは、7歳の息子が写真撮影のために襟付きのカラフルなシャツを着て、鏡の前で髪をとかしているのを見たからだ。「にっこりするんだぞ」と言わずにはいられなかった。笑いなさいよ、と励まされたり、懇願されたり、叱られたりした記憶は誰にもあるだろう。
息子がどうしても見たいと言うので、私は廊下のクローゼットでブランケットの下敷きになっていた自分のイヤーブックを引っ張り出した。中学時代の私は自信に満ちた表情をしていたが、高校2年のニキビ顔の私は見るからに不安そうな表情をしていた。それでも、どの写真にも身体的な特徴とは別の、間違いなく私らしいところが見えた。写真からわかるのは撮影されたときの自分の姿かたちだけなのだろうか?それとも、写真から自分の未来を読み取ることはできるのだろうか?
この疑問に答えようと、私は同僚と共に大学のイヤーブックに掲載された数百枚の写真を使ってそこに映っている人の表情を慎重に計測した。大学時代の表情から社会的に非常に重要な意味を持つ1つの出来事、すなわち離婚を予測できるかどうかを調べるためだ(この研究は2009年に「モチベーション・アンド・エモーション」に掲載された)。研究の結果、大学時代の写真で笑顔の度合いが最も低かった人は最も高かった人と比べて約5倍も離婚しやすいことがわかった。
この疑問に答えようと、私は同僚と共に大学のイヤーブックに掲載された数百枚の写真を使ってそこに映っている人の表情を慎重に計測した。大学時代の表情から社会的に非常に重要な意味を持つ1つの出来事、すなわち離婚を予測できるかどうかを調べるためだ(この研究は2009年に「モチベーション・アンド・エモーション」に掲載された)。研究の結果、大学時代の写真で笑顔の度合いが最も低かった人は最も高かった人と比べて約5倍も離婚しやすいことがわかった。
婚姻生活を続けている人は離婚経験者と比べて、大学時代の笑顔が明るく、優しいことが多かった。笑顔の度合いを測るのは難しいように思えるかもしれないが、はっきりした笑顔と弱々しい笑顔の違いの一つに、優しく笑ったときには口角を引き上げる筋肉だけでなく眼輪筋と呼ばれる筋肉も収縮することがある。眼輪筋を使うと、目は俗にいう「キラキラ輝いた」状態になる。
学生時代の写真を見ると、離婚を経験することになる人たちは顔に感情を出さない傾向が強かった。笑わない人もいたし、笑っていたとしても、カクテルパーティーで話し疲れた人が見せるような表情をしていて、眼輪筋を収縮させない傾向にあった。
人生の早い段階で撮影した写真から将来離婚することが予測できるかどうか調べるために、私たちは中西部のある小さな町で一軒一軒家を訪ね歩いて、55歳を超える人に子どもの頃と思春期の頃の写真を貸してほしいと頼んだ。91歳までの高齢者たちが200枚を超える大切な写真を貸してくれた。写真は誕生日や初めての聖体拝領式、卒業式といった記念日に撮影されたものだけでなく、普段の様子を撮影したものもあった。撮影当時の被写体の年齢は平均約10歳で、これらの写真から将来、この人たちが離婚するかどうかが予測できた。大学のイヤーブックの写真からわかったのと同じ結果だった。
写真から予想できるのは結婚の成否だけではない。リーアン・ハーカー氏とダッチャー・ケルトナー氏による2001年の研究によると、大学のイヤーブックで明るく、優しい笑顔を見せている女性は大学卒業から30年の間に不安になったり、悲しんだり、失望したりすることが少なかった。顔の感情を表さないクラスメートと比べると、明るい笑顔の女性は他者との社会的なつながりを持ち、充実した人生を送っていた。この研究は「ジャーナル・オブ・パーソナリティー・アンド・ソーシャル・サイコロジー」に掲載された。
2010年に「サイコロジカル・サイエンス」に発表された研究では、研究者のアーネスト・アベル氏とマイケル・クルーガー氏が1950年代初めに撮影されたプロ野球選手の写真を調査したところ、優しい笑顔を見せていた選手は平均で80歳まで生きたが、笑っていなかった選手の平均寿命は73歳だったことがわかった。「Say Hey Kid(セイ・ヘイ・キッド)」のニックネームで知られ、周りにいる人も自然と微笑んでしまうような笑顔の持ち主だったウィリー・メイズ選手は今、82歳だ。
当然のことだが、笑顔がこうした幸せな結果をもたらしたとか、笑顔がたった一つの確実な判断材料だとか、時代や文化が違っても笑顔の持つ意味は変わらないと結論づけるのは誤りだ。だから、子どものころ、不機嫌そうな顔で写真に写っていた人も、カメラにしかめ面しか向けない10代の娘さんがいる人も心配しないでほしい。笑顔の有無だけが人の運命を決めるわけではない。当然、人によって異なる。
それでも、笑うという行為から驚くほど多くの大事なことを予測できる。なぜだろうか?それはまだわからない。確かなのは、写真にはいつまでも変わらない人の本質を捉える力があるということだ。さあ、昔の写真を引っ張り出してこよう。当時の自分からどんな未来を読み取ることができるだろうか。
By MATTHEW HERTENSTEIN
(ハーテンスタイン氏はデポー大学の心理学准教授。著書「The Tell: The Little Clues That Reveal Big Truths About Who We Are(あなたという人間について重大な真実を明らかにする小さな手掛り)」が11日に刊行される)