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2013/12

漢字・ハングル混じり文は「日本帝国主義の残滓」として、漢字まで追放してしまう激情ぶり。

■1.ハングル表示で待たされる

 先日、関西空港からパリへ飛び立とうとした処、手荷物検査場の入り口に、各便の出発ゲート番号を示す電光掲示板があったので、自分のフライトを再確認しようとした。ところが、その表示がハングルで、なかなか日本語に切り替わらない。「なんでハングルまで表示する必要があるんだ」と不愉快な思いをしながら待たされている時間は実に長く感じた。

 ようやく日本語に表示が変わって、手荷物検査と出国処理を終えて、ゲートまで往復するシャトル便に乗ろうとすると、そこにもゲート番号を表示する電光掲示板があった。一人の男性白人客がそれを眺めながら、じっと待っている。その時の表示は中国語だった。

 英語表示を見るには、最悪、日-韓-中と3倍もの時間、待たされることになる。急いでいる客だったら、いらいらして「こんな空港、二度と使ってやるものか」と思うだろう。

 外国人用の案内は英語だけで良い、というのが国際常識である。中国語、韓国語を入れて「おもてなし」をしているつもりだろうが、他の国々の人々にはかえって迷惑をかけている、という事に気がつくべきだ。近隣諸国を大切にというなら、台湾の正漢字、フィリピンのタガログ語、ベトナム語、タイ語、マレー語、インドネシア語などの表示はなぜ、しないのか。

 世界には無数の言語があるから、各国民を平等に扱おうとすれば、結局、実質的な国際コミュニケーション言語である英語で表記するしかない、というのが国際社会の智恵なのである。


■2.日本語そのままの用語

 ハングルで書かれると日本人にはチンプンカンプンなのだが、もともと朝鮮半島は漢字圏だったので、漢字で書いてくれれば、理解できる用語は多い。

 窓口(チャング)、改札口(ケーチョング)、入口(イブク)、出口(チュルグ)、乗換(ノリカエ)、踏切(フミキリ)、横断歩道(ヒンタンポド)、手荷物(ソハムル)、大型(テーヒョン)、小型(ソヒョン)、受取(スチュイ)、取扱(チュイグプ)、取消(チュイソ)、割引(ハルイン)、行方不明(ヘンバンプルミヨン)、弁当(ベントー)

 何の事はない。漢字で書いてくれれば、旅行者も大抵の用は済みそうだ。しかし、なぜ、こんなに日本語と似た単語が使われているのか。豊田有恒氏は著書『韓国が漢字を復活できない理由』で、こう述べている。

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 韓国の漢字熟語は、中国起源でなく、日本統治時代に日本語からもたらされたものである。明治以来、欧米の文物の摂取に熱心に取り組んだ日本は、論理、科学、新聞など多くの訳語を案出した、これらの訳語が、韓国ばかりでなく、漢字の本家の中国でも採用されていることは、よく知られている。[1,p17,a]
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 たとえば鉄道関連用語は、日本人が欧米の鉄道を導入する際に案出し、日本統治時代に朝鮮において鉄道が敷かれるのと同時に移入された。だから、同じ用語が使われるのは、当然なのである。

 多くの用語は、日本語から漢字のまま移入され、韓国語の漢字の読み方で読まれた。だから、日本語の音読みに近い。窓口(チャング)は日本語の音読みなら「ソウコウ」、受取(スチュイ)は「ジュシュ」、行方不明(ヘンバンプルミヨン)は「コウホウフメイ」と、似通っている。ただ乗換(ノリカエ)、踏切(フミキリ)などは、どういうわけか、日本語の訓読みがそのまま残っている。


■3.韓国で使われている漢字語の8割以上が日本製

 豊田氏は、現在、韓国で使われている漢字語の8割以上が日本製だと指摘している。特に、日本統治時代に政治、科学技術、企業経営、スポーツなどの近代化が進んだので、それらの分野の専門用語はほとんどが日本語起源である。

 たとえば、科学、数学の分野では:

 科学(カハク)、化学(ファハク)、物理(ムルリ)、引力(イルリョク)、重力(チュンニヨク)、密度(ミルド)、組成(チョソン)、体積(チェジヨク)、加速度(カソクト)、電位(チョヌイ)、電導(チョンドウ)、元素(ウォンソ)、原子(ウォンジャ)、分子(プンジャ)、塩酸(ヨムサン)、算数(サンスウ)、代数(テースウ)、幾何(キハ)、微分(ミブン)、積分(チョクブン)、函数(ハムスウ)、、、

 経営関係では:

 社長(サジャン)、専務(チョンム)、常務(サンム)、部長(ブジャン)、課長(カジャン)、係長(ケジャン)、打合(ターハブ)、手続(スソク)、組合(チョハブ)、株式(チョシク)、売上(メーサン)、支払(チブル)、赤字(チョクチャ)

 韓国は、これらのすべての用語を日本語から借用し、それで近代科学技術を学び、近代的な企業経営を始めたのである。


■4.漢字廃止で同音異義語のオンパレード

 科学技術から企業経営、交通や法律・政治まで、近代的用語がほとんど和製漢字語で取り入れられているのに、漢字を廃止して、ハングル表記するとどうなるか。

 日本語と同様、韓国語は複数の漢字が同じ読みを持つから、同音異義語のオンパレードとなってしまう。

 たとえば、長、葬、場はすべて「ジャング」なので、会長、会葬、会場はすべて「フェジャング」と同じ発音になる。「会長が会葬に会場に来た」は、「フェジャングがフェジャングにフェジャングにきた」となってしまって、これでは文脈から判断するのも難しい。話し言葉ならまだしも、書き言葉でこれでは、物事を正確に伝えるには大きな障害となる。

 神社も紳士も「シンサ」なので、「ヤスクニ・シンサ(靖国神社)聞いたことある?」と聞かれた若い女性が「偉人かな」と答えたそうな。「ヤスクニ紳士」と間違えたのだ。確かに日本人にとっての偉人を祀った神社ではあるのだが。


■5.ひらがなだけの文章の読みにくさ

 したがって、書き言葉から漢字を追放したら、日本語をひらがなだけで書くような事態になる。たとえば、こんな具合である。

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 おそんふぁさんに よると、かんこくじんは せかいいち、どくしょりょうの すくないこくみんで、かんこくとうけいちょうの ちょうさでは へいきんどくしょりょうは 5.3さつ/ねん。どくしょばなれが してきされる にほんじんでも ねんかんやく19さつ。かんじはいしが しゅよういんで、はんぐるだけでは、ひらがなだけの ほんを よむような もの。
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 こんな文章は、よほど忍耐強い人でなければ読み通せないだろう。しかも読むスピードは何分の一かになってしまう。

 漢字交じりで書けば、上記の文章は:

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 呉善花さんによると、韓国人は世界一読書量の少ない国民で、韓国統計庁の調査では平均読書量は5.3冊/年。読書離れが指摘される日本人でも年間約19冊。漢字廃止が主要因。ハングルだけでは平仮名だけの本を読むようなもの。
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 重要な言葉は漢字になっているので、漢字だけ追えば、だいたいの意味はとれる。ここが日本語の仮名漢字まじりの優れた処で、逆に中国語のように全部漢字だったら、こうはいかない。

 それにしても、こんな平仮名だけの本を年5.3冊も読むのは日本人には到底できない事で、逆に韓国人の個人的能力、意思力はすごいのではないか、と考えてしまう。


■5.漢字は「日帝の残滓」

 それにしても、なぜ韓国はこんな便利な漢字利用をやめてしまったのか。

 漢字使用を制限したのは、戦後すぐの1948年、李承晩大統領による「ハングル専用法」である。米軍占領下で日本が抵抗できないのを見透かして、勝手に李承晩ラインを引いて竹島を奪った大統領である。徹底的な反日教育を実施して、「電信柱が高いのも、ポストが赤いのも、みんな日本が悪いとされる」と揶揄されるほどであった。

「ハングル専用法」は、「大韓民国の公文書はハングルで書くものとする。ただし、当分のあいだ必要な時には漢字を使用することができる」とした。政府の公文書のみを対象にしたものであったが、それでも、「当分のあいだ必要な時には」という留保をつけているのは、漢字抜きは無理があると分かっていたからだろう。

 日本統治時代は漢字・ハングル混じり文が推奨されていた。したがって漢字は「日本帝国主義」の残滓のように誤解され、排斥の対象となった。逆に、ハングルは民族のシンボルとして祭り上げられたのである。

 実際に歴史を良く調べれば、それまで教養のない女子供の使う「牝文字」「わらべ文字」などと軽蔑されていたハングルを普及させたのは日本統治時代の教育だったのだから、ついでにハングルも「日帝の残滓」として追放すべきだった。そうなると韓民族は文字を持たない民族になってしまうのだが。


■6.朴正煕大統領の反日ポーズとしての漢字追放

 漢字排斥をさらに推し進めたのが、韓国中興の祖とされる朴正煕大統領だった。朴大統領は国民の大反対を押し切って、日韓基本条約を締結したが、日本寄りと見られることを避けるために、反日姿勢として、1970年前後に教育カリキュラムから漢字を追放した。

 しかし、これは朴大統領の反日ポーズだったようで、片腕だった総参謀長の李在田が会長となって、「韓国漢字教育推進総連合」が作られ、まずお膝元の軍隊で漢字教育を復活させた。また、学界、言論界からの訴えを入れるという形で、中等教育で漢字教育を復活させた。

 しかし、その後、ハングル派の巻き返しもあって、漢字教育をやったり、やらなかったり、と朝令暮改が続き、漢字教育を受けた世代と受けていない世代が斑(まだら)のようになっている。

 いずれにせよ、漢字・ハングル交じり文は「日帝の残滓」という反日イデオロギーだけで、漢字追放までしてしまうのだから、その激情ぶりは凄まじい。


■7.日本語追放による「純化」

「反日」政策としての漢字追放は、さらに日本語起源の漢字語追放にまで進む。韓国の「国語審議会」の「国語純化文化委員会」が「日本語風生活用語純化集」を作って、700語ほどの「日本語っぽい」単語を韓国語風に「純化」しようとした。日本語は「不純」だというわけである。

 たとえば「売切(メージョル)」は、「みな売れること(ターバルリム)」、「改札口(ケーチャルグ」は「票を見せるところ(ピョ・ポイヌン・ゴッ)」、「踏切(フミキリ)」は「越えるあたり(コンノルモク)」という具合だ。日本語で言えば、漢語を大和言葉で置き換えよう、という事である。

 したがって、「改札口を通って踏切を渡った」を「純化」すると、「票を見せるところを通って、越えるあたりを渡った」となる。

 いくら「反日」を信条とする愛国的韓国人でも、毎日、こんなまだるっこしい会話はしていられないだろう。折りに触れて、こういう「純化」が試みられているが、不毛の努力に終わっているようである。


■8.「漢字・仮名交じり文が、日本人の教養と民度を高めた」

 韓国での「反日」を動機とした漢字廃止、和製漢語廃止を見ていると、「漢字・仮名交じり文が、日本人の教養と民度を高めた」という豊田氏の主張もよく理解できる。

 たとえば、英語で"Cetorogy"という単語があるが、その専門の学者でもなければ、アメリカやイギリスの一般人は知らない単語である。しかし、これを日本語で「鯨類学」というと、中高生以上なら、「鯨に関する学問」だろう、と想像がつく。”Apiculture”も同様だ。普通の米英人にはチンプンカンプンの単語だが、日本語で「養蜂業」と言えば「蜂を飼う仕事」だと推測できる。

 このように、漢字の造語能力をフルに活用して、一般大衆にも近づきやすい形で、近代的な学問、政治、科学技術の体系を構築してきたのが、幕末以降の我が先人たちの努力であった。

 中国や朝鮮は、その日本語を通じて、近代的な学問を学んだ。たとえば、「中華人民共和国憲法」の中で、中国語のオリジナルな単語は「中華」しかない。それ以外の「人民」「共和国」「憲法」は、みな日本語からの借用である。どうりで人民主権も、共和政治も、立憲政治も、いまだに身についていないはずだ。

 朝鮮では、日本統治時代に漢字・ハングル交じり文が普及して、せっかく近代化のステップを踏み出したのに、「日帝の残滓」というイデオロギー的激情で、それを自ら拒否してしまった。

 その千鳥足ぶりと比較すると、我が先人たちの偉大な見識と努力が、改めて見えてくるのである。それを知らずに、電光掲示板でハングルや中国語で表示することが国際化だ、などという浅慮では、ご先祖様が草葉の陰で泣いていよう。

 日本語で正確かつ論理的に、そして礼儀正しく丁寧な読み書きができない日本人がいくら外国語を流暢に話しても、国際社会に通ずる人間にはなれないのである。

(文責:伊勢雅臣)


■リンク■

a. JOG(221) 漢字と格闘した古代日本人
 外来語を自在に取り込める開かれた国際派言語・日本語は漢字との国際的格闘を通じて作られた。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogbd_h13/jog221.html

b. JOG(320) 子どもを伸ばす漢字教育
 幼稚園児たちは喜んで漢字を覚え、知能指数も高まり、情操も豊かになっていった。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogbd_h15/jog320.html

c. JOG(425) 白川静 ~ 世界をリードする漢字研究者
 白川静のような碩学を持つ日本こそが、東洋文化の最終リレー走者としての使命を持つ。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogbd_h17/jog425.html

■参考■(お勧め度、★★★★:必読~★:専門家向け)
  →アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。

1. 豊田有恒『韓国が漢字を復活できない理由』★★★、祥伝社新書、H24
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4396112823/japanontheg01-22/

■本号へのおたより

■将行さんより

 漢字排斥は残念ながら、日本でも進行しているとおもいます。新聞を読んでいて「牽引」を「けん引」などと記載していることに強い違和感を感じるのは私だけでしょうか?

 昔は常用(当用)漢字に指定されていなくても、一般に定着した熟語はすべて漢字表記するのが常識でしたが、今は熟語の一部を常用漢字でないという理由だけでひらがなで書く愚行が進行しています。

 伊勢様の指摘されている「千鳥足」ぶりが日本にも伝染してしまったように思え、嘆かわしく思います。

■伊勢雅臣より

「けん引」では意味も想像できませんね。こういう表記に対する違和感を大事にしたいものです。


■学さんより

 今回のテーマも興味深く読ませていただきました。韓国が漢字を廃止したことが学際分野でも問題になっているという指摘は聞いておりましたが、まさか反日が直接的原因だったとは・・・大変驚きました。

 今回感想を送りたいと思ったのは、伊勢様が空港で経験されたエピソードについて。成田や羽田の国際便ターミナルでこのような経験はありませんでしたが、私が同じ驚きと苛立ちを感じたのは都内の京王電鉄の車内でした。

 仕事のため慣れない京王線に乗った私は、目的地の駅までどのように行くべきか、どの駅で普通電車に乗り換えるべきか迷い、車両内の電光掲示板を見ておりました。しかし中国語やハングル語の表示時間が長く、ちょっと目を離した隙に日本語を見落とすとまた延々と掲示板をにらみ続けなければならない・・・

 沿線に中国人や韓国人が多く住んでいるからなのかも知れませんが、乗客の大多数は日本人だろうし、外国人でもアルファベット表記で十分に対応できるはずです。

 乗客へのサービスというものをはき違えているのではないかと思いました。京王電鉄の社員には是非JOGを読んでいただき、本当の国際化・国際人とはなになのかを考え直してもらいたいと思います。

■伊勢雅臣より

 京王電鉄の社員の方、こういう声をぜひ社内で上げて下さい。

■泉幸男さんより

 10年前になりますが、ソウルで朝のワイドショーを見ていたら農家のおばあちゃんへのインタビュー中継放送がありました。

 おばあちゃんが“タマネギ”という言葉を使った途端、インタビューしていたアナウンサーは焦りにあせって、「ヤンパ、ヤンパ、ヤンパといいますね」と韓国語で言い換え単語を何度も言っていました。

“タマネギ”という日本語起源の単語は、放送禁止用語になっていたのでしょう。言い換えの“ヤンパ”の“ヤン”は漢字の“洋”の韓国語読み。“パ”は韓国固有語でネギのことです。

“フミキリ”、“ノリカエ”、“ベントー”のような単語は同じ流儀で次々に置き換えられ、今の韓国語からは(少なくとも文章語からは)消えています。若い世代は使わないはずです。

 会長、会場、会葬が同じ発音になってしまうというのは同音異義語の分かりやすい例ではありますが、補足すると、韓国語は日本語よりも母音・子音の数が多いので、漢字の音読みの同音字は日本語に比べると少なめです。つまり、漢字熟語の同音異義は日本語よりは少なめです。記者、汽車、帰社は、キジャ、キチャ、クィサという別の発音になります。

 漢字を廃止しても韓国語がなんとかもっているのは、そのせいです。

 また、韓国語は分かち書きをします。貴誌で、文章をひらがなで分かち書きなしで連ねて書いてみせ、「たとえて言えばこれが韓国語だ」というのはフェアでないと思います。

 いずれにせよ、漢字の知識をもった世代が消えつつありますので、韓国語も膨大な漢字熟語起源の単語の言い換えがさらに進んでいくでしょう。

 漢字は日常的に目にしていないととてもマスターできないので、中等教育に漢字を取り入れたとしても韓国・朝鮮に漢字は帰ってこないでしょう。韓国・朝鮮にとって悲劇的な文明喪失でした。それもまた「日本人のせい」というファンタジーを、十年後には聞かされることになるかもしれませんよ。

■伊勢雅臣より

 同音異義語については、韓国語は日本語より母音・子音が多いのですが、日本語では訓読み、重箱読み(じゅうばこ、音+訓)、湯桶読み(ゆとう、訓+音)と自在な読み方で同音異義語を避けています。このあたりの伝統的な智恵は日本らしい所です。
 

効率化や規制改革でデフレは止められるか

■ 不景気の時は財政出動が不可欠 ■

三橋教の方々は、「不景気の時は財政出動が不可欠」と主張します。
これは間違いでは有りません。

景気悪化が予測される状況で、民間は雇用を減らし設備投資も減らします。これが一定水準を超えると経済規模が縮小し「デフレ」が発生します。

通常の景気循環で発生する「デフレ」であれば、生産調整の結果、供給サイドが縮小してデフレは解消されます。政府が何もしなくても、デフレは解消されるのですが、政府が財政出動によって需要サイドを刺激する事で、デフレ脱却の時期は早まります。

上記の点において、財政出動の効果に疑問はありません。

■ 少子高齢化による構造的デフレ ■

現在の日本の長期不況は景気循環の結果では有りません。

確かに切っ掛けは「バブルの崩壊」による民間のバランスシートの悪化でしたが、シームレスに「少子高齢化」による不況に突入している事に多くの人が未だ気づいていません。

「少子高齢化」によって日本は「構造的不況」に突入しています。

1) 旺盛な需要を生み出す若年世代が減少
2) 老人は将来的な不安から消費を控え貯蓄を増やす
3) 老人の貯蓄は銀行を通じて日本国債に再投資される
4) 財政支出の老人福祉の比重は高まっている

ちょっと単純化し過ぎては居ますが、政府と老人の間を資金が行ったり来たりしているだけとも言えます。

民間を経由する事が無いので、これではマネーサプライを拡大する事は不可能で、お金はその本来の使命を果たす事が出来ません。

■ 所得の偏りによる構造的不況 ■

もう一つの構造的不況の原因は「所得再配分の低下」にあると思われます

1) 累進性の低下などで所得の再配分が低下する
2) 所得の低い人達は、徐々に生活レベルが低下する
3) 所得の高い人達は、資産運用などで所得を拡大する
4) 高額所得者の消費量には限界があるので、消費が減衰しデフレ基調になる

■ キャッシュフローを求める金融資本家達 ■

この様に高齢者や高額所得者に生まれたキャッシュフローの一部は、より高い金利を求めて金融市場で運用されます。金融市場は既にボーダレスですから、日本国内の資金は、金利に引かれて国外へ投資される事も多くなります。

社会や消費が成熟した先進国において、国内で高い金利を得る運用は難しいので、資金は金融市場を通して、新興国で運用されます。

■ 新興国の工業生産の発展が先進国の雇用と売上を奪う ■

現在の不況の原因の一つが「ユニクロ型不況」です。

金融市場を通して新興国に投資された資金は、多くの「安い商品」を生み出します。これらが輸入される事により、国内の製造業が衰退し、雇用が失われま。

■ 世界全体で見れば、効率的に資金は運用されている ■

成長が鈍化した先進国の資金が新興国で運用される事で、先進国の国民は運用益を得る事が出来、新興国は産業やインフラを発展させる事が出来ます。

世界規模で見れば、資金は効率的に運用されていますが、先進国の国内だけ見れば、資金は高齢者や富裕層に集中して、キャッシュフローを拡大し続けているだけとも言えます。

■ 公共事業による景気刺激の限界 ■

公共事業は雇用を生み出すので、景気回復の効果は否定できませんが、現在の日本は、公共事業を増やしても景気を下支えする程度の効果しか発揮していません。乗数効果が低いのです。

ただ、乗数効果を無視したとしても、現在の日本においては、民間に供給された資金は国内で有効に使われては居ません。

その理由の一つに、「利益の集中」が挙げられます。

例えば、地方の公共事業で民間に供給された資金の多くは、スーパーなどの買い物で消費されます。現在、日本の小売の大きな割合を占める大手スーパーは全国チェーンですから、消費はこれらの大手企業に集中します。これらの企業の本社は東京にあるので、地方の消費は、地方の景気を刺激する前に、東京に還流してしまいます。

その他、車や家電品なども大手メーカーが利益を独占し、その本社は東京にあります。

これらの大手企業の株主の半分程度が外国人投資家である現在、利益の一部は彼らの手に渡ります、さらに、大手企業は内部保留の一部を金融市場で、効率的に運用します。

■ お金が人から人の手に渡る機会が減っていないか? ■

この様に考えてみると、現在の日本国内において、お金が人から人の手に渡る機会が少なくなっている事に気付きます。

日銀が異次元緩和でマネタリーベースを拡大しても、マネーサプライが拡大しない要因は、お金がその役割を国内で果たす機関の減少があるのでは無いでしょうか?

■ 経済の効率化が不景気を生み出す ■

世界的に見れば、経済のグローバルな効率化は、生産を拡大し、雇用を拡大し、個人の富を拡大し続けています。

一方、日本や先進国の中だけで見ると、経済の過度な高率化は、国内の資金移動の機会を低下させ、景気を悪化させています。

■ 内需の拡大が豊かさを創るとは限らないが、雇用と需要は生み出す ■

「内需は無駄によって生み出され」ます。
人から人にお金が渡る機会が増えれば、内需は拡大します。

農産物が畑から最終消費者の手に渡るまでに、中間業者が介在すればする程、内需は拡大します。一方で、その過程で利益が上乗せされるので、最終的な商品価格は吊り上げあられます。

結局、内需拡大は緩やかなインフレに帰結するので、所得は増えても豊かさの実感には程遠いものがあります。

一方で、内需の拡大は雇用を確実に増やし、結果的に需要を拡大します。

■ 物質的豊かさは外需が生み出す ■

国内経済を内需だけに規定すると、新しく生み出される富は、日本の国内の資源で生産される物しか生み出す事は出来ません。これでは、経済規模は明治時代に後退してしまいます。

日本人が物質的豊かさを享受出来るのは、外需産業が外貨を稼ぎ、その収益で国外からエネルギーや資源、食料を輸入しているからに他なりません。

インフレによる国内生産コストの増加は、外需産業の競争力を低下させます。

■ イノベーションでしか克服出来ない ■

結局、先進国の経済がデフレ基調になる事は、グローバル化の現在には当然の事と言えます。これを克服するのは、世界の人達が欲しがり、決して他国で生産される事の無い商品を開発する以外に方法はありません。

この様なイノベーションは頻繁には起こり得ませんし、日本で発生するかどうかも確率的です。

規制改革に意味があるとすれば、イノベーションの発生確立を高める事にあるのでしょう。
尤も、効率化だけが進行し、デフレを後押しする結果になる場合も想定する必要があります・・・。

 

11月米雇用統計の金融政策への意味

11月の米雇用統計の数字は、金融政策を司る米連邦準備制度理事会(FRB)にとって概ね歓迎される結果だった。これが今後の政策にどう影響するか5つの角度から探った。

 緩和縮小開始が視野:非農業部門雇用者数の増勢が強まっていることが確認されたことは、FRBが月額850億ドル(約8兆7400億円)に上る債券を購入する量的緩和策の縮小への道を開くもので、縮小開始が12月か1月に始まる確率を高めたことを意味する。一部の市場予想を裏切ってFRBが縮小開始を見送った9月と現在の労働市場を比較してみてほしい。ここ3カ月間の雇用増加数は平均して19万3000人となっている。9月時点での同じ数字は14万3000人だった。11月の失業率は7%なのに対し8月は7.3%だった。さらに9月時点では、連邦政府が一部閉鎖に向かい債務上限危機の可能性も出ていたタイミングだった。しかし現在は政治家たちが静かに今後1年の政府支出の抑制計画を策定しているように見受けられるとともに、連邦分の増税と支出削減による逆風が弱まり、来年の経済成長を加速させる可能性が出ている。

 市場は縮小開始が金融引き締めを意味しないと了解:債券の月次購入額の「漸減」を見送った9月と比べ、市場参加者の考え方はよりFRBが好む方向に向いている。とりわけ言えることは、緩和の縮小を始めたからといって短期金利の引き上げを急いでいるわけではないというFRBのメッセージが市場に浸透しつつあることだ。各種先物市場の価格は、2014年末までの金利引き上げを織り込んでいた9月の価格とは対照的に、2015年の前にFRBの金利引き上げが起こる確率が非常に低いとみている数字となっている。ここ数カ月FRBは「漸減は引き締めにあらず」との姿勢を理解してもらう努力を続けてきたが、縮小開始が現実的な検討課題となった現時点で投資家がFRBの考え方を了解していることに安心感を持つとみられる。

 縮小開始のタイミング:FRBは次回17、18日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、債券購入額の漸減をすぐ始めるか、バーナンキ議長の最後のFOMCとなる次々回の1月28、29日会合、あるいはその先まで待つかを議論することになるとみられる。1月まで待てば、FRB当局者が最近強めている経済への楽観的な見方を確認する時間が少しできることになる。加えて債券購入プログラムの出口戦略を確定し市場にその準備をさせる余裕を与えてくれる。今後の政策の全体像とそれをどのように市場に伝えて行くかについて、FRBは市場に答えなければならない疑問をまだ多く抱えている。一部のFRB当局者は債券の総購入額について、無制限のままとすることをせずに、上限を設けることを希望している。また、短期金利を何時上げるかについて市場へ手掛かりを与えるフォワードガイダンスを再び変更するかについても、FRBはここ数カ月内部的に議論している。

 このフォワードガイダンスの問題と関連しているのは、債券購入プログラムで複雑な操作をしているのと並行してこのガイダンスを変えていいのか、またもしそうするならこの同時変更をどう説明するかの議論だ。FRBはまた、民間銀行の準備預金に支払っている0.25%の金利を引き下げるかどうかについても議論している。バーナンキ議長はこれまで政策の大きな措置を取る時は数カ月をかけてコンセンサスを形成する傾向があった。これを踏まえると、今回の政策変更も少し時間を置くかとも読める。経済的にみれば、もう少し待って850億ドルかあるいはそれより少し多くをすでに4兆ドル近く膨らんだFRBのバランスシートに上乗せすることはそう大きな問題ではないだろう。ただ何カ月にもわたり「漸減」の可能性を市場に伝えてきただけに、現在の経済状況と今後の見通しについて十分な確信が出来たとして直ちに縮小開始に踏み切る可能性もある。

 ほっと一息:FRB当局者は現在確実にほっと一息を付いているはずだ。彼らの大半がここ数カ月内で債券購入プログラムを終了させることを希望しているからだ。経済が十分強くなったのでプログラムを終了できる状態になることをずっと望んでいた。雇用数の増加は、経済の強さを主張するのに根拠となり得る数字だ。終了の別の説明の仕方の選択肢としてあるのが、購入を継続するコストが、その利点を上回るようになったというものだ。ただ、FRBはこの説明の仕方をこれまで決してしたがらなかった。その一つの理由は将来的に再開する場合の障害となるからだ。労働市場の改善は、経済が強くなり議論の多かったこのプログラムのが終了の始まりとともに、バーナンキ議長が1月に胸を張って退任するチャンスを与えている。

 全てが朗報ではない:11月の雇用統計は全て良かったというわけではない。もっとも頭が痛いのは失業率だ。この数字の示す傾向を見るには9月と11月の数字を比較するのがよいと思う。というのも10月の数字は政府の一部閉鎖の影響で歪められているからだ。9月から11月にかけ、失業率は7.2%から7.0%へ低下した。これ自体はよい傾向だ。しかしその理由が問題だ。この間に雇用は8万3000人しか増えていないのに対し、労働力人口は66万4000人減少している。失業率減少のおおむねの理由は、職探しを止めたために「失業者」としてカウントされる人が減少したからだ。労働参加率はこの間に63.2%から63.0%へていかしており、長期にわたる失業からヒステリーを起こして職探しを止めたことを改めて示す数字だ。

 これらのことはFRB政策にどんな意味を持つだろうか?それはFRBが失業率低下を喜ぶに足らないとみているということだ。これまで失業率が6.5%を下回らない限り短期金利は引き上げないとFRBは言明してきた。この失業率低下の感心しない原因は、FRBがこの6.5%という目安を下回っても、金利の引き上げを開始するのはその後長い間様子を見てからとの考えに傾いていることを意味する。FRBが失業率にあまり重きを置かなくなっていることはこのところの債券購入プログラムに関する発言にすでに表れている。6月の時点でバーナンキ議長は、FRB当局者らが失業率が7%へ下がればプログラムを終了できる可能性があると発言していた。しかし既に7%になっているのに縮小開始さえ起こっていない。議長は7%目安が間違いだったと明らかに思っている。

By JON HILSENRATH


「長期的停滞」からの脱出策

米国経済は停滞の海をさまよっているのだろうか。少なくともサマーズ元米財務長官はそう考えているようだ。サマーズ氏は先月開かれた国際通貨基金(IMF)の経済フォーラムで、米国の需要や成長力などが低迷している現状を「長期的停滞」と表現した。

「われわれは今後数年にわたって、どのように経済を動かしていくのか十分に考える必要があるだろう。現状ではゼロ金利が経済活動を慢性的かつ体系的に抑制しており、潜在能力を下回るレベルに経済を押しとどめている」と語った。

ただ、この現象は全く新しいものではない。2008年の金融危機以前にもグリーンスパン前FRB議長が続けた低金利政策は、住宅バブルこそ招いたものの、実体経済を回復させることはなかった。サマーズ氏は「大規模バブルでさえも、超過需要を生み出すには十分ではなかった」と批判的だ。

同氏は、こうした金融政策が現在の苦境を解決するための手段として不適切だと指摘。その理由として、完全雇用を達成する「自然利子率」がマイナスである可能性を挙げた。

各国の中央銀行は金利をゼロ以下に引き下げることはほぼできない。なぜならその場合、銀行に預けても利子が付くどころか、逆に「管理費」を引かれることになり、銀行に預金しようとしなくなるからだ。

量的緩和は目的の達成に有効だったかもしれないが、今となっては力不足の政策だ。さらに、量的緩和が繰り返されると市場がそれに依存するようになり、バーナンキFRB議長が緩和縮小(テーパリング)を示唆するたびに混乱することになる。

気を付けなければ日本のようになってしまう──サマーズ氏はこう警告しているように思える。日本は過去20年、成長力の低下が賃金の下落を誘い、それが需要低下を招き、さらに雇用の悪化を呼ぶという負のスパイラルに陥ったが、米国も同じ状況に直面する恐れがあるのだ。

日本の経済はかつて、世界的に見て「初心者レベル」だったが、1960年代には年10%の率で成長。ペースは鈍化したものの、1970年代も成長率は4%台を維持した。ところが、20世紀末までに日本は深刻な事態に陥った。成長には急ブレーキがかかり、資産バブルがはじけた。政府は大規模な公共事業への投資で景気を刺激しようとしたが、こうした政策はうまくいかなかった。

その後、規制緩和を進め、日本企業に根強く残る時代遅れの伝統にメスを入れようと「構造改革」にも着手した。さらに量的緩和も拡大したが、成果を挙げたものは何一つなかったように見える。成長は停滞し、デフレも深く浸透したままだった。インフレにもデメリットはあるが、新たな経済活動を抑制し、成長を阻害し、窮状を広めるデフレはそれよりはるかに悪い。2008年の金融危機は輪をかけて日本の状況を悪化させた。これまで日本の成長を支えてきた輸出は2009年に27%も下落し、抜本的な改革が必要な時期を迎えた。

昨年、日本では安倍晋三首相が「アベノミクス」として知られる先鋭的なプログラムを導入した。日銀は資金供給量(マネタリーベース)をわずか2年で2倍に引き上げる異次元緩和を実施し、円高に歯止めをかけることで輸出の競争力を高めた。金融政策に加え、安倍政権は積極的な財政出動や増税も打ち出した。これは前例のない試みであり、日本はIMFの支援や他国の影響なしで、谷底から脱け出す道を歩き始めた。

安倍首相が示した治療薬を服用してから1年、回復の小さな兆しがわずかに見え始めた。財務省が先月発表した10月貿易統計速報によると、日本の輸出は約3年ぶりの高い伸びとなった。特に、円が対ドルで14%下落したことが大きく寄与した。また、10月の全国消費者物価指数は食品とエネルギーを除いたコアコアCPIが5年ぶりにプラスに転じ、2%の物価目標に向かって歩みを進めている。さらに、生産も上昇基調にある。

ただ、明るい話題だけではない。賃金はなかなか上がらず、設備投資も十分とは言えない。しかし安倍首相は、世界経済が上向けば、日本も利益を得られるだけでなく世界に繁栄をもたらすことができると自信を見せる。ただ、これはあくまでも仮定の話だ。米経済がこのままの状態を続ければ、日本の成長へのスピードも加速させることはできない。

他の国もリーダーとしての米国の復活を切望している。人員整理や債務削減など、自分たちのことで手一杯の欧州は、米国が欧州を低迷から引き上げてくれるのを心待ちにしている。

サマーズ氏が先月警告したように、米国はもはや景気刺激策を実行できる立場にはない。経済に関する独善的な誤解や、政府による介入は無駄な行為だとする思い込みを持つ一部の議員らに妨げられ、オバマ政権は経済を加速させることができないでいる。自動的な予算の強制削減によって、成長を促進する対策が必要な時に借金の返済に追われている状態だ。

一部の議員らは、選んでくれた国民にどれだけ損害が出ようと、自分たちの目指す「小さな政府」の達成を望んでいる。だが、自らの利益を賢明に追求することが、知らず知らず自らを傷つけることもある。政府の関与を縮小すれば、米国は日本のようになりかねず、米国民は何十年にもわたって低成長にあえぐ可能性がある。

「虎穴に入らずんば、虎子を得ず」という日本のことわざがある。危険を冒さなければ、大きな成果は挙げられないという意味だ。安倍首相は日本経済の低迷に終止符を打つため、勇気ある第一歩を踏み出した。米議会では共和党の少数派が鍵を握る状態にあるが、これが続く限り、われわれは日本が犯した過ちを繰り返すだけではなく、世界中を泥沼に引きずりこむことにもなる。

By Nicholas Wapshott


FRBは緩和縮小に着手すべき

半年前、米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は米国の失業率が「7%近辺となった時点」で、資産買い入れ策を打ち切るだろうと発言した。労働省が6日発表した11月の失業率は7%に低下したが、FRBは月間850億ドルに上る量的緩和措置の縮小すら開始していない。だが、ついに開始すべき時が到来したのではないだろうか。

11月の雇用統計は1980年代や90年代頃ほど輝かしいものではなかったが、この1年で最も強い数字を示した。非農業部門就労者は前月比20万3000人増加し、そのうち7000人を除けばすべて民間セクターの雇用増だ。7%という失業率は2008年以降で最低水準だ。

最も心強いのは、ほとんど全ての数字が力強さを示していることだ。労働参加率は62.8%から63%に高まった。依然としてこの35年間の最低水準に近いとはいえ、数百万人規模で労働市場から人々が姿を消していったリセッション(景気後退)後の傾向が小さくとも反転を見せていることは心強い材料だ。

 就労時間も長くなり、それに伴って賃金も1時間当たり24.15ドルと、前月比で4セント、前年比では48セントの伸びを示した。1時間24ドルの賃金は、7.25ドルの最低賃金をかなり上回る水準にある。11月はほとんど全ての主要産業が以前よりも多くの労働者を雇用した。ヘルスケア、製造、輸送、建築、ビジネスサービス、小売りなど、大半のセクターが雇用を拡大した。

 1つの明確な結論は、政府機関の一部閉鎖は経済全体にほとんど悪影響を与えなかったことだ。さらに言えば、ケインズ派のエコノミストたちが恐れたほど、政府の歳出制限による影響もほとんどなかった。今年の雇用拡大は2012年と似ている。連邦予算の上限問題にも関わらずだ。

 経済活動の妨げとなった真の要因は増税であり、これが投資を冷やしてきたように見える。第3四半期の国内総生産(GDP)改定値が3.6%に上方修正されたのは、在庫の積み増しが主因だ。全体的な企業投資は、好調な企業利益にも関わらず伸び悩んだ。

 11月の雇用統計はまた、失業給付の拡大に共和党がしっかり歯止めをかけるべきであることを示した。民主党とホワイトハウスは給付金の拡大を予算編成に盛り込みたい意向だ。それは赤字を250億ドル拡大させる要因となる。

 その根底にある驚くべき経済的根拠は、1ドル失業手当を給付すれば、GDPを1.80ドル押し上げるというものだ。これは有名なケインズ派の「乗数理論」で、2008年や09年の景気刺激策ではうまくいかなかった。基本的な主張はこうだ。仮に政府が仕事をしない人にもっと給付金を出せば、結果的により多くの人が仕事をすることになる、と。これが信じられるのであれば、オバマケアが債務を縮小させるという説もおそらく信じられるだろう。

 FRBに話を戻そう。バーナンキ議長は9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で6月に言及していた金融緩和縮小を見送った。株式・債券市場が動揺したためだ。金融緩和縮小の見送りで、FRBの信頼は揺らいだ。バーナンキ議長はこれまでのどの前任者よりも金融政策の「フォワードガイダンス(先行きの手がかり)」を強調していたからだ。

 だが、6月に提示した失業率7%という目標が達成された今、FRBが何もしなければ「ガイダンス」にどんな意味があるのだろうか。バーナンキ議長は6月に、7%の目標は2014年のいずれかの時期に達成可能だと予測しており、予測よりも早く達成できたことは、金融緩和の縮小を開始すべきより強い根拠となろう。

 FRBは物価動向も注視する必要があり、インフレ率はまだ目標に達していないと考えているのかもしれない。だから、あと数カ月間は850億ドルの資産買い入れを続け、大事を取るに越したことはないと考えたのではないか。

 だが正解は、FRBが通常の金融政策に戻るのが早ければ早いほど、政策の信頼性と実体経済にとって好ましいということだ。FRBは政策目標を二転三転させることで先行き不透明感を増大させてきた。その結果、リスクを厭わない企業の活動や雇用が損なわれた。 

 FRBによる債券買い入れの終了は民間セクターへの資本配分により良く寄与することになるかもしれない。FRBによる住宅(つまり、住宅ローン担保証券の購入)と政府(債券)、既存企業(株価目標)への肩入れが終了するからだ。

 エコノミストのデービッド・マルパス氏などが指摘したように、FRBの資産買い入れ策は資本を政府と大手企業へ振り分けてきた。これは、中小企業にとっては資本が少なくなることを意味し、今回の回復を通して際立った弱点の1つは、中小企業の創設と雇用だった。より持続的な拡大と幅広い繁栄のためには、より多くの新規ビジネスが生まれる必要がある。

 12月はFRBが事実上のゼロ金利や他の異例な金融政策を始めてからちょうど5年目に当たる。そういった政策は、当時は必要だった。しかし、平均で月間19万人の雇用が創出されている現在の経済は危機にあるとは言えない。バーナンキ議長は今やレームダックとなった。影響力は間もなく次期議長に就任するジャネット・イエレン氏に流れつつある。だが、任期満了を迎える来年1月前に、FRBの姿勢を通常の金融政策に向けた方向へ戻せば、後任者のために役立つことになろう。

 

1. 過去は過去
  あなたの過去と“平和協定”を結びなさい。 そうすれば、過去が現在をかき乱すことはない。 

2. 他人は他人
  他人があなたをどう思うか、気にしないこと。

3. 時は妙薬
  “時”はほとんど全てのものを癒やす。時を待ちなさい。 

4. 比較は禁物
  自分の人生を、他人と比べないこと。そして彼らを批判しないこと。彼らの旅がどんなものか、あなたは知るわけがない。

5. 考えすぎはご法度
  あまり考えすぎないこと。答えを知らなくてもいい。 それは、あなたが期待しないときに、来るものだ。 

6. 幸せは自分の手で
  あなたが幸せになることに、 “責任者”は誰もいない。あなた以外には。 

7. 笑う門には
  ほほ笑んで。あなたは世の中のトラブルを、独りでしょい込んでるわけじゃない。 

    131207

隣に誰かがいるだけで、「憂い」は「優しさ」に変わります。

憂いを持っている人には、そばに人(にんべん)がいてあげることが何よりの優しさだと思います。


難題の無い人生は「無難」な人生。
難題の有る人生は、「有難い」人生。

「会社に入って42年、難題続きで心が休まる暇がなかったなあ」
と話す男性に、得意の漢字新解釈(笑)で慰労させていただきました。

でも、本当にそう思いませんか?


「涙」を止めれば、また笑顔に「戻」れます。

「泣く」のを止めれば「立ち」あがって前に進めます。

「涙」と「泣」の2つの文字の、さんずいの部分を取り除けばよいのです、とアドバイスしました。


失うことで人は大きくなる。

任された大きなプロジェクトを、些細なミスによってフイにしてしまったというのです。

そんな男性のために、「失う」という言葉には「人」と「大」という文字が隠されている、と。


大切なのは、どれだけたくさんのことをしたかではなく、どれだけ心を込めたか。

「一意専心」

尊敬するマザー・テレサの言葉です。

お客様にこうして名言をいただくことも多いのが、筆談ホステスの醍醐味です。

出典元:(筆談ホステス67の愛言葉 光文社)

一、高いようで 低いのが 教養

二、低いようで 高いのが 気位

三、深いようで 浅いのが 知識

四、浅いようで 深いのが 欲皮(欲望)

五、有るようで 無いのが 反省

六、無いようで 有るのが 七癖

七、多いようで 少ないのが 分別

八、少ないようで 多いのが 無駄

九、厚いようで 薄いのが 人情

十、薄いようで 厚いのが 面皮

十一、強いようで 弱いのが 根性

十二、弱いようで 強いのが 自我(意地)

十三、大きいようで 小さいのが 肝魂

十四、小さいようで 大きいのが 態度

十五、太いようで 細いのが 上下の信頼

十六、細いようで 太いのが 赤い絆

十七、重いようで 軽いのが 人命

十八、軽いようで 重いのが 腰・尻

十九、新しいようで 旧いのが 自分の考え方

二十、旧いようで 新しいのが 毎日の生活

二十一、長いようで 短いのが 過去の月日

二十二、短いようで 長いのが 悩みの時間

二十三、速いようで 遅いのが 自分の歩み

二十四、遅いようで 速いのが 自分の一生

二十五、柔らかいようで 硬いのが 自分の脳みそ

二十六、硬いようで 柔らかいのが 意思・決意

二十七、温かいようで 冷たいのが 世間の目

二十八、冷たいようで 温かいのが 他人の真心

二十九、明るいようで 暗いのが 地球の未来

三十、暗いようで 明るいのが 明日への希望

番外、まだ来ないと思っていても其のうち必ず来るのが死 

(笑福亭円笑)

【過去は過去】 
あなたの過去と“平和協定”を結びなさい。 
そうすれば、過去が現在をかき乱すことはない。 

【他人は他人】 
他人があなたをどう思うか、気にしないこと。 

【時は妙薬】 
“時”はほとんど全てのものを癒やす。 
時を待ちなさい。 

【比較は禁物】 
自分の人生を、他人と比べないこと。 
そして彼らを批判しないこと。 
彼らの旅がどんなものか、あなたは知るわけがない。 

【考えすぎはご法度】 
あまり考えすぎないこと。答えを知らなくてもいい。 
それは、あなたが期待しないときに、来るものだ。 
【幸せは自分の手で】 
あなたが幸せになることに、“責任者”は誰もいない。 
あなた以外には。 

【笑う門には】 
ほほ笑んで。 
あなたは世の中のトラブルを、
独りでしょい込んでるわけじゃない。

サマーズ氏の長期停滞論でよみがえる資本移動の逆説

 サマーズ元米財務長官は、先進国経済が長期的な停滞に陥ったとの見解を示した。正しいとすればぞっとする見通しだ。この指摘は古くて未解決の謎をよみがえらせることにもなった。世界の資本はなぜ、それが最も必要とされる場所に向かおうとしないのか──。
サマーズ氏は最近の講演で、先進国が完全雇用を達成する実質「自然」利子率がマイナスの値になった可能性があると論じた。実際の金利はインフレ率が大幅に上昇しない限りそこまで低下できないのだから、この主張は次のように言い換えることもできる。先進国は十分な投資を行っていない、あるいは、世界の貯蓄は先進国に投入され過ぎていると。最初は消費者が、次いで政府が借り入れを大幅に増やした中で低金利が続いた10年間が指し示すのは、世界的な貯蓄過剰だ。

先進国はなぜ、貯蓄過剰に浸っていないで一部の余剰資金を新興国市場に輸出しないのか。新興国なら投資を増やすことによって資金を易々と吸収できるというのに。これはノーベル経済学賞を受賞したロバート・ルーカス氏が1990年に指摘した逆説だ。以来、謎は深まる一方だ。

新興国側は問題解決に手を貸すどころか、米国債ほかの先進国金融資産を購入することによって問題を広げてきた。つまり資本を輸入すべき時に輸出したのだ。確かにそうした資金の一部は外国直接投資や銀行融資、債券・株式投資の形で彼らの元に戻っている。しかし差し引きで見れば、新興国は資本を輸出する側だ。

1995年から2005年にかけて、世界で最も成長著しい東アジアの国々は機械、工場、設備のストックを増やした。18億人の人口に対し、インフレと通貨購買力調整後の実質ベースで1人当たり2700ドルのストックを積み増した計算になる。東アジアはこの資本蓄積を海外からの借り入れで補うのではなく、西側諸国に1人当たり平均300ドルを輸出した。

東アジアは特別なケースではない。さらに貧しい南アジアやサハラ以南のアフリカの国々でさえ、資本を輸出した。対照的に、経済協力開発機構(OECD)は1人当たり600ドルの貯蓄を世界中から吸い上げた。これは不思議だ。なぜならこれら先進国の1人当たり実質資本ストックは中国の16倍、インドの50倍にも達するのだから。

この逆説を解明することは、手作業の様相を呈する。一つ考えられるのは、新興国のリスク調整後の資本収益率が見かけほど高くない可能性だ。多くの発展途上国では生産性伸び率が低く、これが資本流入を阻んでいるのかもしれない。あるいは、非効率な金融システムと弱い財産権が理由で、これらの国々は資本を輸出した方が恩恵が大きいのかもしれない。繁栄へとつながる、より安全な道というわけだ。

しかし理由がどうあれ、貧しい国々から豊かな国々への不自然な資本の流れは通常、新興国にとって問題だと見なされてきた。彼らは現物資本をより速く蓄積することさえできれば、より速く豊かになり、他の国々も一緒に引き上げられる可能性があるのだから。

しかしサマーズ氏の陰鬱な仮説は、高いところへと向かう資本の流れが先進国側により大きな問題をもたらすことを示している。バランスシートに余剰資金を抱える企業よろしく、先進国は自由にできる余剰資本を持ちながら十分な使い道を持たない。もっと新興国につぎ込むべきだ。投資を増やせば貧しい国々を助けられるばかりでなく、先進国世界にも恩恵をもたらす。つまるところ、先進8か国が世界の機械設備の80%を生産しているのだ。

しかし発展途上国が、先進国の気まぐれな投資資金に頼ることを警戒するのも無理はない。実際、多くの国々に外貨準備蓄積の必要性を痛感させたのは、1998年のアジア金融危機だった。投資ブームのさなかに資本アクセスが断ち切られることはないと発展途上国に納得させるためには、新たな世界的金融秩序を構築する必要があるのかもしれない。

1つの選択肢は、国際通貨基金(IMF)の役割を見直し、民間資本投資の保証役を果たさせることだ。しかしそのためには、世界の大国が金融資源をプールする必要がある。サマーズ氏が警告する停滞が世界的不況へと発展するとすれば、こうした政治的意思の盛り上がりが欠けている可能性がある。

<背景となるニュース>

●サマーズ元米財務長官は11月8日、IMFの会議で講演し、金融危機後5年間の先進国経済が回復の勢いを欠いている1つの理由として、「過去10年間のある時点で、完全雇用と整合的な短期実質金利がマイナス2%ないしマイナス3%に低下し」、先進国は名目金利がゼロであっても生産能力をフル稼働しにくくなった可能性があると指摘した。「長期的停滞、という表現の下で展開されてきた一連の古い考え方は、日本の1990年代の経験を理解する上で深い意味を持たず、米国の今日の経験にも関連がないのではないか」とサマーズ氏は述べた。


Andy Mukherjee

「最後の買い手」米国が見捨てた世界経済、緩和縮小が追い打ちか

金融危機とそれが引き起こした世界的リセッション(景気後退)の前には、エコノミストらは米国を「最後の買い手」と呼んだものだ。
米国が健全なペースで成長している限り、米国民が物を買い、中国 やその他の国でつくられる製品への需要が生まれる。これで世界経済は回ってきた。
 
これからはそうはいかないかもしれない。
ブルームバーグ・マーケッツ誌1月号が報じている。米経済の回復はかつてほど、世界の成長に寄与しない。
米経済に対する国内の生産の貢献度は10年前に比べて高まっている。
 
1999年以降で最小に縮小した米経常赤字がこのトレンドを如実に示している。国内での石油、ガス資源の発見もこれに拍車を掛ける。エネルギーの輸入依存が低下し安価な燃料が手に入ることで製造業が有利になり、米国を新興市場国にとってモノの買い手よりむしろ競争相手にする。
 
モルガン・スタンレーの新興市場担当エコノミスト、マノジ・プラダン氏は「世界の状況は徐々に、限られたパイの奪い合いとなりつつある」と話す。「米国の成長が周りの誰もに恩恵をもたらした危機前のモデルに戻るようすは見られない」という。

バンク・オブ・アメリカ(BOA)メリルリンチのシニア国際エコノミスト、グスタボ・ライス氏によれば、米国の成長率1ポイント上昇は世界の成長率を0.4ポイント押し上げてきた。今はこの度合いが0.3ポイントに向かって低下しつつあると同氏は試算している。
 
「強い米経済は世界経済の健全な成長見込みを形作る重要な要素ではあるが、米経済の世界への影響力は今までほどではないだろう」と同氏は述べた。
 
ブルームバーグ・ニュースがまとめたエコノミスト予想では米経済の来年の成長率は2.6%、2015年は3%の見込み。13年の見積もり1.7%から加速する見通しだ。
米国の成長加速が世界の他の国・地域の成長につながらないとすれば、投資家はドルと先進国の株式を選好し、新興市場の通貨と資産を敬遠するだろう。
 
これが13年に起こったことだ。例えば、南アフリカ・ランドは今年11月27日まででドルに対して17%、ブラジル・レアルは11%下落した。米国株の指標であるS&P500種 株価指数の同日までのリターンは29%、MSCI新興市場株指数 は2.2%のマイナスだ。

米経済が強さを増す一方で中国、インド、ブラジルなどが弱くなるのは08年以来のトレンドの反転だ。信用逼迫(ひっぱく)とリーマン・ブラザーズ・ホールディングスの破綻後の世界的な景気後退の間、新興市場は米国と欧州よりも好景気に恵まれた。
 
しかし、国際通貨基金(IMF)は10月の時点で新興市場の今年の成長率を4.5%と見積もり、7月時点の5%成長予想から引き下げた。4.5%は09年以来の低成長となる。
 
新興市場の苦境に追い打ちをかけるのが、米経済回復のありがたくない副産物、つまり来年に予想される米国の金融緩和縮小だ。
その第一歩は、現在850億ドル(約8兆7000億円)の月当たり資産購入額の減額となる見込み。市場金利を低く抑えるのに役立ってきた資産購入の縮小は3月に始まる公算が大きい。

11月初旬にブルームバーグが実施したエコノミスト調査が示している。米国の緩和縮小は新興市場から資本を流出させ借り入れコストを押し上げるだろう。
 
インド準備銀行(中央銀行)のラジャン総裁は10月にワシントンで開かれたIMFの総会で、「もちろん心配している。誰もが世界を襲う嵐のことを心配している」と語った。
特定の国を選ぶよりも新興市場全体に投資する戦略が、ここ10年は成功してきた。今後は差別化が必要だろうと、元シカゴ大学教授の同総裁は言う。
 
マーケットフィールド・アセット・マネジメント(ニューヨーク)のマイケル・ショール会長は、一部の新興市場国は今後数カ月に、一段の資本逃避に見舞われるだろうと予想する。
同会長は投資家が良い国と悪い国を区別し始めているとして、「新興市場の下げ相場が底を打ったとは思わない」と述べた。約170億ドルを運用するマーケットフィールドはブラジルやインドの株と債券の下落を予想しているという。


賞味期間が過ぎたグローバル・アウトソーシング

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