米自動車業界の「地図」を書き換えようとするグーグル

車載情報システムを構築するというレースで、米グーグルは「素晴らしい地図がある」という単純な理由から、優勝のチェッカーフラッグが約束されているかもしれない。

 先週開かれた国際コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)で、ゼネラル・モーターズ(GM)を含む自動車メーカー数社はグーグルと「オープン・オートモーティブ・アライアンス(OAA)」を設立した。これは、グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」を車内で使うアプリケーション(応用ソフト、アプリ)の共通プラットフォームとして確立させる計画だ。

 これにより、グーグルとアップルとの戦い、そしてグーグルとマイクロソフトとの戦いに新たな領域が開かれる。アップルは昨年、同社製端末を車のダッシュボードのコントロールパネルに組み入れる計画を発表したし、マイクロソフトはフォード・モーターとともに音声認識とタッチスクリーンの車載技術を開発した。

 ライバルの初動が早かっただけに、グーグルは出遅れたと思われかねない状況だ。しかし、アンドロイドのオープンな性質には明らかな魅力がある。企業がアンドロイドをカスタマイズできるため、グーグルのライバルでさえも利用を決めている。例えば、オンライン小売り大手アマゾン・ドット・コムは、電子書籍端末「キンドル」向けにアンドロイドを微調整している。自動車の開発には長い時間がかかるだけに、これらは重要な考慮事項だ。


さらに重要なのは、グーグルの地図に関するノウハウかもしれない。同社は、カメラを乗せた車を世界中に派遣してストリートビューの機能を開発してきており、他社の追随を許さないほど正確無比で最新の地図を作ってきた。それは、アップルが2012年、グーグルの地図アプリに代わって独自のアプリを導入した際にお粗末だと批判を受け、謝罪しなければならなかったことからも分かる。

 アンドロイドないしアップルのiOSを搭載した端末でのグーグルの地図アプリの人気は、ネットワーク効果を生み出している。グーグルマップを使う人が増えれば増えるほど、グーグルが入手する交通量などに関する情報は増え、製品の魅力も増していく。グーグルが昨年、リアルタイムの交通情報アプリ「ウェイズ」を買収した理由もこのようなものだった。

 そして、グーグルが地図作成に関心を寄せる大きな理由の1つが、自動走行車の開発計画にあることを忘れてはならない。「クラッシュ(衝突)」という言葉の持つ意味は、車とスマートフォンで全く異なる。潜在的なエラーを最小限にすることは、規制と製品の信頼性という2つの観点から絶対条件であり、そのため自動走行車にはきめ細やかで正確な地図が欠かせない。

 CESで多くの企業が自動走行ないし半自動走行技術を披露したし、今週デトロイトで開かれる北米国際自動車ショーでもそのような発表がある可能性が高い。そうした動きをみれば、市販の自動走行車が米国の道路を走る日は急速に夢から現実に近づいているように見える。モルガン・スタンレーは最近のリポートで、「米国のドライバーは年間750億時間を運転に費やしている」とし、「それだけに自動走行車は、大半の人々が高く評価する以上に、はるかに大きな影響を社会全体にもたらす見通しだ」と述べている。

 グーグルの自動走行車開発計画は、そのコンセプトが自動車業界内で真剣に検討されている大きな理由の1つだ。同社が現在アンドロイドをスマホメーカーに提供しているように、技術を自動車メーカーにライセンス供与することは想像に難くない。

 自動車メーカーは少なくともグーグルの地図技術を自社のプログラムに利用したいと考えるかもしれない。しかし、グーグルはそれ以外にももっと幅広い商品を提供している。それだけに、メーカーはグーグルと長期的に緊密な関係を構築することが得策だと考えるかもしれない。

 これら全てのことがグーグルをアップルなどの企業よりも優位に立たせている。それは、自動走行の時代が近づき、デトロイトの自動車大手とドライバーが「地図なし」の領域、つまり未知の領域に踏み込もうとしているためだ。