輝きを失うグーグル、フェイスブック

このところ先進的なネット企業の業績に変調の兆しが出てきている。ネット広告を主な収益源とする企業にその傾向が顕著である。

短文投稿サイトの米ツイッターが4月28日に発表した2015年第1四半期の決算は、売上高が4億3590万ドル(約523億円)となり、前四半期を10%も下回った。閲覧数の伸びが急低下していると考えられ、同社の成長に陰りが出てきたとみる市場関係者は少なくない。

 業績の変調はツイッターだけにとどまらない。グーグルやフェイスブックなど、広告を主な収益源とするネット企業の決算は総じて冴えない。これらの企業は全世界規模で利用者を抱えており、各社の業績推移は、グローバルなネット利用状況の代理変数と捉えることができる。スマホの普及によるネット人口の拡大と、それに伴う広告収入の伸びを前提とした従来の成長モデルは曲がり角を迎えつつある。

 各社は研究開発を加速させ、次のイノベーションを模索しているが、今のところ具体的な成果には結びついていない。今後も急成長を維持できるのか、それとも「普通」の会社になってしまうのか、ネット企業は重大な岐路に立たされていると言えそうだ。
グーグルやフェイスブックなど、広告依存型のネット企業は、程度の差こそあれ、収益の伸び悩みに直面しているのだ。
 
ネットビジネスの覇者である米グーグルは、表面上は順調な成長を維持しているように見える。第1四半期の売上高は前年同月比12%増、純利益は同4%増であった。だが、前期比で比較すると、売上高の伸びが鈍化しているほか、研究開発費を中心にコストの増加が目立つ。同社の成長が踊り場に差し掛かっていると指摘する専門家は多い。

こうした傾向は、同社の収益源である広告の単価やクリック数の推移からも伺い知ることができる。

 同社は、非常に高度な技術を持ったテクノロジー企業だが、収益モデルそのものは非常に単純だ。同社の収益源のほとんどは、検索エンジンに連動する広告となっており、広告のクリック数とクリック単価の積でおおよその売上高が決まる。

 これまで、インターネット広告市場では、スマホシフトによって広告単価が下落するという問題が発生していた。クリック単価の下落は、同社の売上高を減らす要因となるが、一方で、ネット利用者の裾野が広がることによって、市場の拡大も進んでいた。スマホシフトによる単価の減少を規模がカバーしていたのだ。

 ところが、昨年あたりからこの傾向に変化が見られるようになってきた。クリック単価の下落には歯止めがかかったものの、クリック数の伸びが鈍化するようになってきたのである。

直近のクリック数は、前年同期比で13%の増加となっているが、前期比では1%のマイナスだった。クリック数の減少自体は初めてのことではないが、同社がかつてのような高成長を維持できなくなっているのは確かだ。

ではこのような現状に対して、グーグルはどう対応しようとしているのだろうか。短期的なものとしては、スマホからの収益拡大策がある。同社は4月21日、ウェブサイトがスマホ対応になっているのかどうかを検索エンジンの評価基準に追加すると発表した。ウェブサイトがスマホ対応になっていない場合には、検索結果の順位が下がる可能性が出てきたことから、EC関連事業者やウェブサイトの運営者は戦々恐々としているという。

 スマホシフトによる市場拡大に限界が見えてきたとはいえ、今後も利用者数の増加が見込めるのはスマホしかない。ウェブサイトのスマホ対応化を強く促すことによって、ネットの広告閲覧を増やそうというのは、自然な流れといってよいだろう。

 当然のことではあるが、これは目先の対応でしかない。ネット市場全体が成熟化しつつある中、ネット利用を飛躍的に伸ばすためには、次のイノベーションが必要となってくる。グーグルは、中長期的には、新しいテクノロジーの導入によって、この問題を解決しようとしている。具体的には、人工知能やロボットを活用したサービスである。

 人工知能を用いたクルマの自動運転が日常的になれば、クルマを運転している時間をすべてネット利用に誘導することができる。またロボットが機械とのインタフェースを担うようになれば、人間が操作するよりも先に、ロボットが利用者の状況を察知して、情報のダウンロードや購買を行うようになるだろう。ターゲット化もより詳細に実施できるので、広告収入の大幅な伸びが期待できる。

一連のネット企業における成長の足踏みと研究開発費の増加は、おそらく偶然ではない。ネットビジネス全体の構造的な変化に大きく関係している可能性が高い。

インターネットが本格的に普及してからすでに15年以上の歳月が経過している。PCからスマホやタブレットといった具合に、利用するデバイスは変化しているものの、ウェブサイトの閲覧を促すことによって広告収入を得るという基本的なビジネスモデルは変わっていない。

 だが、多くの人がネットインフラを手にした今、従来のやり方に依存していては、劇的な市場の拡大を望むことは難しい。ネット利用のあり方を根本的に変革するようなサービスが登場しない限り、急成長を前提としたネット企業群は「普通の会社」に成り下がってしまうだろう。

 この業界は「次」の時代に向けた移行期に突入しつつあるわけだが、カギを握るのは人工知能やロボットの技術であることはほぼ間違いない。これらの技術をうまく自社のサービスに取り込むことができた企業が、次の時代の覇者となるはずだ。

 今のところ、グーグルは次世代市場への対応においてもっとも有利に見えるが、何が起こるか分からないのがIT業界である。これまで大型コンピュータのパソコンシフトやインターネットの登場など、新しいテクノロジーが登場するたびに主要なプレイヤーも大きく入れ替わってきた。10年後には思いもしない結果が待ち受けているかもしれない。