若き日に、
戦略思考の鍛え方について学びました。


  戦略思考を鍛えたいならば、
  その戦略的状況を瞬間的に視点を移し
  反対側から見る訓練をするとよい。

  将棋盤に喩えて言えば、
  その将棋盤を180度回し、
  相手の立場から盤面を見る訓練をするとよい。


この先達の教えに従い、
それからの永い年月、戦略思考の修練をしてきました。

そして、瞬間的な視点の転換を
大切な心構えとして実践し、道を歩んできました。

その結果、視点の転換という戦略思考の要諦は、
身体的な智恵として身につけることができましたが、
一つ、不思議なことが起こりました。


  相手の立場に立って、
  その戦略思考を読む。


その修練をしていると、副産物のごとく
自然に身についた力があったのです。


  相手の立場に立って、
  その心境を思いやる。


そして、その力を身につけたとき、
戦略思考の本当の意味が、見えてきたのです。


  「戦略」と書いて、
  「戦いを略(はぶく)」と読む。



田坂広志