・「『フリー』などの潮流を見通してきた著者による新・ウェブ進化論」……
                       大前研一氏(ビジネス・ブレークスルー大学学長)
・「激変するウェブとテクノロジーが向かう先は? 本書にその答えがある」……
                       伊藤穰一氏(マサチューセッツ工科大学メディアラボ所長) 

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瞬く間に普及したスマートフォン、SFの世界からやってきたかのようなグーグルグラス、製造業の在り方を一変させる3Dプリンタまで、テクノロジーとそれをつなぎ合わせるインターネットなくしてもう、人間の生活を語ることはできない。
かつて一部の人だけのものだったウェブはいまや現実世界を塗り替え、社会のルールすら変えようとしている。 

しかも、その変化はあまりに急だ。産業革命以上ともいわれるインパクトのなか、私たちはいま何を経験しているのか。
そもそも一世を風靡した「ウェブ2.0」からウェブはどう変貌し、どこに向かおうとしているか。
インターネット黎明期からネットの進化と歩をともにした著者が本書で示すのは、ウェブ2.0以降の座標軸とこれからの羅針盤である。 

著者いわく、いまや「社会がウェブをコピーする」時代になった。
つまりウェブで起こっている潮流を理解すれば、現実世界の未来が見通せる。
グーグルに代表されるアルゴリズムが世の中を支配するかと思いきや、いま私たちが過ごしているのはソーシャルメディアによって人間と人間とが接続された「人間中心主義」の世紀なのだ。 

時間と空間を超えてつながる新しい人間関係のもとで、ハイパー資本主義以前にみられた贈与経済を彷彿させる「シェアリング・サービス」が勃興している。
さらに「社会がウェブをコピーする」なかで、絶対に安泰と思われていた事業が思いもよらない競合に浸食され、組織づくり、イノベーションの作法、教育までもが根本から変化している。 

はたして「昨日の常識が通じない時代」に私たちが身につけるべき「視座」とは何か。
人間はウェブの力を味方にできるのか……。
フェイスブックの歴史的意味からウェアラブルコンピュータによるパラダイムシフト、日本企業が行き詰ったほんとうの理由、そうした混沌の先にある未来までをも一つの線上で論じきった、渾身の一作。 



・インターネット黎明期に創刊した『ワイアード』日本版
・情報の影響力は「露出量」から「強弱」へ
・ソーシャルグラフを外部に公開したフェイスブック
・グーグルが無料で利便性を提供する理由
・「エアビーアンドビー」はライフスタイルのシェア
・会社という形態は「20世紀の遺物」なのか
・日本企業にはびこる「上司説得型マーケティング」
・企業が「メディア化」するのは当然の流れ
・サイエンティストとロマンティストでタッグを組もう
・SFの世界を想起させるグーグルグラス
・3Dプリンタを活用するアメリカ、立ち遅れる日本
・「ムーク」が問う新たな教育の在り方とは
・グーグルの善は私たちの悪か?


常識の通じない時代を生き抜く7つの視座

・リアル社会にこそ「ウェブ的思考」を持ち込もう 

 ☆失敗をしよう。失敗を許そう
 ☆新しい希少を探せ
 ☆違うもの同士をくっつけろ
 ☆検索できないものをみつけよう
 ☆すてきに周りのひとの力を借りよう
 ☆アイデアはバージョンアップさせよう
 ☆ウェブのリアリティを獲得しよう
 


<書評>
◇巨視的な視野を得るための一冊 2014/3/24   By 田嶋 淳

インターネットの普及から約20年、Googleの誕生から10年以上。
ウェブはもはや完全に世界を覆い尽くし、私たちのありとあらゆる活動に欠かすことのできない「インフラ」となった。
しかもまだ一向に留まることのない進化を続けている。

本書は、ウェブがこの20年で私たちの社会にもたらした変化を大きく俯瞰し、またこれから遠くない未来に起きてくるであろう変化を「社会はウェブをコピーする」というキーワードのもとに予見した本だ。

従来のコンテンツ産業と同様に、プロの手で作られたコンテンツを皆で消費していた時代から、消費者と制作者がシームレスに入り交じり始めた「ウェブ2.0」の時代へ。
そして情報の選別に人間力を活用するFaceBookを初めとしたSNSが巨人Googleの対抗軸として立ち上がり、群雄割拠の様相を呈し始めた現在に至るまでを、その底に流れる大きな流れを踏まえながら的確に解説している。

さすがに小林弘人氏と言うべきか、個々の技術や事象の紹介や説明に留まらず、それがどういった文脈に紐付いているのか、将来どういったことに結び付きそうなのかについても言及しており、なかなかに参考になる。

この本に掲載されている情報の多くは、「シェア ~ <共有>からビジネスを生みだす新戦略~」や、「パブリック ~開かれたネットの価値を最大化せよ~」などと重複する部分も多いのだが、全体を俯瞰し、巨視的な視野を得る意味で読んでおく価値のある一冊だ。

個人的にとても心に残った言葉は、「ほんとうに大切なことはネットには載っていない」という一節。
これはまさにその通りで、実際に足を運び、多くの人と交わることは本当に大事だと思う。
ただ、「入り口を探すためのツール」としては、ネットがこれ以上ないほど強力な道具であることもまた十分に認識しておくべきだろうと思う。