o0188027313699939177102歳を生きた偉大なルネサンス人の食生活

著者のコルナロは16世紀のヨーロッパでは、レオナルド・ダヴィンチやミケランジェロよりも有名な人物として、よく知られていました。
 
彼は、当時としては異例の長寿(102歳)を全うしたばかりでなく、亡くなる直前まで体力・知力ともにきわめて快調で、病気とは無縁の生涯を送ったのです。
 
コルナロは83歳の時に、次のように語っております。

「なんの助けもなく馬に乗ることができるし、階段はいうまでもなく、山にもやすやすと登ることができる。気分はいつも陽気で、心が曇るようなことは一度もない。生への倦怠や生活の疲労などまったく無縁である」

たとえ長生きできても、寝たきりでは毎日が憂鬱になってしまいます。彼のように「健康寿命」が生涯続くなら、長生きすることがもっと楽しくなるはずです。

ところが、若い頃の彼は決して健康ではなかったようです。暴飲暴食に明け暮れる毎日を送っていたせいで、すでに30代で様々な成人病を患っています。その後、生死の淵をさまようまでになり、医者からは「もはや助かる見込みがない。40代で亡くなるだろう」と、余命宣告されたのです。

そして医者は彼を救う最後の処方箋として、食習慣の究極の改善=「極少食」をすすめました。彼は助かりたい一心から、言われた通りにその指示を実践したのです。

「はしがき」に、その時の経緯について、次のように述べています。

「すると、数日もしないうちに回復の兆しがみえた。そしてしばらくすると、病が本当に癒えてしまった。そればかりか、1年後にはさらに完全な健康体となったうえに、性格的にもそれまでの怒りっぽさが消えて、まったくの別人のようになったのだった」

驚くべきことに、彼は「極少食」の実践によって死の淵から奇跡的に甦ったのです。


その後は、ますます自らの体験に自信を深め、この「節食健康法」を一人でも多くの人々に伝えようと、小冊子を出版したのです。この本は欧米では、当時からベストセラーになり、今でも長寿健康法のバイブルとして広く読まれています。

コルナロが実際に食べていたものは、パンと卵の黄身、スープまたはパン粥、それと肉と魚を少し、かわるがわる数種類食べるというものでした。

1日の食事量は350gで飲み物はワインを400cc、これを1日2回に分けて摂っていました。1食当たりでは、食事がたったの175gとワインが200ccになります。

江戸時代の水野南北も食の慎みが運命を分ける、と言う旨を残したそうだが、15世紀に生涯を健康に送り、ヒトとしての生活を存分に楽しみ得たルイジ・コルナロは教養高い、世界の中心がイタリアにあった時代を正に謳歌したイタリア貴族だ。

ルイジ・コルナロは“少食による長寿と幸福な死の予感”、とまで喝破したのは83歳の第一講話に於いてであったが、医学が発達した、と思い込んでいる現代日本の老人達の不幸な長寿、そして、その延長線にやがて姿を見せるであろう大いなる黒い死を怖れ、見えない敵に抗っているのが現状だ。

私は、体調が崩れた時などは度々半断食をして調整するようにしています。また、もともと少食タイプなので、著者が健康のために「節食」を勧めている理由が、実感としてよく理解できます。

それでも、多くの健康書を読んでいると、正反対の学説や意見もあり、時々迷ってしまうこともあります。なかには「食を節すると寿命が縮まる」という人もいます。また「好きなように飲み食いしても長生きしている人もいる」「肉をたくさん食べないと元気がでない」などの声もよく耳にします。

彼は、そうした疑問に対して、次のように述べています。

「私自身が生き証人である。私は老人であり、食もわずかだが、快活でエネルギーにあふれていて、痛むところなど一つもないからだ」

「私は当初の予想より46歳も長生きして、現在86歳になっているが、体はきわめて健康、気分はじつに快活。

五官はすべて完全で、また歯も声も、記憶力も心臓も、悪くなったり衰えたりしているところはまったくない。

頭脳については、むしろ以前より明晰さが増している。要するに、加齢によって心身の機能が低下するということが少しもないのだ」

この本には彼が95歳まで執筆したものが収められており、読んでみると高齢になっても体力だけではなく、知力も衰えていないことがわかります。



少食をすることでこのような健康と幸運に繋がるいうことは日本でも実践者が伝えています。

例えば江戸時代の水野南北から、現代でも甲田光雄氏、森美智代氏、石原結實氏などが食を慎むことで健康に恵まれ精力的に毎日を生きることが出来ると説いています。

そして少食の効果が彼らの個人的な経験に留まらない可能性があることを、アメリカのマクガバンレポートや中国のチャイナスタディによる大規模調査でも告げていました。

しかし少食で病気知らずでいられるという事実は医療、食品、保険などの経済界の意向に反するせいかほとんど報道されることなく今も世には飽食が蔓延しています。