仕事をしていて、ふと思うときがあります。


  このささやかな仕事が、はたして、
  世の中の役に立っているのだろうか。


 そう思うとき、いつも心に浮かぶ言葉があります。


  一隅を照らす、これ国の宝なり。


 伝教大師、最澄の言葉。

 この言葉は、
 社会の片隅で、思いを込め、願いを込め、
 ささやかな仕事に取り組む我々を、
 ときに、深く励ましてくれます。

 そして、
 この言葉を、静かに見つめるとき、
 この古い言葉が、これからのネット社会において、
 新しい意味を獲得していくことを予感します。

 なぜなら、ネット社会においては、
 社会の片隅の、たった一人の営みであっても、
 それが、人々の共鳴と共感を得るものであるならば、
 瞬時に、ネットを通じて多くの人々に伝わり、
 社会全体に、大きな影響を与えていくからです。

 そのことを考えるとき、我々は、
 この最澄の言葉が、
 新しい時代において、
 新しい意味を獲得することを、予感するのです。


  一隅を照らす、これ国の宝なり。

  そして、ときに、

  その一隅の光が、世界を照らす光となる。



 
 田坂広志