伝説的アナリスト、メアリー・ミーカーの2014年版「インターネット・トレンド」

名門ベンチャーキャピタル、KPCBのパートナーであるMary Meekerはインターネット・アナリストとして伝説的名声を博している。
毎年Meekerがまとめている「インターネット・トレンド」の2014年版がRe/codeが主催するCodeカンファレンスで発表された。

ここにはインターネットに関わる大量の重要なデータが手際よくまとめられており、投資家、起業家、ジャーナリスト、その他誰であれテクノロジーに関心を持つものにとって必読の資料となっている。


 ☆インターネットの成長速度は減速している。この傾向は以前から知られていたが、ますます顕著になっている。現在の成長率は10%を切っている。

 ☆スマートフォンの成長率は20%だが、こちらも減速中。現在の成長を主として支えているのは新興市場。

 ☆現在バブルの傾向があるにしても、ドットコムバブルの2000年に比べれば程度は非常に軽い。

 ☆インターネット広告はまだ成長中だが、大きなチャンスはモバイル広告にある。

 ☆消費者が印刷メディアを読む時間は減っているのに依然として広告費の大きな部分を占めている。
  逆にモバイル利用時間は非常に長くなっているのにそれに見合う広告費が支出されていない。

 ☆ソーシャル・ネットワークはこれまでのブロードキャスト的な仕組から、よりプライベートなメディアに変化しつつある。
  その原動力はSMSを代替する各種の国際的メッセージ・サービスの急成長だ。

 ☆Tinder、Airbnb、Alibaba、GrubHubはホテル産業など既存のビジネスに破壊的革新をもたらすと同時に、消費者がバーやレストランを利用するなどの日常の行動パターンを大きく変えている。

 ☆BuzzFeedはこの1年でユニーク訪問者を3倍に増やす急成長を遂げた。


デジタルが世界を変える

☆インターネットの成長が減速
もちろんインターネットは引き続き成長中。とはいえ、その成長率はゆるやかに減速しつつあります。

現在の成長率は10%を切っています。

グローバルのネット人口ランキングでいうと、中国・USA・インドについで4位に位置する日本は、2013年のネット人口成長率0%と突出して低く、この成長鈍化の一因を担っています。


☆スマホが成長を牽引
一方、インターネット人口が10%以下と成長の鈍化を見せる中でも、スマホユーザーの成長率は20%以上です。

そしてモバイルデータのトラフィックはなんと81%以上の成長率で増幅し続けています。

その成長を引っ張っているのが、アジアとアフリカ。まさに途上国で、どんどんスマホが普及を伸ばしているのです。



☆スマホはメインスクリーンとなりつつある
「あなたは昨日、TV、PC、スマホ、タブレットのそれぞれを何時間みましたか?」という質問に対する答えがこちらです。

結果、30カ国中22カ国でスマホが最も長時間見られているという結論だったそうです。

もちろん、日本でもスマホの視聴が最も多い結果となっています。

セカンドスクリーンのディスカッションでは通常、ファーストスクリーンであるTVに対して追加で視聴するデバイスとして、スマホやタブレットをセカンドスクリーンと言いますが、今やファーストスクリーンはスマホだと言えるでしょう。


☆大きな伸びしろはモバイル広告
プリント・ラジオ・TV・インターネット・モバイルのそれぞれを消費者が視聴する時間の割合と、それぞれのメディアが得る広告費の割合を比較しています。

プリント媒体は実際に視聴されるよりも多くの広告費を得ており、逆にモバイル広告は長時間視聴されているにも関わらずそれに見合っただけの広告が投下されていないのです。ここには、まだまだマーケットの伸びるチャンスがあると解釈できます。



☆ソーシャルメディアからメッセージングアプリへ
ここ数年で起きている大きな流れとして、Lineなどのメッセージングアプリの急成長があります。

不特定多数に対する幅広いコミュニケーションから、より少数に向けてプライベートで密度の濃いコミュニケーションをとるメッセージングアプリへとシフトが起こっているのです。

2月にFacebookが買収したWhat’s Upも中国のWeChatも、月間アクティブユーザー数が年率100%を超える成長ということ、すごい勢いですね!


☆ソーシャルメディアを活用したバイラルメディアが台頭
バズフィード、ハフィントンポスト、ABCニュースなど、ソーシャルメディアを活用したバイラルメディアが、続々と成功をおさめています。

特に、バズフィードはこの1年でユニークビジターを3倍に増やす急成長を遂げたとのこと。

その50%以上がモバイルから、75%以上がソーシャルメディアから、また読者の50%以上が18-34歳ということです。まさに時代の流れにのった新しいメディアだと言えるでしょう。

先日、リークされ話題になっていたニューヨークタイムズのレポートでも、まさにこれらのメディアの存在が脅威として語られていました。紙媒体を中心として成り立ってきた既存の巨大メディアが今後、これらのバイラルメディアにどう対応していくのか、目が離せません。


☆ストリーミングサービスが音楽業界を変える
音楽業界にも変化が起こっています。

今までも下降曲線をたどっていたCD売上げが引き続きマイナス13%成長というのはともかくとして、iTuneストアなどに代表されるデジタル音楽の売上げが初めてマイナス成長となりました。
(とはいえ、iTuneは売上げ好調のようで、その他のTargetやWalmartの売上げ低下が全体のマイナス成長を引っ張っているようです。)

この原因は、SpotifyやPandoraなどに代表されるストリーミングサービスへとユーザーが流れているからだと言われています。

日本でもサービス開始が近いと言われているSpotify、同じような流れを日本でも起こすことになるのでしょうか。



☆ビットコインの台頭
2013年4月にビットコインの価格が高騰し一躍USでバズり、 2014年2月のマウントゴックスで一躍、一般への認知が広まったビットコインですが、実際、その口座数もうなぎ上りに増加しています。この1年で10倍にもなっていますね。

日本にもこの5月中に西麻布に日本初のビットコインのATMが設置される予定という話がありましたが、 今後、日本でどのようになっていくのか、要注目です。


☆まとめ☆
今や人はオンラインで友達を作り、オンラインで情報収集をし、オンラインでものを買う時代となっていました。

そして、これからはクラウドソーシングで働き方が変わり、3Dプリンターで生産が変わり、ウェアラブルで日常生活が変わっていくでしょう。

当時、デジタルによる世界の変化を理解せずに、人の生活にインパクトを与えられるようなマーケターになれることはないと感じ、今までいた世界を飛び出してきたのですが、あの時の考えは正しかったと、毎年、このMary Meekerのトレンドレポートを見るたびに再認識します。

世界はデジタルにより、目まぐるしく変わりつつあります。