外資系企業で成功するための10か条

外系で実際働き始めると、外資系ならではの苦労も多い。薦める以上、外資系で仕事をするなら、キャリアをぜひ「楽しく成功」させてほしい。

外資系で成功している人を見ると、必ずしも天性のスターということはない。ビジネスセンスが良かったり、チームを引っ張って行くのがうまかったり、活躍の仕方は様々だ。

共通して言えるのは、外資系という組織にフィットしている(させている)ということだ。今回は、外資系の組織の特徴を把握して、その中で活躍できるようにしていく工夫をご紹介したい。


自分を組織にフィットさせることが成功への第一歩

どんな組織でも、自分が組織を変える力がなければ、自分が組織に適合するしかない。力がつけば、組織を形作る側に回ればいい。まずは、組織の特徴を掴むことが必要だ。

外資系で働き始めると、いくつかの組織運営の特徴が見えてくるだろう。

まずは、自分の将来は誰も決めてくれないこと。自分がどこに進んで行きたいのか、今、働いている会社で何を成し遂げたいのか、自分なりのビジョンを持つ必要がある。これが結構難しいのだが、持っている人といない人では大きな差が出てくる。
 

次に、人事評価が1年ごと(四半期、半期の場合もある)のサイクルで明確になされること。日系企業だと5年10年という長い目で人物が見定められていくが、外資系は1年1年が勝負だ。

そうすると、仕事の組み立ても見えてくる。1日を1打席、1週間を1試合と見立てて、4半期ごとに何らかの結果が出るようにして総括する。そうすると、仕事をただ片づけていくのではなく、1つの会議、1日、1週間に目的を持つことができる。

仕事の成果は、現状維持より挑戦・進歩が高く評価される。会社の目的は、長く存続することだけではなく、売り上げ、利益の成長なのだ。

良い成果だけでは十分でない。昇格、異動などは、日系企業以上に、社内ネットワークがものを言う。自分の社内マーケティング、すなわち自分のやりたいこと、成し遂げたことを社内の要人に見せることを怠ってはいけない。

そして、自分の能力開発は自分で責任を持たなくてはならないこと。一生懸命働いて仕事の結果を出し続けることはとても重要だが、それだけでは将来のアウトプットに伸びがなくなる。


勉強や人間関係作りなど、将来のための投資をしなくてはならない。投資に回す時間は、目安で1割、使える時間が1日16時間として、1日約1時間半だ。

最後に、従業員は会社から役割を与えられた個人商店のようなものであるということ。自分の役割を把握し、自分を他者から差別化できる業務知識や業界経験を持っていることは、自分の価値を高め、会社の中での立場を強くする。

また、個人をベースにしているからこそ、みんなを引っ張って行くリーダーシップが高く評価される。


組織運営の特徴を掴めたら、自分の能力を外資系という環境で発揮していくために、自分はどのようにしていくべきなのかを整理していけばいい。
 
<外資系で働く私の10か条>

 1.自分のビジョンを持つこと。入社したときに自分がその会社で何を成し遂げたいのか、
  1ページにまとめる。
 
 2.自分の感情をコントロールすること。自分のエゴや好き嫌いではなく、成果を求めて
  行動する。
 
 3.自分の固有のスキルと知識を持つ。

 4.仕事の世界を野球に例えると、1年は1シーズン、1週間は1試合、1日は1打席、
  1つのミーティングは1球のようなもの。
  1年を成功させるためには、1試合ごと勝利していく必要がある。
  月曜日にオフィスに着く前に、20分間、その週に達成したいことを書き出す。

 5.毎朝10分間、働き始める前にその日に何をするか整理する。

 6.ミーティングに出る前に数分間、そのミーティングで何を議論のポイントにするのか、
  頭を整理する。必要な情報を得ておく。
 
 7.成果を出し続けることが、自分のキャリアを伸ばす最善の道。

 8.自分の部署の本質的な役割を認識しておく。
  例えば、私の働いているファイナンスは、他部署がいろいろな方向に揺れ動いても
  間違った方向に傾かないようにするための会社の背骨のようなもの。
  正しい見地にとどまることが求められ、人の顔色を見て風見鶏のように揺れ動いては
  いけない。

 9.自分の起きている時間の1割を、常に将来の成長のために使う。

10.自分のやりたいこと、成し遂げたことを社内の要人に能動的に見せる
  (自分の社内マーケティング)。




 仕事の成果のほかに気をつけないといけないことが、気持ちの管理だ。外資系企業で働くと、日系企業とは異なったイライラを抱えることがある。

これは、日本との文化の違いによるものだが、原因が分かれば対策も立てられる。

欧米の会社で働くと、西欧人のプレゼンテーションの力には到底かなわないと感じる。時として、彼らの言っていることが内容的に素晴らしいということではないのに、会議で彼らの声は聞かれ、受け入れられることが多い。

それに対して、有効な反論をできなくて、歯がゆく思うことが多い。本当に何が起きているか知らなくても、口先でやり込められることも多い。当人に問題があっても、巧みにそれ以外のことに論点を移されてしまうこともある。

これは、単に日本人が論理的でないとか、英語がうまくないとか以上の理由がある。そこに気づかなくては、やり込められてイライラが募るばかりだ。


では、この簡単に埋めがたい東洋と西洋の違いとはいったい何なのか。それは、「物事には正しい答えがある」という信条を持っているかどうかだと感じる。

東洋的な感覚では、物事は見る角度によって様々に見えるし、時と場合によって状況が変わってくる。自分が今見ている姿が絶対のものではないし、他人からの見え方も尊重しなくてはならない。

これが、意見のあいまいさを生み、論点をぼやけさせ、(西洋的な)説得力を落としている。何か反論されても、それに対して直ちに反論し返すのではなく、いったん受け入れ消化しようとしてしまう。

また、相手にその寛容さがないことにいらだつ。

ただし、東西の文化は決して対立するものではない。日本人が日本人らしく自分たちの価値観や誇りを持ったまま、西側文化の中でやっていくにはどうしたらいいのか。

西側の教育を受けていないのに外資系で活躍している人を見ると、ビジネスの結果で勝負する、駐在員には分からないローカル情報を駆使して価値を出す、少ない言葉でインパクトを持たせることに専念する、といった姿が見受けられる。

自分なりの存在意義、スタイルを身につけているのだ。

これができるかどうかで、外資系で成功できるかが大きく左右される。仕事のために自分の価値観を変える必要はない。自分の価値を基に、文化の違いに適応したスタイルを見つければいいのだ。


さて、これまで、外資系に焦点を当ててきたが、本来、ビジネスをするのに、日系か外資系かなどは本質的な問題ではないはずである。グローバル企業であれば、国籍に関係なく世界という同じ市場で戦っているからだ。


国内外を問わず、これだけグローバルに競争が激しくなれば、会社も従業員の一生を背負っていくことはできず、従業員も1つの会社に頼って生きていくわけにはいかなくなる。

外資系を薦める理由は、会社に過度に依存するのではなく、自分の意志で自分の道を切り開いていけるという点からだ。

若いという理由で、重要な仕事を任せられないことはない。また、言葉や文化の壁を越えて、世界中の優秀な人と働ければ、自分の世界は大きく広がっていく。そして、自分で歩んでいるからこそ、年を取っても枯れる人が少ない。


一方で、日本全体で見れば、外資系はあくまでマイナーな存在だ。日系企業の人材純血主義が変わらなければ、社会の人材活用は変わらない。

外資系が脚光を浴びることで、日本企業にも影響が与えられば、人材の活性化という好循環が生まれるだろう。

働く立場からすると、自分の意思で道を切り開いていくというのは決して楽なことではない。ただ、変化の激しい時代である。川の流れの中で泳ぐ魚の様に、同じ場所でとどまるは相当のエネルギーがいる。同じエネルギーを使うなら、気持ちを強く持って前に進んで行くしかない。

すべての人が、可能な選択肢の中から、現状とこれからの変化を受け入れたうえで、自らの選択で納得して働いていける、セーフティネットもある、そうした方向に向かえば、個人にとっても、経済にとっても、素晴らしいのではないだろうか。