4年後、コンピュータは人間の脳を超える

「日いづる国 日本」を復活させるために

皆さんおはよう御座います。ソフトバンクの孫でございます。今日はソフトバンクワールドへお越しいただきました。ありがとうございます。それでは早速、話を始めさせていただきたいと思います。

日本、素晴らしい国です。私は日本に生まれ、日本に育ち、本当に素晴らしい国だというふうに思っています。
 
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この「日いづる国 日本」ということですけれども、この素晴らしい日本が、最近何やら、多くの日本の人々が自信をなくしてきているのではないかと思います、特にビジネスの世界で。日いづる国のはずが、もうこの20年くらい、「沈みゆく国 日本」と、このような形で語られるようになってしまいました。

経済の成長が著しく低迷してしまった状況が、20年間も続いてしまいました。やっとアベノミクスでこの1年間、もう一度経済が復活しそうだ、という兆しが出てきました。しかし、これまで世界で2位だったGDPは3位に転落し、さらにこの後、インドやその他の国にも抜かれそうである、という、低迷する日本のGDPという問題がございます。

その重要な要素の一つというのが、人口問題であります。これから伸びていく他の国々に対して、日本の労働人口はむしろ減っていく、という問題があります。このような状況のなかで我々は、我々自身に対して問いかけなければならないと思います。日本はこのまま沈んでいくのか、と。

私は、日本は必ず復活すると思っております。また、そうしなければならない、というふうに思っています。単に日本の現状を嘆くだけではなく、日本の将来を憂うだけではなく、どのようにしてそれを復活させていくのか、ということについての方程式、私なりの意見を述べさせていただきたいというふうに思います。


日本復活の方程式は「情報武装」

日本復活の方程式、それは、日本の生産性を上げる、ということがまず1点であります。次に、労働人口問題を解決させるということ。この2つの掛け算、これをすれば、日本の競争力を取り戻せるということであります。ただなかなか、言うは易し、行うは難しという問題があります。

生産性でいうと、日本の生産性はこの20年間、どんどん他の国に抜かれ始めております。労働人口問題は、少子高齢化と言われて久しいわけであります。従って日本の競争力が落ちているわけですが、まずこの生産性について語りたいと思います。

その鍵は、「情報武装」にあると思います。特にこの生産性、ホワイトカラーでこの重要な問題があるわけですけれども、情報のビッグバン、というふうに言われております。この情報のビッグバンは、今まさに世界中で、爆発的にITのテクノロジーが進化し、その情報がどんどんと世界中に押し寄せている、ということであります。

2018年には、ワンチップのコンピュータの中に入っているトランジスタの数、これが人間の脳細胞のニューロンの数、300億を超えると言われております。人間の脳もニューロンがくっついたか離れたか、という2進法で物を記憶したり考えたりするわけですけれども、コンピュータも全く同じで、トランジスタが中に大量に入っております。このトランジスタがくっついて電流が流れるか、流れないかの2進法で物を計算したり考えたりするということであります。

このトランジスタの数が2018年には300億を超える。つまり人間の大脳のニューロンの数を超える、ということになるわけです。どんどんコンピュータが進化する。であればその進化を、我々の手にすると。情報のビッグバンを我々の味方にして活用する、ということです。そうすれば我々は、生産性を上げられるというわけであります。


ITテクノロジーの爆発的進化は今後30年間も続き、ワークスタイルを激変させる

このコンピュータのチップには、メモリというものもあります。このメモリ容量が今後、劇的に増えていきます。メモリ容量に加えて、更にモバイルの通信速度も増える。この3つですね。ワンチップコンピュータ、CPUのなかに入るトランジスタの数。メモリチップの容量。そして通信速度。この3つの基礎的要素が、情報のビッグバンを更に加速度的に進化させていきます。

我々ソフトバンクはこの3つのなかでも、特に通信というところにこだわっているわけですけれども。我々は携帯のテクノロジーを使って世界で初めて、日本の一番難しい地域、日本の銀座において、街の中で1ギガビットという速度を達成するに至りました。これは世界初の快挙であります。一般の人々のスマホでもこのような速度でつながるようになる、ということは、もうすぐ目の前に来ているというわけであります。

CPUが、今からの約30年間で100万倍になる。メモリ容量、こちらも100万倍になる。通信速度は300万倍になる。ムーアの法則で過去30年間、このような速度で進化してきたわけですが、次の30年間も同じような速度で進化すると私は信じております。

つまり人々は今までケチケチしながらメモリ容量を使い、ケチケチしながら小さな能力のCPU、そして通信速度を使ってきたわけですが、これからは、無限大の計算能力、無限大の記憶容量、そして無限大の通信速度、これが当たり前である、という時代がやってきます。

そうすると、ますます人のワークスタイルやライフスタイルが変わってきます。これらの情報、データが全てクラウドに格納される、そのような時代がやってくるということであります。従って、人々のワークスタイルは決定的に変わっていくということです。

ありとあらゆるものがライフログとして、どんどんとデータを集積していくという時代がやってくると思います。

自動車や洗濯機、冷蔵庫もテレビも、ありとあらゆる家電、そして運動シューズあるいはメガネですら、あらゆるものが、さまざまなセンサーと通信によりビックデータを集め始める時代がやってくると思います。

つまり、クラウドに溜まったデータこそが我々にとっての最大の財産になる、という時代がやってくるでしょう。今からほんの6,7年後にはInternet of things(モノのインターネット)といって、全世界で500億個くらいのものがインターネットに繋がっていき、データを集め始める。

今現在、約100億個くらいのものが既に繋がっているわけですけど、これらがもっともっと多く繋がり、ついには500億個も超えていくという時代がやってくると思います。

   
今までのような手作りの単純生産型のロボットだけではなくて、汎用型の、安くて高性能で、しかもありとあらゆる用途に使えるようなロボット。これを一気に普及させようではないかということです。しかもこれらが100%クラウドに繋がる。100%人工知能を搭載する、ということであります。

つまり、知恵と知識のない単純生産のロボット、これを日本は今まで得意としましたが、これに知恵を与えよう、知識を与えようと。そして汎用的に活動できるような能力を与える。これがあれば、日本はもう一度、世界最先端の生産技術、これを手にすることができる、ということであります。

これから全ての人々が、100年以内に、さまざまな生活シーンでロボットと共存するという時代がやってくると思います。

自動車が生まれて既に200年くらい経ちましたか、人々のありとあらゆる生活シーンに自動車があります。パソコンが生まれて30数年ですけれども、あらゆるシーンにパソコンがあります。今から30年、50年、100年すれば、ありとあらゆるシーンでロボットが活躍する、そういう時代が来ると私は信じております。

私は日本の製造業における労働人口1000万人を、1億人に増やしたいという構想があります。ロボットは1日24時間働けるため、1台のロボットで3人分の仕事をします。土曜も日曜日も働いてくれますので、本当は3倍以上ということが言えるかもしれません。仮に3倍として、3人分の仕事をやってくれるロボットが3000万台、つまり9000万人分の労働人口に匹敵するわけですね。

そのロボットが3000万台導入されると、9000万人分の製造業の労働人口になって、既存の1000万人と足せば、製造業における労働人口1億人構想がここで実現できる。そうすると世界最大の労働人口大国になれるということであります。

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次に賃金ですけれども、日本の労働賃金は高いという問題があります。しかし、T型フォードのように、多機能型、汎用型の製造業のロボットを100万円で作って、これを5年償却で割り算していく形でいくと、1.7万円に相当するわけですよね。月額の人件費が、先進国、世界の大国の中で一番安くなる。労働人口問題、賃金問題の二つが解決できるのです。

なぜAppleが世界一の時価総額の会社になれたのかというと、それは付加価値型の労働、つまり商品の企画やデザインを労働賃金の高いアメリカで行い、製造は賃金の安い国々で作り、仕事を分担しあっているということであります。

つまり製造業をやっていくためには、人口が少なく、人件費の高い先進国では無理だという問題があったわけですが、これからは、単純労働はロボットに置き換えることによって、製造業は日本国でも復活できるのはないかということですね。

ロボットの活用で生産性が向上し、製造業における労働人口の数も、人件費問題も解決できる。しかも生産されたものは。より精密で、より素晴らしいものができるということであります。

デジタルネイティブという言葉があります。生まれながらにして、ITを活用する子供たちであります。私の孫娘も写真を見たら指でなぞるようにしてめくろうとするんですね。これからはロボネイティブということで、生まれながらにして、一家に一台ロボットがいて、生まれながらにしてロボットと会話をし、ロボットとともに生活することが当たり前という子供たちが生まれてくるでしょう。

そうすると、人々は新しい時代に対して違和感なく慣れ親しみ、それを活用できるという時代が来るでしょう。われわれ日本はこのロボットにおいて、世界で最先端を行っています。Googleが日本のロボット最先端企業を続々と買収しています。でも、買収されても買収されても、もっともっと日本には若者が、素晴らしいロボットに対する技術と夢を持って湧いて出てくるという、そのような国にすべきではないかと。

そして人間とロボットが共存し、世界最先端の技術、知識を持ち、結論としては、日本は復活できると、復活してみせると、そのような方程式はもう一度作り上げることができると私は申し上げたい。

つまり、日本はもう一度、世界一の競争力を取り戻す。「日沈み行く国、日本」ではなく「日出づる国、日本」として復活する。みなさんと一緒に日本を元気にしたいと思います。