「農業を日本の先端産業にする」山崎 養世さんからいただいたメッセージを、加筆・修正してお届けします。
*日本農業復興の途
農業を取り巻く環境は、食料自給率の低下、後継者不足、耕作放棄地の増加、高齢者が半数以上を占め集落としての機能を維持するのが困難となっている限界集落の増加、日本人の米離れ、日本食離れ、地元の農産物が手に入りにくい仕組み、農業よりも土木事業に力を入れてきた農政など、様々な問題が浮かび上がってきている。
まさに、経済成長と格差の少ない生活レベルの高い社会、それが限界に来ている。
そこで、
◆農業資源の有効活用、
◆消費者の期待に応える取り組みの観点から、時代の変化に対応できる農業・食料ビジネスのあり方を考えて見たい。
ポイントは、
◇農業資源(農地など)の所有者へのアウトソーシング環境の整備、
◇農業経営を志向する人へのフランチャイズ型参画のしくみづくり、である。
ものづくりとしての自動車、家電や環境技術などとともに、農業による農産物を日本経済の主役にする時がそこまできています。
1)日本の農地を有効に活用する (減反政策をやめ、耕作放棄地を解消する)
農業を行う人に補助金を思い切ってつける。大規模農家だけに補助金を出すのではなく、農業生産を行う人に出すのです。
ある程度の生活が保証されるようになれば、農業の担い手は増えていきます。
食料自給率を向上させ国民の食料を確保するために、農家へ直接の所得保証することを、必要不可欠なコストと位置付けます。
2)多彩な人々が営農に参画できるしくみ
志を持った若者が、農業に従事できるようにします。
そこでポイントになるのが、農地や労働の提供と販売やマーケティングや品種開発、そして、大規模な資金調達などを組み合わせたフランチャイズ方式の発展です。
資金や経験がない人でも農業に参加できたり、農業企業のサラリーマンになったりといった様々な関わり方を作り出して、日本の農業の担い手を増やすことです。
3)フランチャイズ型農業のすすめ (農業技術の開発、普及および人材育成)
個々の農家や農協の事情も千差万別であり、営農意欲はあるが自前での競争ができない、営農も誰かに任せたいが農地は手放したくない、簡単な農作業ならやりたいがきついことはできなくなったなど、個々の事情に対応したフランチャイズ型の農業を展開するのです。
あるところでは品種開発やマーケティングや販売を委託し、ある農家は生産に徹する。
また、ある農家は農作業の一部あるいは全部を外部に委託する。
さらにある農家は農地の貸し付けだけを行う、といった形です。
実情に応じた農家とのかかわり方によって、農家が高齢者であっても農地が耕作放棄地にならずに生産性の高いフランチャイズによって運営できます。
フランチャイズ運営側には、新しく多様な仕事が生まれます。
生産者から消費者までを結ぶバリューチェーンの運営という様々な業務が、新たな雇用とビジネスチャンスを生みます。
農協もそのほかの農業経営者も切磋琢磨し、日本の農業を進化させていくのです。
そのためには、今も残る不合理な規制や慣習をやめ、日本の農業と農業人材を伸ばす人たちを、社会全体で支援するための枠組を作る必要があります。
4)日本の農産物の品質を上げ、価格を下げる。
農家の中で最も数が多い副業的農家の平均総所得は470万円、そのうち農業所得は30万円にしか過ぎません。
生産調整による減反補助金をなくし、米でも他の作物でも思い切って生産すれば、日本の農作物価格は下がります。
直接の補助金で農家の生活を保証することによって、品質と価格の両面で思い切った競争が始まります。
農産物の価格が下がれば、日本の消費者は日本の農産物を購入します。
米の値段が下がれば、お米を食べるだけでなく、値上がりが著しい小麦粉に代わって米粉を材料にした麺類や饅頭、パン類、酒、焼酎、飼料の開発が進みます。
外国の穀物が高騰する今がチャンスです。
5)食の産業に学ぶ
日本の食の産業は、農業と違って自由競争の中で、素晴らしい発展を遂げてきました。
そこに流れるのは、徹底してお客さんが求めるものを提供し、儲けを追求するというビジネスの発想と、自分がおいしいものを食べさせたい、という頑固な職人のこだわりの間の緊張です。
農業という物作りでも、食の世界で花開いた日本人の独創性を発揮させるべきです。
生産、開発、流通、マーケティング、資金調達、などそれぞれの分野に優れた専門家がいます。
農家は農協任せにしないで専門家を活用すべきです。
そのために、農家が専門家を容易に活用できる環境、インフラを整備することが重要になります。
生産から消費までのバリューチェーン構築を提供する業者間の競争によって、
中間マージンが少なく、売り上げの上がる業者への委託が進みます。
まさに流通の合理化です。
これまでの生産一辺倒の発想を180度転換し、消費者の視点から農業を組み立てます。
行政はそのために環境を整備するのです。
フランスやイタリアのワインなどに見られるように、原産地や製造法などについての虚偽記載の取り締まりや公的な等級表示など、公的権威が全体としてのブランド価値を高めることを行います。
*日本農業復興の途